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ゼロから始める軍神少女  作者:
第一巻:二つの戦場、二人の将軍 (だいいっかん:ふたつのせんじょう、ふたりのしょうぐん)
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盗まれた人生と、新生

地下から漂う鉄錆と黴の混じった冷たい気配を感じながら、シミアは衛兵に従い、一層また一層と地下牢の奥深くへと下りていった。


ミレイユ・ルルトの牢房は下から二番目の階層に設けられていた。ここには上層の喧騒はなく、死のような静寂が全てを支配している。ただ油灯が燃える「パチパチ」という音、シミアの足音、そして老兵の手にする長槍が時折床を軽く叩く澄んだ反響音だけが、だだっ広く圧迫感のある伴奏を奏でていた。


「ここでございます、シミア様」


白髭の老兵はある牢房の前で立ち止まり、手の中の油灯を鉄格子の前に掲げた。その突然の光に、とうに暗闇に慣れていたミレイユは無意識のうちに手で目を覆った。


「この牢房を開けてください」


その聞き慣れた声を聞き、ミレイユはわずかに指の間を開け、ぼんやりとした光の輪の中から、領主学院の制服を着た、彼女が最も会いたくない人物の姿を見た。


「シミア様……しかし……」


「開けなさい」シミアの声は平静だが有無を言わせぬ響きがあった。「わたくしはすでに女王陛下のご親書をお見せしたはずですが?」


老兵はしばし躊躇ったが、やはり腰のあの重々しい鍵束の中から対応する一本を探し出した。「カチャリ」という軽い音と共に牢の扉が開けられた。


「あなたは廊下の突き当たりでわたくしを待ちなさい」


「しかし、あなた様のご安全が……」


「大丈夫」シミアの顔に、老兵には理解できない柔和な笑みが浮かんだ。「もし彼女が本当にわたくしを傷つけたいのであれば、わたくしはとうに辺境へ向かう道中で死んでいたはずです」


老兵はもはや固執することなく、提灯をシミアに手渡し、その足音は次第に遠ざかり暗闇の果てへと消えていった。


シミアが牢房に入ると鉄格子が彼女の後ろで閉まったが、しかし鍵はかけられなかった。彼女は牢房内の、一人の貴族の令嬢にとってはあまりにも過酷な環境と、隅で縮こまっている顔色の悪い金髪の少女を見て、心中には一片の復讐の快哉も浮かばなかった。


光が相手にあまり負担をかけないように、彼女は提灯を入口に置き、自分はゆっくりと薄暗い中へと歩み入った。


「ミレイユ、あなたを迎えに来たわ」


その言葉を聞き、ミレイユのずっと張り詰めていた体が抑えきれずに震えた。しかし彼女はすぐにその動揺を抑えつけ、氷のようで毒を塗ったような口調で応えた。


「あなたという女は本当にお節介ね」


シミアの足取りは止まらなかった。彼女はミレイユの前に歩み寄り、身をかがめて自分の視線を彼女と同じ高さにした。


「あなたはもう自由よ。名前を変えて好きな場所へ行き、あなた自身の生きたい人生を生きることができる」


「自由?」ミレイユはまるでとんでもない冗談でも聞いたかのように顔を上げ、その美しい瞳には今、ただ燃え盛る自滅的な憎しみだけが宿っていた。「もし私が今日ここを出て、真っ先にあの女に復讐を続けるとしたら。それでもあなたは私を解放するつもり?」


「なぜ女王に復讐を?」シミアの声は軽かったが、まるで一本の針のように正確に問題の核心を突いた。「あなたの名を奪ったのは、あなたの家族が利益のために下した選択であり、先代の国王の決定よ。今や彼らは一人はもうこの世におらず、もう一人も家は破れ人は亡くなった。あなたの憎しみはすでに目標を失っている」


「それがどうしたっていうの?!」ミレイユは猛然と立ち上がり、居高臨下にシミアを見下ろし、その声は興奮のあまり甲高くなった。「私には自分の仇敵を選ぶ自由がある! そうしたいと思えば、今すぐあなたを殺すことだってできるのよ!」


彼女は手を伸ばし、容易くシミアの襟を掴み、彼女を容赦なく冷たい壁際に押し付けた。


しかしシミアの顔には一片の恐怖もなかった。彼女はただ一種憐れみに近い眼差しで、目の前のこの憎しみに縛られた魂を仰ぎ見た。


「いいえ、あなたはしないわ、ミレイユ」彼女の声は依然として平静だった。「なぜならあなたこそが私よりもよく分かっているはずだから。あなたの言う所謂『復讐』は、最初から周到に設計された騙し合いに過ぎない。あなたの家族もあなたの父上も、彼らが必要としていたのはあなたの憎しみではなく、ただあなたという『ルルト家のミレイユ』という身分だけ。彼らが正々堂々と反旗を翻すための口実よ。あなたはただ彼らの……一枚の、いつでも犠牲にできる駒に過ぎなかった」


その言葉はまるで一つの驚雷のようにミレイユの脳内で炸裂した。彼女がシミアの襟を掴んでいた手は力なく緩んだ。


「あなた……嘘を……」


「私が嘘を言っているかどうか、あなたの心が一番よく分かっているはずよ」シミアは彼女に一切の息継ぎの機会を与えなかった。「あなたは本当に、あなたが送ったあの偽の情報だけで、フラッド公爵のような老獪な狐が自分の全てを賭けるとでも思ったの? あなたもあなたの家族も、最初から最後まで、ただ彼が女王の切り札を試すためのもう一枚の捨て駒に過ぎなかった。あなたの憎しみもあなたの足掻きも、あなたのあの『盟友』たちの目には、ただ取るに足らない滑稽な茶番劇に過ぎなかったのよ」


「やめて……」ミレイユは苦痛に耳を覆い、その体は壁に沿ってゆっくりと滑り落ちた。「もう言わないで!」


「もうやめなさい、ミレイユ」シミアの声にようやく一筋の温度が宿った。「あなた自身を許してあげて。もうあの偽りの憎しみに縛られないで。一つの……あなただけの人生を生きて」


「……でもそれが何になるっていうの?」ミレイユの声は蚊の鳴くように細く、果てしない迷いに満ちていた。「『復讐』以外、私……私、これから何をすればいいのか分からない……」


シミアは彼女のあの魂が抜けたような様子を見て、心の中の最も柔らかい場所が触れられた。彼女はあのネットカフェで虚無の勝利を追い求めていた、孤独な前世を思い出した。


彼女は手を伸ばし、そっとミレイユの微かに震える肩に置いた。


「ミレイユ……私のために、生きてみない?」


ミレイユは信じられないといった様子で顔を上げ、シミアのあのこの上なく真摯な、まるで人の魂の奥底まで映し出すかのような目と目が合った。


「私にはあなたの力が必要なの。あなたが『ルルト家のミレイユ』だからでもなく、あなたが女王と同じ名前を持っているからでもない。あなたが、あなただから。あなたは鋭敏で強靭で、あのカシウスでさえも刮目させるほどの行動力を持っている。私には……無条件にわたくしを信じ、同時にわたくしが過ちを犯した時に容赦なくそれを指摘し、わたくしと肩を並べて戦える仲間が必要なの」


シミアは一息置き、その顔に少しばつの悪い、彼女のこの年頃の少女らしい表情が浮かんだ。


「でも……私、たぶんまともな給料は払えないと思うけど」


ミレイユは呆然と彼女を見ていた。彼女のあの澄み切った瞳の中に映る、あの小さな途方に暮れた自分を。彼女は初めて、他人の目の中に女王の影を見なかった。


「あなた……こんな私を受け入れてくれるの?」


「あなたと彼女は別人よ」シミアはこの上なく晴れやかな、心の底からの笑みを浮かべた。「そもそも比べること自体がおかしいの」


「もし……もしあなたが私を見捨てたら、いつでもあなたを殺してやるから」ミレイユの声にはまだ一筋の震えが残っていたが、あの骨の髄まで染み渡っていた憎しみはしかし、静かに消え去っていた。


「しないわ」シミアの答えは簡潔で断固としていた。「いつか私とシャルが故郷に帰る日が来たら、私たちはあなたもトリンドルも連れて行く。四人で一緒に、あの古い家で暮らすの。永遠に離れない」


「……分かったわ」ミレイユはようやく頭を下げた。まるでシミアに約束するかのように、また自分自身に宣告するかのように。「教えて。私に何をすればいいのかを」


「でも私、本当にお金がないの……シャルと二人、とても貧乏なんだけど、それでもいいの?」シミアはやはり堪えきれずに小声で確認した。


ミレイユは彼女のあの真剣な様子を見て、ついに堪えきれずに「ぷっ」と吹き出してしまった。それは彼女が物心ついて以来、久々の心の底からの笑いだった。


続いてその笑い声は、もはや抑えることのできない号泣へと変わった。


シミアは何も言わず、ただ手を伸ばし、この傷だらけで、ようやく人生を取り戻したミレイユを、固く、固く懐に抱きしめた。

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