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ゼロから始める軍神少女  作者:
第一巻:入学と弁論編 (だいいっかん:にゅうがくとべんろんへん)
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甘い毒、震える手(最適化のみ)

部屋の装飾は複雑ではなく、むしろ質素とさえ言えるほどで王宮の外見の華麗さとは全く異なっていた。空気中には一股の淡い、名の知れぬ花草の香りが漂っている。シミアはあの柔らかすぎて少し度が過ぎるほどの寝台の上に座るよう示され、心中は不安で満ちていた。


「私のために死ぬとは……具体的に何をするのでしょうか?」彼女はちょうど自分に背を向けている女王を見て、慎重に尋ねた。


ミリエルは答えなかった。彼女はただ白皙の手を伸ばし掌を上に向け、一団の柔和な炎を何もないところから燃え上がらせた。彼女は炎をティーポットの下方に近づけ、水が沸騰するのを待つと、また指先で数片の氷晶を凝結させ、的確に茶水の温度を制御していた。


シミアは驚いてこの光景を見ていた。この世界で十数年も生活してきたが、彼女はやはり初めて、二つの全く相反する魔法をこれほどまでに巧みに運用する者を見た。


「何をぼうっとしているのお茶が冷めてしまうわ」ミリエルは振り返り、一杯の清らかな香りが漂う紅茶をシミアに手渡した。その顔には一筋の有無を言わせぬ、子供っぽい催促の色が浮かんでいた。


シミアは躊躇いがちに茶杯を受け取り、そっと一口味わった。濃厚な茶香が瞬時に鼻腔全体を満たし、滑らかな茶湯がまるで生命力を持っているかのように口の中に広がっていった。


「お茶を淹れるなんて……女王様がお出来になることではないでしょう?」本来ならその美味に陶酔すべきであったシミアは、やはり堪えきれずに心中の疑惑を口にした。


その言葉を聞き、ミリエルのあのわざとらしい気楽な笑みが一層の陰りに覆われた。「だって、いつ誰かに杯の中に毒を盛られるか分からないじゃない」彼女は小声で言った。まるで一件のごくありふれた事を述べるかのように。「そうなったらどんなに美味しいお茶も不味くなってしまうわ」


一言で部屋の中の温度がまるで下がってしまったかのようだった。


シミアは瞬時に理解した。彼女はあの新王に関する噂を思い出した。自分がたった今廊下で芽生えさせた、あの狂気的な弑逆の計画を思い出した。一杯の茶水さえ信用できない環境の中で、この自分と年齢の変わらない女王は一体どのように来る日も来る日も過ごしてきたのだろうか?


「そう、あなたの思った通りよ」ミリエルはまるで彼女の心を見透かしたかのように、その声は君主の冷ややかさを取り戻した。「私には絶対に信用できる、絶対に私を裏切らない人間が必要なの」


彼女はゆっくりとベッドの傍らへと歩み寄ってきた。その一歩一歩がまるでシミアの心臓の鼓動の上に踏みつけられているかのようだった。シミアは一筋の寒気を感じ、無意識のうちに後ずさったが、その背中はしかし柔らかい寝台に抵り退路はなかった。


彼女はそれでようやく、なぜ初めから自分がここに座るよう手配されたのかを理解した。


ミリエルはベッドの傍らに近づき、一方の手をベッドの上につき、もう一方の手をそっと、一筋の躊躇いを帯びてシミアの首の上に置いた。


「分かるでしょう。たとえあなたが抵抗したとしても結末は変わらないと」ミリエルの眼差しには彼女の年齢にそぐわない、わざとらしい冷酷さが満ちていた。「教えて。あなたは私のために死ぬ覚悟がある?」


彼女の声はとても軽かったが有無を言わせぬ力が宿っていた。だがシミアはしかしはっきりと見た。あの美しい銀色の眼眸の奥深くで煌めいている、抑えきれない恐怖を。あの自分の首に抵てられた手が、止めどなく微かに震えていることを。


(もしこの時断ったら、彼女は私をどうするだろう?)


シミアは心中で計算していた。彼女はミリエルの眼眸を凝視した。彼女はまるでその目で「どうか断らないで」と自分に懇願しているかのようだった。たとえ他人を脅迫する時でさえ、この少女は冷酷非情な様子をすることができないのだ。シミアの心中の疑念と恐怖が突然消え散った。彼女は微笑みながらミリエルを見て、その目に憐憫の情が満ちていた。


彼女は全ての思考と抵抗を放棄した。体を起こし、女王の驚愕の視線の中、両腕を伸ばし彼女のあの薄い背中へと回した。


優しく彼女を抱きしめた。


「馬鹿ね」シミアは顔を相手の頸窩に埋め、小声で言った。「そんな表情をされてしまったら、私がどうして断れるというの」


「あなたを守りたい、ミリエル女王。たとえあなたのために死ぬことになっても」


「……ミリエル」腕の中の体がどうやらようやく弛緩したようだ。「私たち二人だけの時は、ミリエルと呼んでくれていいわ」


まさにシミアがまだ何かを言おうとした時、一股の抗うことのできない眠気がまるで潮のように込み上げてきた。瞼が鉛を注がれたかのように重くなり、世界が回転し、ぼやけ始めた。


耳元で、ミリエルのあの遥かな、一筋の申し訳なさを帯びた、夢うつのような声が聞こえてきた。


「もう時間がないの……まだたくさん話したいことがあるのに。安心して、私があなたに……責任を取るから」


意識が闇に沈む最後の一瞬、シミアは、ようやくあの一杯の紅茶の真の意図を理解した。

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