血染めの玉座
王家図書館の大広間の中央で、ただ一筋の燭火が微かに揺らめいていた。
コーナは傍らで静かにその時を待っていた。彼女の女王ミリエル・ローレンスは、あの巨大な書斎机の前に座り筆を走らせている。
だだっ広い大理石の床に、燭台の光が彼女の孤独な影を長く、長く伸ばしていた。彼女の手の中の華麗な羽根ペンが、今、まるで情熱的な踊り子のように真っ白な便箋の上を速く舞っていた。ペン先の一つ一つの止め、一つ一つの跳ねが決然とした力を帯びていた。
ついに一曲が終わった。羽根ペンは便箋の末尾に優雅な終止符を残し、やがて全ての力を使い果たしたかのように、その主人の手によってそっと机の上に置かれた。
「コーナ」
「ミリエル……陛下」コーナはいつものように名を呼び捨てにしようとしたが、王宮のどこにでもいるフラッドの耳を思い、とっさに敬称を付け加えた。
ミリエルは立ち上がり、たった今完成したばかりの手紙をコーナの手に渡した。
微かな燭台の光を借りて、コーナは手紙の内容をはっきりと見た。それは……遺詔だった。
* * * * * * * * * * * * * * * * * *
今、この手紙を読むことは、私――ミリエル・ローレンスその人が親臨するに等しい。私はここに、ローレンス王国の王位を正式にシミア・ブレンに譲渡する。これより後、彼女は我が王室の全ての権力と富を継承し、我がローレンス王室の全ての敵を討伐し、そして王室を代表する後継者を指名する権利を有する。ローレンス王室に忠実なる全ての臣民は、彼女の麾下に団結し、王国の存続と輝きのために戦うべし。
シミア、もしあなたがこの手紙を読んでいるのなら、それは私がこの賭けに敗れたことを意味する。私はあなたが忠誠を捧げるに値する主君ではなかったかもしれない。でも、信じているわ。あなたは私よりも遥かに優秀で、偉大な君主になるでしょう。私は合格点の王女ではなかったかもしれないけれど、それでも、私たちが肩を並べて戦ったという事実は変わらない。
王都の戦場では敗れたけれど、私は信じている。あなたなら、必ずや鋼心連邦の企みを完全に粉砕することができると。
私がどこにいようと、生きていようと死んでいようと、あなたがこの手紙を読んだその瞬間から、あなたはローレンス王国の主人となり、私たちの共通の理想のために戦うのよ。
だから、私のために気落ちしないで。私たちの戦争はまだ終わっていない。
最後の一瞬まで、誰が勝敗を予測できるというの? そうでしょう? 私の……騎士様。
* * * * * * * * * * * * * * * * * *
コーナは震える手で手紙を置き、涙が制御不能に眼窩に溜まっていった。ミリエルはしかし微笑み、手を伸ばして指の腹でそっと、彼女のまさにこぼれ落ちようとしていた涙の珠を拭った。
「心配しないで、コーナ。私は負けないわ」ミリエルは一息置き、その年齢を超越した平静さが彼女の笑顔に一筋の悲壮な色を帯びさせた。「でも、もし……もし私が本当に負けてしまったら、これをシミアに渡して。彼女ならきっと私の宿願を叶え、この衰弱した王国を再び偉大にしてくれるはずだから」
ミリエルの声は大きくはなかったが、一字一句がまるで烙印のように深くコーナの心に刻み込まれた。彼女は力強く頷き、ミリエルが自らの手でこの王国の未来を託した手紙を封筒に入れ、王室最高級の蝋印で厳重に封をするのを見つめた。
まだ女王の体温が残るこの手紙が、コーナの手に渡された。その重さは千斤もあるかのようだった。
「さて、コーナ・ハールウェルス、今は早く休みなさい」
コーナは一歩進んでは三度振り返りながら、あのすでに日常の通勤路と化した秘密の通路へと向かった。通路の入口で、彼女は最後にミリエルの姿を一瞥した。王家図書館の頂上から差し込む月光が今ミリエルの身に降り注ぎ、彼女のあの質素な寝間着が月光に照らされて冷たい光沢を放っていた。彼女は図書館の穹窿を、いや、もっと遠方の空を仰ぎ見て、その顔に優しい、まるで誰かを偲んでいるかのような微笑みを浮かべていた。
「ミリエル様、おやすみなさい」
「おやすみ、コーナ」
彼女は通路の入口を開け、あの唯一の燭台を手に暗闇の中へと身を躍らせた。
……
ミリエルはコーナが消えた方向を、あの本棚に偽装された隠し扉が音もなく閉まるまで見つめていた。
全世界に、まるで彼女一人だけが残されたかのようだった。
彼女は書斎机の前まで歩み寄り、机の上の権謀と知恵を象徴する資料と筆墨を全て傍らへと押しやり、そして普通の女の子のように顔を腕にうずめ、冷たい机の上に突っ伏した。
「疲れた……」彼女は小声で呟いた。
考えられる限り、できる限りの全ての手筈を整え終えた。この巨大な精神的負担は、彼女のこのまだ完全に成熟していない体にとって実に重すぎた。ミリエルはここから逃げ出したいと思った。どこか憂いのない田舎へ逃げ、毎日花を植え、お茶を飲み、今日の夕食は何にしようかなどと、そんな些細なことで悩みたいと。
彼女の目の前にまたシミアの姿が浮かんだ。あの自分がデザインした領主学院の制服を着た黒髪の少女が自分に微笑みかけている。彼女はどれほど……どれほど今すぐあの姿を抱きしめ、自分の全ての不安と思慕をあの人に打ち明けたいと思ったことか。
まさにその時、一つの落ち着いた足音が図書館の正面の扉の方向から聞こえてきた。
「女王陛下、中におられるのでしょう?」
ミゲル・フラッドの声だった。
ミリエルが応えるのを待たず、あの重厚な氷原木の扉が彼によって無遠慮に押し開けられた。
ミリエルはゆっくりと体を起こした。彼女が顔を上げた時、その顔の全ての疲労と脆さは消え失せ、ただ君主だけが持つ氷のような戦意だけが残っていた。
「ミゲル・フラッド領主」彼女の声には一片の温度もなかった。「わたくしはあなたに、この王家図書館に自由に出入りする権力を与えた覚えはないはずですが?」
「女王陛下、わたくしは一刻たりとももう待ちたくないのです」ミゲルは大股で歩み寄り、彼はわずかに腰をかがめたが、その口調には勝利者の傲慢さが満ちていた。「どうかこの国を憂う心切なる臣下をお許しください」
(なんて傲慢な男)そう思うと、ミリエルの顔にかえって一つの冷たい笑みが浮かんだ。
「着替えたいの」彼女は立ち上がり、一種甘えるような少女のような口調で言った。「なにせわたくしも女の子ですもの。大切なお客様の前にお目見えする前には、ちゃんとおめかししないと。ミゲル様は玉座の大広間で、しばしわたくしをお待ちになることをお厭いにはならないでしょう?」
フラッドの顔に、計画を乱されたことによる一筋の硬直が走ったが、彼はこの死を目前にした女王が、竟然これほどまでに無邪気な要求を出してくるとは思ってもみなかった。
彼は随即、一つの寛大な笑みを浮かべた。
「も……もちろんですとも。陛下、どうぞごゆっくりとおめかしください。臣はいつまでもお待ちしております」
(どうせお前はわしの手のひらからは逃れられん)ミゲルは心の中で冷笑した。
……
ミリエルは一人、あの巨大な更衣室へと入っていった。
子供の頃から父は毎週、彼女のために最も美しい服を数着あつらえてくれた。目の前には花の海のように絢爛な礼服が並んでいる。華麗なものも質素なものも、戦闘用の軽装も宴会用の長いドレスも、彼女はどんな女の子でもきっとこんな自分だけの部屋を持つことを夢見るだろうと思った。
彼女はゆっくりと、あの一着一着、王権と贅沢を象徴する華服を通り過ぎ、あの一列一列、伝統と栄光を代表する洋装を通り過ぎた。彼女の眼差しには一片の未練もなかった。
最終的に彼女は更衣室の最も奥の隅まで歩いていった。そこから彼女は一揃いのきちんと畳まれた真新しい――領主学院の女生徒の制服を取り出した。
「この季節に着るには、少し暑すぎるかしらね」
彼女はそう言いながらも、しかし躊躇いなくそれを固く自分の胸に抱きしめた。
彼女は寝間着を脱ぎ、この見慣れすぎた制服に着替えた。彼女が鏡の前に立った時、鏡の中の、あの全ての華麗な装飾を脱ぎ捨て、その眼差しがこの上なく鋭くなった少女を見て、一つの心の底からの満足した笑みを浮かべた。
……
ミリエルがあの玉座の間の華麗な雰囲気とは不釣り合いな制服を着て、再びあの自分の王位に座った時、とうに待ち構えていたフラッドは思わず冷笑した。
「女王陛下のお好みは、実に驚かされるものですな」
「一生に一度の時ですもの。少しぐらい我儘を言ってもいいではありませんか?」ミリエルは立ち上がり、居高臨下にあの、一歩一歩深紅の絨毯を踏みしめてくる男を見つめた。「ミゲル・フラッド。あるいはこうお呼びすべきでしょうか――反逆者ミゲル、と」
ミゲルの目に一筋の冷光が走った。彼は腰の革帯からゆっくりとあの宝石が散りばめられた短刀を抜き、その鋭い刃の面に彼の歪んだ笑みが映り込んだ。
「ミリエル、今王位を明け渡せば、わしはまだ先王の面に免じてお前に一条の活路を与えてやらんでもない」
ミリエルの顔に一種憐れみに近い苦笑が浮かんだ。
「あなた様はあの、あなたに平伏したルルト家でさえ容赦なく手を下すことができたというのに。どうしてこの何の力もない女王を見逃してくださるというのですか?」
「ハハハ! まさかそれさえも知っていたとはな!」ミゲルの笑いが獰猛なものに変わった。「実に王国の天才だけのことはある! しかし今頃気づいたところで、あまりにも遅すぎたわ!」
言葉が終わるか終わらないかのうちに、ミリエルの左手の指先に一枚の高速で回転する水球が湧き起こり、右手の指先には一筋のバチバチと音を立てる稲妻が集まっていた! 水球と雷電はほぼ同時に射出され、正確にミゲルへと飛んでいった!
ミゲルはしかし避けもせず、魔法がまさに彼に命中するその瞬間、彼の手の中の短刀が一つの奇異な弧を描き、正確に、同時に水球と雷電を切り裂いた! 魔法の元素は空中で一つの鈍い音を立て、そして跡形もなく消え去った。
ミリエルの顔に今夜初めて、真の驚きの表情が浮かんだ。
「まさか、とでも思ったか?」ミゲルの顔は凶光に満ち、彼は常人を遥かに超える速度で猛然と階段を駆け上がった。「これは巨獣の骨粉を練り込んで打ち上げた『砕魔の短刀』だ! お前のような血統だけが取り柄の魔法の怪物にはうってつけだろう!」
彼は両手で短刀を握りしめ、ミリエルの胸元に向かって容赦なく突き刺した!
ミリエルは次の魔法を準備しようとしたが、もう間に合わなかった。彼女はあの瞳の中で急速に拡大していく、冷たい光を放つ短刀の先端を、ミゲルのあの興奮で歪んだ顔を見た。突然、彼女は全ての抵抗を放棄し、恐れることなく笑った。
まさにその千鈞一髪の時!
一つの巨大な黒い影が鬼神のように玉座の後ろから躍り出た! 一筋の氷のような冷たい光が、あのミリエルのすぐ間近に迫っていた短刀に向かっていった!
「キン――!」
空気中に一つの耳膜を突き破るほど鋭い金属の衝突音が響き渡った!
一本の分厚い巨大な剣が、まるで越えることのできない城壁のように女王とミゲルの間に横たわった。続いて一人の執事服を着た、しかしその体躯はこの上なく魁偉な老人が、ミゲルが巨大な力の衝撃によって体のバランスを崩したその瞬間を捉え、巨剣を手放し、一記の重い鞭のような蹴りを容赦なくミゲルの胸に叩き込んだ!
「ぐふっ――!」
何が起こったのか反応する間もなく、ミゲルはまるで破れた麻袋のように容赦なく玉座の前の階段から蹴り落とされた! 彼の手の中の短刀は手から滑り落ち、「カラン」と音を立てて遠くの床に落ちた。
彼は重々しく地面に叩きつけられ、一口の鮮血があの栄光を象徴する深紅の絨毯の上に飛び散った。
バセス将軍はそのまま一つの鉄塔のようにミリエルの前に立ちはだかり、あの濁っているが依然として鋭い目で、玉座の下でもがきながら起き上がろうとしているミゲルを冷ややかに見ていた。
ミゲルは体を支え、皺の寄った服を整え、傍らに落ちていた短刀を拾い上げた。
「ハハハ……貴様か? バセス! エグモンド家の……一匹の老いぼれ犬が!」
「いいだろう! 来い! この老いぼれとあの小娘をまとめて捕らえろ!」
バセスは深く息を吸い込み、ミリエルの手から再びあの彼のものたる巨剣を受け取った。
「バセス将軍、殺すのはおやめなさい。わたくしにはまだ、いくつか彼に直接尋ねたいことがございますので」ミリエルの声が彼の背後から聞こえてきた。
バセスは頷き、巨剣の切っ先を地面に向けた。
「どうした?! わしの部下たちは?! この役立たずども! 女王とこの老いぼれを捕らえんか!」
ミゲルの怒号が玉座の大広間全体に響き渡り、こだまとなって返ってきたが……何の応答もなかった。
「出でよ」
バセスの平静な声が響いた。
続いて玉座の大広間の最も深い影の中から、一人の王室の重装鎧をまとった姿が重々しい足取りで歩み出てきた。
フラッドが反応する間もなく、もう一方の廊下の柱の後ろから、また二人目、三人目が……
まるで無声の号令を受けたかのように、分厚いカーテンがめくられ、さらに多くの近衛軍がそこからぞろぞろと出てきた。彼らの足音が最初ははっきりと聞こえる「カツ、カツ」という音から、次第に一つの鈍い、まるで太鼓を打ち鳴らすような響きへと集まり、フラッドの心臓を叩いた。
彼らは全ての隅から湧き出て、音もなく、しかし阻むことのできない勢いで。一人一人の眼差しは氷で焼き入れされた鋼鉄のようであり、手の中の長槍は燭台の光の下で森然とした冷たい光を反射していた。瞬く間にこの幽霊のような軍隊は、フラッドと彼の最後の希望を、一つの風も通さぬ絶望の囚籠へと囲んでしまった。
「ありえん……こんなことはありえん! あの近衛軍は……今日全て……」
ミリエルは玉座を下り、あの質素な制服を着て、一歩また一歩と、一種軽やかな勝利者の様相でフラッドの前に歩み寄った。
一陣の激痛がフラッドの背後から伝わってきた。彼は信じられないといった様子で頭を下げると、一筋の長槍の穂先がすでに彼の肩甲骨を貫いているのを見た。彼は力なく地面に膝をつき、あの自らの鮮血にまみれた絨毯の上に這いつくばり、あの依然として高みにいる女王を仰ぎ見た。
「顔を上げて見るがよい、フラッド。彼らが誰であるかを」
フラッドは顔を上げ、そのうちの一人の兵士と目が合った。
それは……白髪交じりの髭を生やした、顔に皺だらけの老兵だった。
彼は恐怖に視線を逸らし、また別の兵士と目が合った。
「ありえん……ありえん……」
彼の心の中にはすでに答えがあった。それらは全てミリエルが即位の当初、彼女の自らの手で「解雇」した、あの王室に最も忠実な真の近衛軍だったのだ!
「ありえん!」
彼は乱暴にもがき、目の前のミリエルに向かって野獣のような無念の嘶きを発した。
「全員、気をつけ!」バセスの朗々とした声が玉座の大広間全体に響き渡った。「女王陛下に敬礼!」
フラッドが耳にしたのは、ただあちこちから聞こえてくる、整然とした鎧が床を踏みしめる重々しい音だけだった。
「「「女王陛下、万歳!!!」」」
「何の意味がある?!」フラッドは最後の力を振り絞り、嗄れた声で狂ったように笑った。「王国の辺境はすでに陥落した! 間もなくお前たち全員、鋼心連邦の鉄蹄の下に倒れることになるのだ! ハハハ!」
バセスは一足重々しく、狂ったように叫び続けるミゲルの背中を踏みつけ、彼にまた一口の鮮血を吐かせ、それがミリエルの真新しい制服のスカートの裾に飛び散った。
ミリエルは頭を下げ、スカートの裾の血痕を一瞥したが、その銀色の瞳には一片の波紋も立たなかった。彼女はただ顔を上げ、一種全てを凍てつかせるほど冷たい声で、最後の命令を下した。
「反逆者ミゲル・フラッドを、引き立てよ」
読者の皆様、最近いかがお過ごしでしょうか? 筆者である私は、執筆の世界に没頭して、少々我を忘れておりました。
本来、この章の内容は分けることもできたのですが、これらの部分をまとめて一気に読んでいただく方が、一つの物語としてより完成度が高まると考え、執筆時のリズムをそのまま残すことにしました。もし長すぎて読みにくいと感じられた方がいらっしゃいましたら、ぜひコメントで教えていただけると幸いです。
これまで、皆様がこの物語をどう思ってくださっているのか、知るすべもありませんでした。ですが、アクセス解析などで、毎日たとえ数人の方でも、最新話を読んでくださっている読者様がいることを知り、それが、私の創作の大きなモチベーションになっています。これも、私がこれまで『軍神少女』という作品で執筆した中で、最も長い一節となりました。
そうだ、それから、もう一つ嬉しいお知らせがあります。『軍神少女』の本編が、合計で二十万字に達しました。そして、第一巻も、もうすぐ結末を迎えます。この長さは、実は自分でも予想外でした。元々は、最大でも十六万字くらいで第一巻を書き終えられると思っていたのですが、書けば書くほど長くなってしまい、今の長さになりました。
読者の皆様、ここまでお付き合いいただき、本当にありがとうございます。もしよろしければ、この『軍神少女』にブックマークを付けていただき、そして、評価を残していただけると嬉しいです。皆様、ありがとうございます。