闇との契約
ミレイユは、呆然と目の前の椀を見つめていた。立ち上る湯気が、彼女の冷たい指先を撫でる。彼女は椀を手に取り、一口、スープを味わった。野菜の清らかな香り、干し肉の塩気と旨味、そしてスープを吸ってちょうど良い具合になった小さなパンの欠片が、口の中で、久しく忘れていた「家庭」という名の味を織りなす。
彼女は思わず、ごくりと大口で飲み込んだ。温かいスープが喉を滑り落ち、とうに空虚に慣れきった胃を、優しく慰めていく。
しかし、胃が温まれば温まるほど、胸の奥から込み上げてくる吐き気は、ますます強くなった。
彼女の目の前に、制御不能に、魔法実践の授業での光景が浮かび上がる。自分を見つめる、シミアの、恐怖と不解に満ちたあの瞳が。
「くそっ……」
口の中の食べ物は、これほどに美味しいというのに、まるで自分の罪を咀嚼しているかのような気分だった。
彼女は、吐き気を催すほどの衝動を無理やりこらえ、目尻から滲み出た、情けない涙を乱暴に拭った。そして、力任せに、ほとんど荒々しく、椀の中のスープを最後の一滴まで飲み干した。
空になった椀を手に天幕を出ると、彼女は、未だ篝火の傍らで忙しく立ち働く、シャルという名の少女に、無表情で木の椀を突き返した。
「ありがとう」彼女は、歯の間からその二文字を絞り出した。その声は、ほとんど聞こえないほど小さかった。
「お口に合って、本当に良かったです!」シャルはしかし、太陽のような、眩しい笑顔を返してきた。
その笑顔は、篝火よりも、目に刺さった。
ミレイユは猛然と背を向け、ほとんど逃げるように、自分の天幕の影の中へと戻っていった。
彼女が中に潜り込もうとした、その瞬間。一人の手が闇の中から伸び、軽く、しかし有無を言わせぬ力で、彼女の腕を掴んだ。彼女は驚愕して振り返り、火光の下でひときわ深みを増した一対の瞳と、視線が合った。
カシウス先生だった。彼は目を細め、何かを探るような、全てを見通すかのような笑みを浮かべて、彼女を見ていた。
「少し、話をしようか。ミレイユ・ルルト君」
……
カシウスは彼女を、野営地で最も人けのない片隅へと連れて行った。篝火の光は遮断され、ただ鋭い冷風だけが、針のように服の隙間から突き刺さり、彼女は思わず身震いした。
「あなたと話すことなど何もないわ、軍事戦略論の先生」彼女は、気力を振り絞って言い放った。
「そうかね?」カシウスは、彼女のその突き放すような態度を意にも介さず、独り言のように言った。「あのスープ、さぞ美味だったことだろう。だが、善意というものが、自分がかつて傷つけた相手から差し出された時、その温もりは、恐怕、毒薬よりも飲み下し難いものだ」
その一言が、ミレイユの全ての偽装を、打ち砕いた。
「あなた、一体何が言いたいの!?」
「言いたいのは、私は君を評価しているということだ、ミレイユ君。なぜなら、君と私は、同類だからだ」カシウスは微笑みを消し、その表情は、初めてこの上なく真剣なものとなった。「我々は二人とも、この世界の真相を見抜いている――それが巨大で、偽りに満ちた一つの盤上であり、そして我々は、生まれたその瞬間から、犠牲になることを運命づけられた、ただの駒でしかないということを」
彼は一歩前に出て、その声を極限まで低くしたが、そこには、人の心を惑わす力が宿っていた。
「先に生まれたのは君で、先にその名を名乗ったのも君だ。だが、どこからともなく現れた女王に、それを奪われた。ルルト家はそれに対して何の文句も言わず、誰も君の名を気にかけない。彼らはただ、新しく生まれたミリエルを賛美し、君の人生を奪った相手に、尻尾を振って媚びへつらうだけだ。そして彼女は玉座に座り、本来なら君のものであったはずの、光り輝く人生を享受している。君はこれから先、ずっと彼女の影の中で生き、名を失った影の中で生きていく。君の苦痛に、誰も気にかけはしない。君の家族が考えるのは、君を売り渡すことで、どれほどの利益が得られるかということだけだ!」
「黙れ!」ミレイユは感情を抑えきれず、大声で叫んだ。
「なぜ黙る必要がある?」カシウスは笑って問い返した。「私が何か間違ったことを言ったかね? では、シミア・ブレンを見てみろ。彼女は君と、何とよく似ていることか! 彼女はただ、礼儀作法が少しばかり至らなかったというだけで、女王に密室で拷問され、『罰せられし者』という汚名を着せられ、学院で屈辱の限りを尽くされた。君は……これが、不公平だとは思わないか?」
ミレイユの目の前に、再び、シミアの、助けを乞うようなあの眼差しが閃いた。幾夜も、あの眼差しは亡霊のように、彼女を悪夢の中で目覚めさせた。彼女は胸の奥で渦巻く憎悪と罪悪感を無理やり押し殺し、できる限り平静を装って応えた。「もし、ただ愚痴をこぼしたいだけなら、人選を間違えたわね、先生」
「いや、私は愚痴をこぼしているのではない」カシウスは首を振り、その口元に、氷のような笑みが浮かんだ。「私は、君に機会を与えているのだ。君を、駒から、『駒を指す者』へと変える機会を」
彼は一息置き、その言葉の重みを、ミレイユの心に、徹底的に刻みつけた。
「君の家族、ルルト家は、一つの好機を待っている。王都の兵力が手薄になり、全てを覆すことができる、その好機を。そして君こそが、彼らがここに配置した、信号を送る役目を担う、間者。そうだろう?」
ミレイユは驚きのあまり、数歩後ずさり、その体は、野営地の外れにある冷たい馬車に、重々しくぶつかり、鈍い音を立てた。
カシウスは追い詰めることなく、ただ、ほとんど憐れむかのような口調で、最後の、そして致命的な、誘惑の言葉を紡いだ。
「考えてもみたまえ、ミレイユ。君はただ、一通の手紙を送るだけでいい。一通の、『前線は惨敗、アルヴィン将軍は重傷』と書かれた、偽の情報を。さすれば、君の家族はすぐに行動を起こし、フラッド家と、そして女王と、君を苦しめるこの三つの根源と、不死不休の混戦に陥るだろう。そして、私の学生、あの天真爛漫なシミアもまた、この混乱に乗じて、順当に権力の中心から遠ざかり、彼女が本来持つべきであった、平凡な人生へと戻るのだ」
彼は両腕を広げ、まるで暗黒の夜空を抱きしめるかのように言った。
「これは裏切りでもなければ、陰謀でもない。これは、審判だ。我々を掌の上で弄んだ、この腐りきった世界に対する、最終審判なのだ。君は、自らの手で目にすることになる。あの、高みにいる偽善者たちが、終末が来た時、どれほど醜い顔を晒すことになるのかを」
ミレイユは、カシウスの、暗闇の中でまるで燃えているかのような双眸を見つめ、大口で喘いだ。彼女の内なる全ての憎悪、無念、絶望が、この瞬間、一つの、この上なく鮮明で、この上なく魅力的な、考えへと凝縮されていった。
彼女は、ゆっくりと、ゆっくりと、頷いた。
「行け。我々の運命を弄んだ者たちに、復讐を!」
カシウスは、満足げな笑みを浮かべた。彼は優雅に身をかがめて一礼すると、踵を返して闇の中へと消えていった。
彼の言葉が、絶えずミレイユの耳元で反響している。ミレイユは、慌てたせいで服にできた皺を、冷静に整え、どれほど久しぶりかも分からない、心の底からの笑みを浮かべた。




