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真夏の狂雪、鉄槌の幕開け

盛夏の太陽が、容赦なく大地を焦がしている。

生温かい風が豊かな樹冠を撫でると、青々とした葉がサラサラと心地よい音を立てた。枝葉の隙間からこぼれ落ちる陽光が、土の上にまだら模様の美しい光の網を織り上げている。


澄み切った蒼穹そうきゅうを飛鳥が力強く羽ばたいていく。

やかましく鳴く虫たちも、日照りに強い植物でさえも、午後の気怠い酷暑を逃れようと、貴重な木陰に身を潜めていた。


だが。

この平和な盛夏の風景画を乱暴に塗り潰すように、それは前触れもなく訪れた。


季節外れの吹雪である。


最初は、ほんの数片の雪の結晶だった。

宙を舞う間に夏の熱気で溶け、冷たい雨の雫となって、焼け付いた土の上にポツリ、ポツリと不自然な染みを作った。

直後、気温が底が抜けたように急降下ダイブした。

季節の境界線を力任せに引き裂くように、濃密な風雪が天から雪崩れ落ちてくる。

人々が驚愕して空を見上げた時、あのおごり高ぶる太陽は、すでに分厚く重苦しい鉛色の暗雲に完全に呑み込まれていた。


狂ったような夏風雪の中。

ズシン、ズシンという一糸乱れぬ重厚な足音を響かせ、極寒仕様の軍服に身を包んだ鋼鉄の陣列が、白い亡霊のように雪原を迅速に進軍していた。


「だから言っただろう、ウォルフ。我々は必ず、ここへ戻ってくるとね」


殺伐とした隊列の傍らで、金縁眼鏡をかけた男が風雪を正面から受けながら、悠然と微笑んでいた。

その身から放たれるのは、絶対的な自信。彼は首を向け、隣を歩く、顔に醜悪な傷跡を這わせた男に語りかけた。


「最初から分かっちゃいたが……てめぇは正真正銘、イカれた狂人だよ」


ウォルフと呼ばれた男は鼻で笑い、忌々しそうに背後を振り返った。


徹底的に焼き払われた野営地の跡地。

そこで、数百名もの兵士たちが吹雪にも負けず、熱気にあふれた様子で瓦礫の撤去と建設作業を進めていた。轟音を立てて木が切り倒され、士官の荒々しい号令が飛び交う。

この場所は間もなく、大軍の前進基地として生まれ変わる。すべてが計画通りに進めば、ここは『鋼心連邦』が王国の心臓部を直接えぐるための、長期的な兵站へいたん拠点となるのだ。


革手袋をはめた手で、ウォルフは泥と雪にまみれながら働く兵士たちを指差した。

皆、若く、屈強で、その顔には功名心への渇望がギラギラと浮かんでいる。

「オーエス!」という威勢の良い掛け声と共に、巨大な丸太が地盤に力強く打ち込まれ、吹雪の中で基地の骨格が急速に組み上がっていく。


「あの血の気にあふれた若造どもは、夢にも思ってねぇだろうな。目の前にいる一番頼りになりそうな指揮官サマが、一歩ずつ自分たちをミンチ製造機ひきにくきに放り込もうとしているなんてよ」


ウォルフの口調には、傭兵特有の冷酷な嘲笑が滲んでいた。


カシウスは中指で眼鏡のブリッジを押し上げ、意味深で優雅な笑みを浮かべた。


「人聞きの悪い。私は彼らに――そして君にも、運命を変えるに足る『仕事』を提供しているだけさ。その仕事があるからこそ、君たちのような救いようのない連中は、飯を食いながら私を愚痴り、罵倒する余裕を持てるのだろう?」


毒気を抜かれたようなウォルフの顔を見て、カシウスは心底どうでもよさそうに肩をすくめた。


「存分に罵りたまえ。要求した仕事を完璧にこなしてくれるなら、私は一向に構わない」


カシウスは顔を上げ、暴雪に覆われた天を仰いだ。

牡丹雪ぼたんゆきが際限なく降り注いでいる。骨の髄まで凍りつくような冷気が、雪など降るはずもないこの季節から、強引に夏の支配権を剥奪はくだつしていた。

彼らの進軍ルートの先では、冷ややかな白霧が遠くの山々をとうに呑み込んでいる。


「だからね、ウォルフ。君が懸念する必要は微塵もないのだよ」


カシウスは振り返り、このひどく反りの合わない相棒と視線を交えさせた。


「現在、王都と南方では、すでに我々にとって極めて有利な『嵐』が吹き荒れている。たとえ、かつて単身で戦局を引っ繰り返したあの化物モンスターでさえ……」


カシウスの声は風雪に掻き消されそうに不鮮明だった。だが、言葉の端々から漏れ出す絶対的な自信は、鋭利な刃となって聞く者の鼓膜を引っ掻く。


「……誰一人として、必至なる鉄槌てっついを止めることはできない。彼女は、かつての誤った選択に対し、凄惨な代償を支払うことになるのさ」


ウォルフは、その極めて扇動的な演説に当てられることはなかった。

彼はただコートの襟を立てて首を振り、カシウスの狂言を、漫天まんてんの風雪ごと外へ締め出そうとするだけだった。


「俺は金をもらって、契約書に書かれた仕事をするだけだぜ、カシウス……それ以上でも、それ以下でもない」


常理を覆す、狂った夏の暴風雪の中。

第二次辺境戦争は、ローレンス王国が最も衰弱し、最も無防備なこの瞬間に――轟音と共に、その絶望の幕を上げたのだった。

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