誠実なる返信
親愛なる仲間、ミリィル・ルルトへ
手紙、確かに受け取った。
遠く離れた地にいるというのに、心配をかけてすまない。
君の言う通りだ。私たちは「仲間」だものな。
水臭い隠し事なんて、私たちらしくない。
だから――君の望み通り、腹を割って話そうと思う。私の今の、偽らざる本音を。
文面から、異国での充実した日々が目に浮かぶようだ。
その土地に馴染み、安らぎと幸福を感じていること……その空気感が、何の隔たりもなく伝わってくる。
今の私にはまだ遠い境地だが、いつか辿り着くべき場所として、その背中を追わせてもらうよ。
まずは、私の近況から話そうか。
春に、播種期の警備任務を利用してカシウスの陰謀を阻止したことは伝えたな。
あの男がそう簡単に引き下がるとは思えないが、あれ以来、奇妙なほど平穏な日々が続いている。
喉元に突きつけられた刃が消え、生存本能を刺激される危機が去った今――皮肉なことに、この弛緩した空気に戸惑いすら覚えているのが正直なところだ。
そんなふうに自分を見つめ直す時間の中で、事態は思わぬ方向へと転がり始めた。
驚かないでくれよ?
私は、「私兵団」を創設することにした。
この軍を創り上げる中核となるのは、ライナス先輩、クラウディア先輩、そして私による『同盟』だ。
構想は、全騎兵による高機動部隊。魔法騎兵を主軸に、槍騎兵と弓騎兵で脇を固める編成だ。
正直、我ながら絵空事だと思った。
こんな無謀な計画、まともに相手にされるはずがないと。
だが意外にも、先輩二人がこの狂ったプランに食いついてきてね。なら、やるしかないだろう?
来週、シメールを連れて軍事戦略科の準備会に乗り込むつもりだ。彼女なら、槍と弓の部隊を見事に統率してくれるはずだ。
だが、仲間よ。わかっているだろう?
軍を維持するには、前線指揮官だけでは足りない。兵站と財政を握る優秀な「執事」が不可欠なんだ。
君は今、銀行で働いていると言っていたな?
そこで得た知見は、何物にも代えがたい武器になる。
だから――これは私の勝手な願いだが、いつかこの私兵団が形になった時、君に「行政管理官」として戻ってきてほしい。
背中を預けるなら、君以外に考えられないからな。
……それと、野心的な話の裏で、一つ気がかりがある。
最近、女王陛下の態度がどこか掴みどころがないんだ。
いっそ機会を作って、直接問い質すべきか迷っている。
さて、君からの情報についてだ。
コルヴィノの件、非常に助かった。
彼が「異例」の抜擢を受けた指導者であることは明白だ。だが解せないのは、以前陛下に謁見した際、彼が「銀潮連邦の財務官」と名乗っていたことだ。
なぜ身分を偽る? 裏取りは私が進めておく。
銀行の件もきな臭いな。
たった三ヶ月で資産が一割増えるビジネス? 新鉱脈でも見つからない限りあり得ない話だ。
その高金利を支える利益の出処は、十中八九「黒」だろう。
渦中にいる君なら何か掴めるかもしれないが……頼むから、無茶はしないでくれ。
(危険な任務になる予感がする。君自身の安全を最優先にしてくれ。いいな?)
ふぅ……重い話はこれくらいにして、最後に明るい話題を。
最近、深海商会の会頭ヴァッナ・クロウェル氏の令嬢――リアンドラが入学してきたんだ。
その時、挨拶代わりに大きなケーキをもらってね。
これが絶品だった。シャルなんて目を輝かせて「私も作る!」と張り切っているよ。
君が帰ってくる頃には、シャルの手作りケーキが待っているかもしれない。
楽しみにしていてくれ。
いろいろ書いたが、一番言いたいのはこれだ。
――絶対に、無理はするな。
調査は君のペースで構わない。
君の仲間、
シミア・ブルン




