騎士の道と新たな出会い
雪が取り除かれた小道を歩きながら、シミアは目の前の城塞のような建物を見上げていた。
シミアが以前訪れた宮殿とは異なる。建物自体は石材を主とした造りで、壁は非常に滑らかに磨かれている。壁には物語を語るかのような彫刻が施され、城の入り口の左右には一体ずつ人型の像が立っていた。左側の像は戦槌を振り上げ、叫ぶような姿勢をとり、もう一方の像は書物を手にし、静かに読み耽っている。
シミアが足を踏み入れようとしたその時、別の方向からの声が彼女の注意を引いた。
入り口の壁際で、二人の男子生徒が、地面に倒れている緑色の短い髪の男子生徒を憎々しげに見下ろしていた。
「たかがロースアン二階領主家の三男坊が、このコス家次男の俺に逆らうとはな」
話している男子生徒は茶色の短い髪に、茶色の瞳をしている。彼の手には、燃え盛る炎の球が集まっていた。
「ごめんなさい、本当にわざとじゃなかったんです。ごめんなさい……」
囲まれていた男子生徒は、壁際で頭を抱え、体が微かに震えている。
「一体どう償ってくれるんだ、見ろよ。このズボン、お前が汚したんだぞ」
話している男の指差す先を追って、シミアはズボンの裾に泥が付着していることに気づいた。平民がよく履くズボンとは違い、このズボンは比較的滑らかで、色合いも鮮やかだ。
シミアは、通ってきた庭園を思い出した。狭くはない道があるとはいえ、道の両脇は庭師によって手入れされた土壌だ。常に水が撒かれているため、泥の中を歩けば、こうなるのも無理はない。
突然、炎の球を集めていた男の顔に、邪悪な笑みが浮かんだ。
「そうだ、同じくらい汚いけどな。俺のズボンの裾を、お前が口で舐めきれいにしてやるのを許してやるよ」
そう言いながら、彼の手中の炎の球は消え、泥の付いたズボンの裾を緑髪の男子生徒の前に突き出した。
緑色の短い髪の男子生徒は、信じられないという表情でその要求を突きつけた相手を見上げた。その得意げな笑顔の奥には、一体どんな感情が隠されているのだろうか? おそらく想像に難くない。
「そこまでよ。これ以上続けるなら、あなたたちを顔が腫れ上がるまで叩きのめしてあげる」
三人の男子生徒が声の主の方を見ると、シミアが片手に握りしめた雪玉をいくつか抱え、もう一方の手で雪玉を弄びながら、投げつける姿勢をとっていた。
「ほう? お前、上納する価値のあるものを持ってるじゃないか!」
茶髪の男子生徒の下品な視線が、制服を着たシミアをねめ回す。一瞬、彼の視線はシミアの髪に釘付けになった。
「おい、行くぞ」
彼は隣にいた仲間の肩を叩き、深刻な表情でそう言った。
「何を言ってるんだ?」
「“罰せられし者”だ」
「“罰せられし者”」という言葉を聞いた瞬間、彼の顔には恐怖の色が浮かんだ。
まるで怪物から逃げるように、二人は素早く遠回りしてシミアの視界から走り去った。
彼らが去るのを見て、シミアは安堵のため息をついた。
彼女は手に持っていた雪玉をすべて脇に投げ捨て、緑髪の男子生徒の前に歩み寄った。
「怪我はない?」
彼女は手を差し出し、優しい口調で相手に話しかけた。
「近づくな、お前には関係ない!」
緑髪の男子生徒は壁に手をついて立ち上がった。
「怪我がなくてよかった」
シミアの言葉を無視し、彼は顔を背けて遠回りし、校舎へと走り去った。
失意のシミアが振り返って城へ入ろうとしたその時、一つの影が彼女の前に立ちはだかった。
それはシミアより頭一つ分も背が高い女性だった。彼女のすらりとした体型は、制服に映えて格別に大人びて見える。炎のように鮮やかな短い髪を持ち、その鳶色の瞳には、まるで揺るぎない力が宿っているかのようだ。腰には長剣を携えており、鞘の清潔で優美な紋様が、持ち主の身分を物語っているかのようだった。
「こんにちは、シメル・ディエスと申します。先ほどのお姿、とても勇敢でした。お会いできて嬉しいです」
シミアは少し戸惑いながらも頷き、差し出されたシメルの手を握り返した。
シミアはしばらく俯いていた。勇気を振り絞るかのように、口を開いて尋ねた。
「私はシミア・ブレンと申します。……貴女は、私を恐れませんか?」
シミアの問いを聞くと、シメルの顔には笑みが浮かんだ。
「私は噂で人の善し悪しを判断しません。騎士として、自分自身の判断を持つべきだと考えていますから」
シメルの返答は、シミアにとってあまりにも凛としたものだった。彼女はただシメルの視線を見つめ、目にたまりかけた涙が決して流れ出さないよう、懸命に堪えた。