新たなる学園生活
領主学院が用意した制服に身を包み、学院へと向かうシミアの顔には、喜びが溢れんばかりだった。
もしシミアにその理由を尋ねるなら、彼女はこう答えるだろう――「制服が本当に快適だから」。
制服自体は紅白の配色で、優美なラインとデザインは、まるで制服そのものが芸術品であるかのように際立っている。服の内側、人目につかない場所にも一切の妥協がない。領主学院の女学生用はロングドレスで、このデザインは仕立て屋の店先でもよく見かけるもので、裕福でない家庭の婦人たちにも好まれるスタイルだ。だが、この制服はそれらの仕立て品を遥かに凌駕し、ロースアンの気候を考慮して、ドレスの裏地にも十分な保温効果が施されている。
「シミア様、私が申し上げた礼儀作法は決して忘れないでくださいね」
シャルの念押しに、シミアは少し興醒めしたような表情で頷いた。
「それから、傷も、治癒したとはいえ、無理な動きは避けてください。もし傷口が開いたら、命に関わるかもしれませんから」
「うん」
シミアは理解していた。前回、傷を負ったまま無理に戦い、結果として傷が悪化し、シャルが魔力を使い果たして気を失ってしまった一件があるからだ。それゆえ、シャルの説教に対し、シミアは一切の反論も異論も挟めなかった。
シミアの入学について、迎えに来た魔術師からの説明では、ミレイユ女王の前での礼儀作法が不十分であったため、とのことだった。
本来、将来の領主を育成するための学校では、現役の領主を生徒として受け入れることはない。理由は単純で、実際に権力を持つ領主が学生となれば、教師が気兼ねして指導ができない可能性があるからだ。これは明文化された規定ではないが、募集における暗黙の了解となっていた。
シミアがこの特例となったのは、ミレイユ直々の計らいによるものだった。
その理由は、このところ広く知れ渡っていた。貴族だけでなく、ロースアンの平民にも耳にする話だ。
領主継承式の新領主が、女王に対し不敬を働いたため、厳しい私刑に処された、と。
これと共に広まったのは、新女王の非常に厳格なイメージだった。
シミアはシャルに前世の記憶について、そして学校が自分に与えた負の影響について、ずっと打ち明けていなかった。しかし、昨夜の夢では、クラスメイトにいじめられた光景が再び映し出された。以前とは異なり、今回は夢の中の体験が非常に現実味を帯びていた。
シミアは心の中で、これはもう前の世界とは違うのだと、ひたすら自分を慰め続けた。
この世界には、自分を怪物のように見る両親はいない。自分に暴力を振るった叔父もいない。冷たい目で見ていた叔母もいない。自分をいじめたクラスメイトもいない。自分を誤解した教師もいない。
それでも、不安の種はとっくに心に根を下ろし、大木と化していた。
――どうか幸せに生きてください!
――今日から、私は貴方のために全てを捧げます。
――私のために死んでくれますか?
シミアを絶望から救い出したのは、優しい母親の言葉。シャルの決意に満ちた告白。そしてミレイユの懇願の声だった。
いつの間にか、壮麗な建築群が目の前に迫っていた。
シミアはシャルの方に手を伸ばし、その肩に手を置いた。
シャルはシミアの手を両手で包み込んだ。
「シミア様」
「うん」
「新しい生活、頑張ってくださいね!」
シミアの不安に気づいていなかったものの、別れ際のシャルの言葉は、確かにシミアに勇気を与えた。
シミアは顔を上げた。白雪に覆われた庭園が目に飛び込んでくる。その先には、美しく壮大な邸宅がそびえ立っていた。学び、成長し、新しい生活が始まる。彼女が憧れていた新生活は、あと数十歩の距離にある。勇気を出すため、彼女は深く息を吸い込んだ。柔らかな微風が、彼女の髪をそっと撫でる。
転生後の学園生活が、今、正式に幕を開けた。