うわぁお、サキュバス……
「……あれ、サキュバスこっちに気づいてるっぽくない?」
「え? ……あ、オワタ」
リリィとリエラは後ずさっていく。
……というか逃げていく。……おい! 僕を置いていくな! 僕足遅いんだぞ!
大ボス シュヴォルト山の サキュバス
体力 900/900
視界の上部にこう表示された。
……大、ボス? ……体力900?
あっ……ダメだこりゃ。逃げれないやつだ。
「あら、迷子の女の子? ふふ、可愛い子ね。でも……貴女はもう助からない。何故かって? 貴女は私に殺されるからなの」
「アッ……アッ……オワッタ……」
ボス戦なんて聞いてない!
……いや誰も言うわけないか。
「頑張って! シロ〜!」
「頑張ってね白兎」
「たすけてよぉ! なんでぼーかんしてんの!」
アッ……アァ……アァァ……。
オワッタ……オワッタンダァ……。
「……う、うりゃぁぁぁぁぁぁ!」
……あぁもう! もう何でもいいや!
僕は杖を振り回した。
サキュバスの体力は40減った。
「えぁっ痛っ……!? えっマジでクッソ痛い……!? なにこれ……!? 傷もないのに……!?」
何かサキュバスは杖に当たった部分を押さえだした。あの、完全に素みたいな反応してますけど……。
「こ、このぉっ……! ニードル!」
「うぉっと……」
サキュバスは針を飛ばしてきた。
だけど変な方向に飛んでいき、全く当たらなかった。
「何で当たらないの……っ!? ニードル! ニードル! 何で……っ!」
「……」
サキュバスの放つ魔法は全てどこかへと飛んでいく。
「なっ……何で……っ……何で当たらないの……っ……!」プルプル……
サキュバスは今にも泣きそうな目をしている。可哀想に思えてしまう。
僕は慰めようかと少し近づいてしまった。
「えっとー……」
「ニードル」
「っ!?」
僕はその姿を見て油断していた。
先程までのものは全て演技だったのか、冷静に放たれたニードルが僕の腹に直撃した。
「……かほっ……っ!?」
「ゆ、油断大敵、という言葉をご存知? ど、どんな相手でも油断はしてはいけませんよ……!」
ゲームとはいっても、痛みも感じるし下半身は動かしづらい。
……というか、何か忘れてたような……。
あ、仲間にしたモンスターとかいたじゃん。
何で出してなかったんだろ。
「……えぁっ……き、キノコン……っ!」
「やっぱり忘れてたんですね!?」
申し訳ない。
でも任せた!
キノコンは手に槍を持って、サキュバスに向かって構えた。
「|ゲヴィターシュペーア《Gewitterspeer》!」
「えぁっ……!?」
キノコンは水と電気を纏った槍をサキュバスに突き刺した。サキュバスの体力が500も削れた。強くないですか。
というかドイツ語……?
「エレキ!」
「あっばbばあっばbあ」
サキュバスはバグったような声を出す。
体力が70減った。
サキュバスは膝から崩れ落ちる。
「ライト!」
僕も援護射撃をする。
サキュバスの体力が50減った。
「アイス! ファイア!」
サキュバスの体力がアイスで35、ファイアで45削れた。
「ウォーター!」
キノコンの放った魔法でサキュバスの体力が60削れた。
「ライト!」
クールタイムが終わり、ライトを放った。するとさっきよりも高く大きな音が鳴り、サキュバスの体力が80減った。
「……えっ!? ちょっ勝手に……!」
トドメを刺そうとしたら、何故だかライが勝手に出てきた。
サキュバスの方へと向かっている。
ライはサキュバスに突進した。
サキュバスは体力が30減った。
サキュバスはぶっ倒れた。
サキュバス を倒した!
経験値(600EXP)を獲得!
白い兎 さんのレベルが15 上がった!
白い兎 さんはスキルポイントを30 つ獲得!
キノコン のレベルが上がった!
キノコン はスキルポイントを2 つ獲得!
ライ のレベルが21 上がった!
ライ はスキルポイントを42 つ獲得!
僕はレベルが20になった。
とりあえず魔法を覚えておこう。
ニュートロンとテレパシーを覚えた。
どちらもスキルポイントを5つ使う。
核属性の攻撃魔法と、テレパシー。
残りは何に使おうかな〜……ん?
ニューク スキルポイント:20 核
とんでもなく威力が高い魔法。
クールタイムが長い。
範囲内の自身除く全てに無差別攻撃する。
白い兎 さんはニューク を覚えた!
……よし! 強そうだしね! うん!
……っと。ライはサキュバスに向かって何かをしていた。
「……何してるのライ」
「サキュ……バス……ノ……カらダヲ……ノッとッテ……イま……ス……」
サキュバスが何か話した。
体を乗っ取って……? ……え?
ライなの……?
「モう……チょッとで……おわリます……ノで……まってテ……ください……」
「あ、うん……」
……多分、ライがサキュバスを喋らせているんだろう。うん。なんか乗っ取るとか聞こえたけど。
ライはサキュバスの口の中へと入っていき、いつの間にか消えていた。
……少しすると、サキュバスは目を開けた。
「……乗っ取り完了です、ご主人!」
「おーけー。僕は何も考えない」
おめでとう!ライ がサキュバス の体を乗っ取った!
何も考えてはいけない。
けしてスライムがサキュバスの体乗っ取るとかえっちすぎるでしょ……! とか考えては。けっして。
「これでいつでもお話できますね! ご主人!」
「アッ……ウン……」
ライは僕をおんぶして言ってくる。
やめてよ。おんぶしないでよ。
「アッ、百合……アッ……」
「しまった、リエラが機能停止した」
……リエラは百合が大好物らしい。
いや、僕は男だぞ! 三日前まで!
「……とゆーかライ、おろして」
「ぜっったいに嫌ですご主人。ご主人を歩かせて疲れさせたくないので。でも私を足にしてくれれば良いのでは? ご主人の為ならなんでも受け入れますしなんでもしますから」
「いってることがめっちゃこわいんだけど……」
ライは目にハートを浮かべていた。
うん。とてもえっちですえっちすぎます。
おとこのこにはしげきがつよすぎます!
……僕女の子になってたわ。
「アッ百合ぃ……」
「もどってこーいリエラ」
「うーん、えっちだぁ……」
「リエラの体もえっちでしょ何言ってんの」
「おちついてリリィ、キレるとこじゃない」
◇
あの後、タマと合流した。
「……何その女の子……?」
「ライ」
「……え? あの頭に乗ってた……」
「うん。それで合ってる」
タマは口をあんぐりと開けてライを見る。
「……そうはならないでしょ」
「なっとるやろがい」
「スライムがなんで女の子になるんだよ」
……ライが倒したサキュバスの体を乗っ取ったからです。すんごいえっちだよね。
「……オレ今からスライム大量に仲間にしてサキュバスにぶち込もうかな」
「リエラがなんかヤバい発想してる」
えっちなハーレムだね。うんうん憧れるよ。
「……というかほんとにおろしてよ」
「いーやーでーすー!絶っ対嫌ですー! ご主人を守るためなんですー!」
「わかった、じゃあむりやりしまうね」
僕はライを収納した。
『でもま、いつでも出れるんですけどね?」
「……もういちどかってにおんぶしてみろ。ニュークのいりょくをライでためすから」
「すみませんでした痛いのは嫌です」
意外と脅しとして有効なのかも……。
◇おまけ
ニュークの威力を確かめるため、魔法の練習場みたいな所に来た。一人ずつに用意されてるため誰も入ってこれないし、とても広大。
「ニューク!」
練習相手みたいなかかしに撃ってみる。
すると、かかしの上にダメージが表示された。
8192ダメージ!
……え? ……いや、え?
『すみませんでしたもう二度と勝手におんぶはしません……!』
ライ 無 162cm H 桜髪碧眼
無 LV:22
スライムに乗っ取られちゃったサキュバス。
特殊能力:誘惑、寄生
魔法:ニードル、ブルンスツァイト、ウンマームン、シールド、テレパシー