近衛坂 玉乃
「……ご主人、起きてください!」
「……ライが寝させたのに……うぅん……?」
タマとヴィーフェが来ていた。
「……白兎くん……何ともない……?」
「まぁ、うん」
タマは私に向かって言う。
「……本当に?何ともないの?」
「だから”私”は大丈夫だって……!」
「……大丈夫なわけ、ないよね」
タマは急に怒り出した。
「私、じゃないでしょ、僕でしょ?」
「人の一人称を勝手に決めて……それがよくない事の自覚はないの?」
タマは私が言い返したことに驚いた。
「そもそも、今の私は女になってしまったんだよ。男なら僕で分かる。けど、強制的に僕っ娘にさせて楽しい?」
「嘘……白兎くんが怒ったことなんか……」
今まで私が怒ったことはない。
でも、流石に我慢の限界だ。
「……というか、僕の語源は知ってる?元々は奴僕や下僕……その僕だ。人を奴隷扱いして楽しかった?」
「……そ、そんなつもりじゃ……」
私もそんなこと考えていない。
脅しみたいなものだ。
「……私のこと、ほとんど知らないくせに勝手に決めつけたりして……。二度とその顔は見たくないよ。近衛坂さん?」
「……そ、そんな……!そんなぁ……!」
「……皆戻って。行くよ」
◇
……言い過ぎたな。どう考えても。
……でもほとんど本心だ。十年間溜め込んできた本心。
「……今は……五時四十分か……。もうちょっとで夕飯か……」
さて。俺様最強☆とやらを探しに聞き込みだ。
「……あぁ、その人ですか?この塔に登りましたよ」
「そ、そうですか……」
すぐ見つかりそうだ。
……この塔はエレベーターで登るらしい。
エレベーターあるの?
{上へ参ります}
{最上階です}
「速っ」
二秒もなく着いた。流石に速すぎる。
そして、最上階ではこんな声が聞こえる。
「フッハッハッハッハッハッハ!人がゴミカスう〇こち〇ちん〇便ア〇タレバカのようだ!」
長ぇよ。そんでよく分かんねぇよ。
多分お前俺様最強☆だろ。
「うーんやっぱ俺様最強!」
「わかりやすい自己紹介をありがとう」
とりあえず倒しておくか。
対人戦は初めてだけど。
「んぅ?俺様に杖を向けてきて……俺様に勝てると思ってんのかガキ?」
俺様最強☆……とやらは、おっさんだった。
ハ〇で、太ってる……。
「勿論そうに決まってるだろ」
私がそう言った瞬間、ぽふ……という効果音と共に、私はちょっと煙に包まれた。すぐ晴れたが。……なんか視線高くなってるし。
「……成長しやがったこいつ……!」
「……本当だ。このまま成長してる……」
私は多分、アルビノの女性になっていた。
胸デカイし、肌白いし、声高いし。
……でも何で服破れてないの?
「……まぁいい。先手必勝……」
「俺様を一撃で倒せるとでも?俺様は無属性だ……!弱点など、ない……!」
……調子に乗ってやがる。
そういやニュークって無属性のはずのサキュバスにありえないダメージ与えてたな……。
まさか、核属性は無属性に強い……?……いや、ないか。ニュークがバカみたいに火力が高いだけの可能性があるし。
……でも、ニュークを撃てば勝てる……のかも。
なら……必殺技を撃つか。