剣の山
……言っておくが、僕は厨二病だ。
これが無駄にそれっぽく会話した理由である。それ以外の理由があると思う?
「……そういや、さっきの奴相手なら独り言みたいにスラスラ喋れたな……ラーナと戦ってた時も」
……ラーナが呼びました?と言った気がしたが、僕は呼んでないと一蹴した。
「……じゃあ、今日もボスを探しに行くか」
その前に、二人を探してからにしよう。
……本当にどこいった?
◇
タマは武器屋に、ヴィーフェは公園にいた。
僕は二人を連れて、近くの山に向かうことにした。
「……この山ボス結構いたよ?ドゥラハンにサキュバス、グリフォン……」
「そのなかのいったいでもたおしたいから」
「……頑張ってね」
あわよくば全部倒したいけども。
「……一番近いのはサキュバス。それなりに強かったような気がするけど」
「やってからかんがえるよ!」
「……ふふっ」
ヴィーフェがやっぱりね、と言う。
「……でも、男のまんまじゃなくて良かったね。サキュバスって男には強いから」
「まぁそうだろうね」
歩いていると、何か悪魔のような人影が見えた。
「あれがサキュバス。けっこう強いよ」
「じゃ頑張ってー」
◇
「……ボスはお前か?」
「ええそうね。口の悪いお子様ちゃん?」
相手は太い角を持ち、長い桜色の髪、黒い蝙蝠のような翼、どんな下着よりも際どい服装……。そして、とてもおっ……とおし……
……なんでもないです。
「しっかしね、貴女一人で私に挑むの?仲間がいるじゃない。無謀じゃないの?」
「僕のただの我儘な挑戦だよ。負けそうになったらどんな手段を使ってでも逃げるけど」
「……面白いね。逃げると堂々と言うって」
「僕は我儘はしても、そこまで自惚れてもいないし」
相手は不気味な笑みを浮かべる。
「気に入ったよ。君の強さ、見定めるとしよう」
相手は言い放つ。
「シュムツィヒ!」
「……っ!」
ハート型の魔法が全方位から襲ってくる。
とても対処出来る程の量ではない。
「|ウナンステンディヒ《Unanständig》!」
「……かっ……!」
奴は追撃してきた。
細かいハートの粒が視界を邪魔する。
そして、呼吸が荒い。落ち着かない。
男だったらあれが布越しに
こんにちは!をしていた。
そして、意識がそっちに向いたせいで、かなりの数被弾した。
「……あら。まさか防御魔法の一つも覚えていないの?」
「……なんだよ……それは?」
「防御魔法を知らない?嘘でしょう?メイジのプレイヤーの多数が覚えている魔法よ?」
敵とは思えない程隙だらけだ。
しかし、攻撃しようにも対処されるだろう。
それよりもだ。防御魔法?
そんなのあったのなら覚えとけば良かったかなぁ……。
「覚えれる魔法の上のほうにはバリアだのシールドだのがあるでしょ?回復魔法の次くらいよ?それとも何、レベル1で来たの?」
「……上のほうで……回復魔法の次……?」
そんな名前の魔法は見たことない。
今もう一度見てみよう。
ヒール
リザレクション
ファイア 習得済み
フレイム 習得済み
……
「……ファイアは防御魔法か?」
「違う……ってまさか、習得すらできないの……!?火属性の攻撃魔法は防御魔法の次にあるはずよ……!?つまりは……」
僕は防御魔法なんて、覚えられない。
……ということだろう。
「……まぁいい。それなら、そっちが一回、攻撃魔法を出してみてよ」
「……分かった。最大火力でいってもいい?」
「最大火力なんてたかがしれている。私を倒し切れるの?」
「……一撃で葬れるよ」
「やっぱり君は面白いね。見せてみてよ。恐怖心より好奇心が勝っている」
恩を仇で返すようで悪いが、本人もノッている。
「ニューク」
青白く眩い光が現れ、木々はなぎ倒されたり、ギシギシと揺れている。
衝撃で山から土砂が流れ落ちる。
「……つ」
「生きてるのか」
「つ……つ……」
煙が晴れて、敵の形が見えてくる。
「強すぎるでしょう……!何なのよこの威力は……!?」
「……もう怒った。必ず私は君を、これの報復で殺す」