弱いから
……日が進む度に幼女化が進むのだろうか。
それでまた、何度もこうなるのだろうか。
「……落ち着いた?」
「……うん」
やはり僕の心は弱い。
幼女化したせいで弱くなったのだと考えてしまう。
「……一人で抱える物じゃないからね。辛いときは抱き着きにきてよ?」
「……ぼくとハグがしたいだけじゃないの?」
「はは……流石にバレてたか」
しかし……もう僕は母親の顔なんて覚えていない。なのに未だに傷が残っているのだ。本当に、どうしてだろうか。
「……あ、もう夕飯時じゃない?」
「……うん」
タマはじゃあ食べ終わってから、と言ってログアウトした。僕も同時にログアウトした。
◇
「……」
「大丈夫……なの?お兄ちゃん……」
現実でも、床が濡れていた。
……正確には、僕の吐瀉物で。
現実でも吐いてたんかい……!
「大丈夫……?ゲーム中に吐いてたけど……どうしたのさお兄ちゃん……」
「……な、なんでも……」
妹に知られたくないとか言っていたのに。
妹は知っていた。詮索しないで……。
「……体調でも悪かったの?」
「そんなことないよ……!」
「じゃあ、なんなのさ……」
黒菜は心配してくれているんだ。
一人で抱える物じゃない……とタマは言っていたけども……。
黒菜には背負ってほしくない。
「……お兄ちゃんってさ。いつも思ってたけど……自分で背負ってばっかだよね。馬鹿なんじゃないの?」
「……」
「まったく……。お兄ちゃんは某ゲームなら既に反転してるよ」
「……そのゲームおとこいないでしょ」
……と言うが、黒菜の言う通りではある。
だけど、兄として……黒菜には……。
「話してよ。さもないとキャロライナリーパーを口にぶち込むよ?」
「……わ、わかったよ……」
まぁ、流石に唐辛子を口にぶち込まれたくはない。話すしかないようだ。
「……ぼくらにはママもパパもいないでしょ?」
「……考えたことなかったけど、そだね……。」
「……ママはね、むかし……ぼくのめのまえでしんだんだよ」
黒菜はゆっくりと頷いて聞いていた。
「……パパは、ママがしんだからぼくらをすてたんだよ。もとから、ママがいなければそだてるきがなかったらしい」
「……そう……だったんだ」
……そういえば、黒菜に言うことがあった。
忘れていたが、あの父親が僕に言っていた事だ。
「……てめーらをそだててきたんだから、もちろんおやこうこうしろよ?……とかいってたかな」
「……」
胸糞悪い話だ。
何が育ててきた、だ。何が親孝行だ。
子孝行をしろよ糞野郎が。
パパなんて呼びたかないよ。
僕の口が勝手にそう呼ぶだけなんだよ。
「……あ、えっと……お兄ちゃん……ご飯って食べるの?」
「……いい」
食べる気分じゃない。
トラウマが再発したんだ。何もしたくない。
もう嫌だ……。
◇
……でも、ゲームだけは別だ。
ゲームだけはしたい。……でも
「……やることがない」
虚無だ。やっぱり気分が悪い。
何か目標を持ってゲームをしたほうが気分が良くなる。
「……どうせならおっきい目標がいいかな……。小さかったらすぐ達成して何も変わらないし……」
……おっきい……目標か……。
ゲームで……最強を目指す……とか?