フラッシュバック
急展開ktkr
さて。あの後無事に家に帰れたわけだが……。
「……明日起きたら僕の精神すら幼女化してそうだなぁ……」
嫌だ。非常に嫌だ。
男としての最低限のプライドが警報と嫌悪感を鳴らしている。
「……諦めるしか、ないかな」
結局どうすることもできないんだ。
それに、まだ可能性の話だ。
ならいっそ……遊びに遊んでやろうか。
◇
「こんにちはー!」
「あら〜♡今日もいらっしゃいねお嬢ちゃん〜♡」
僕は爆走♡カマさんの店に入った。
品物をじっくりと見ておこうと思ったのだ。
ダサい服も多く、ボロい服も多かったので、一部を紹介しよう。
Tシャツ ☆★★★ 売値:25G
よく見かけるTシャツ。
ぼーいずびーあんびしゃす と平仮名で書いてある。
もこもこコート ☆☆★★★ 売値:90
冬に着ても暑さを感じる程もこもこのコート。本当に極寒地帯の冬に着るように。
……もこもこコート……?もこもこにも限度ってものがあるんじゃないかな……?
あとぼーいずびーあんびしゃすは何?
せめて英語で言ってくれない?
光るパジャマ ☆☆★★★ 売値:100
夜になると光るだけのパジャマ。
敵に見つかりやすくなる。
ゴミアイテムじゃねえか……!
と色々見ていると、窓が割れる音がした。
「……何だぁこれは?値段の高ぁ店だ。そんな金持ってねえからよぉ、金ぁ寄越しな」
すぐに爆走♡カマさんは戦闘態勢に入った。
「おぉいおぉい、幼稚園児のガキがいるじゃねえかよ。こんなゲームを許可するなんて、お前の親は何してんだぁ?」
「……お……やっ……!」
その『親』という単語を聞くと同時に、僕の意志とは関係なく目が開く。鳥肌が立つ。
今まで、そんなこと言われても何も反応は示さなかったというのに。
幼女になった影響なのか。
僕の記憶がフラッシュバックする。
母親が急に倒れ、病院に連れていかれた日を。ほとんど動かない、心拍計を。
ピーーー……と、理不尽につげた音を。
ママがいたからそだてていたとほざく、ぼくたちをすてた、父親を。
「……はっ……はっ……はっ……!」
「おいおい、急に何だこのガキは。呼吸が荒くなりよってよ。傷心中だったんなら尚更親は何してんだって話よ」
黒菜も、そんなこと詳しくは知らず日常を楽しんでいるというのに。思い出した上に、精神がまた擦り切れた……。幼女になったのもあるだろうが、僕は弱い。
「……ママっ……!ぅ……ぅ……」
九年も前だというのに、涙が溢れる。
「ママぁ……」
黒菜が居たら、絶対に見せたくない顔だ。
僕は黒菜に対しては、頼もしく在りたい。
口から、何かが出そうになる。
必死に飲み込み、抑えたのだが……。
「……うぇ……ぁ……かっ……はっ……はっ……」
僕は、盛大に吐いてしまった。
「……パパぁ……」
憎しみが、恨みが頭に来た。
あの大人の顔が浮かぶ。
「……おいおい。いったい何なんだよ、このガキは。急に吐いたし。本当に何なんだよ」
僕だってそう思っている。
自分はどうなるのか、どうなっているのかと。
「……お嬢ちゃん、ちょっとこっちに逃げなさい!早く!」
「……はっ……はっ……はっ……」
疲れもないのに汗をかく。
口から少しよだれを垂らす。
でも急いで、店の外へと逃げた。
◇
「……白……い兎……えっと、今日はなんかごめ……んね……?」
タマと遭遇した。
今日のことを謝ろうとして……タマは急に本気の目になった。
「落ち着いて。落ち着いて……。最近はなかったのに……。ほら、口拭いて」
「……っ」
タマは僕の口を拭いた後、僕を持ち上げて背中を叩き始めた。
「よしよし。君は何も悪くないし、君は完全に被害者だよ。よしよし……」
久しぶりだ。
タマに慰められるのも、こうなったのも。
「……よしよし。よしよーし」
涙も出なくなった。
心もやっと落ち着いてきた。
……しかし、またなるんだろうなと思うと……うん。