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5-7 ウォールズ・ヘルズベイ攻略




 ビルセイルド基地の作戦会議室では、各地から集まった解放軍幹部たちが作戦会議を開いていた。部屋の前にはウォールズ・ヘルズベイ基地とその周辺の見取り図が書かれた紙が張られ、その前にランクストン総司令が立っている。それに向かい合う形で幹部たちが整列して座っている。

 全体に向かって説明をするランクストン。


「ウォールズ・ヘルズベイ基地は、グラウド国軍が保有する世界最大の基地だ。基地そのものの規模もさることながら、四方を高さ60mの分厚い城壁で守られている。さらにその城壁の裏には巨大な『空中砲台』がそびえ立っている……」


 ローズマンが軽く手を上げる。


「『空中砲台』について詳しく説明してもらえませんかね。この基地とセットでよく名が挙げられるんですが、細かくは知らないもんで」


「ふむ……」


 ランクストンは軽くうなずく。


「空中砲台というのは、ウォールズ・ヘルズベイ特有の建築物だ。五本の支柱に支えられて、上空へと押し上げられた要塞だ。しかも、その支柱の高さは120mにも及ぶ…………120mもの上空に浮かぶ巨大な砲台。それが空中砲台だ」


「そりゃあ、また、とんでもないモンですね……」


「ああ、その超高度に設置された要塞によって、城壁の裏からの大規模な砲撃を可能にしている。この空中砲台に設置されている基地砲は、およそ五十門。その火力は砦一つ分に匹敵する」


「へ……へぇ、砦一つ分……」


「加えて基地砲の射程は本来約450mだが、この空中砲台から放たれる基地砲は、高さによって上乗せされ、射程は推定600m……城壁からの距離だと550mになるな」


「しかも…………それが四方を囲んでるんですよね」


 ローズマンが確認するように言った。


「そうだ、この空中砲台の存在によって、元から世界最大規模を誇る基地の火力が、さらに増大されている。まさに驚異的と言えるだろう」


 ローズマンは思わず苦笑いを浮かべた。

 ランクストン総司令は全体を見渡して再び口を開く。


「では話を続けよう。このウォールズ・ヘルズベイ基地に対して、四方にある城門のどれかを目指して、まっすぐ前進して攻めた場合、城壁から550m手前で、空中砲台からの砲撃の壁が襲ってくるだろう。さらに500m手前で、城門と連結して建てられた砦からの砲撃の壁が襲ってくる。そして450m手前で止めを刺すように、ウォールズ・ヘルズベイ基地本体からの砲撃が襲ってくる。つまりウォールズ・ヘルズベイは、三層の砲撃の壁に守られていることになる」


 ロイム司令官が険しい表情で口を開く。


「これでは並みの軍勢なら、基地にたどり着くことすらできない」


 アールスロウが冷静な様子で口を開く。


「もし私が指揮官なら、これに加えて、城壁手前に多数の砲兵隊を配置させ、350m地点に第四の壁を作りますね。完全に息の根を止める形で」


 アールスロウの発言と共に、会議室は沈黙に包まれた。ランクストンも思わず口を閉ざしてしまう。

 そんな中、部屋の脇に座っていたファントムが冷静な声を響かせる。


「それも、計算に入れておくべきだな」


 ローズマンが眉を寄せる。


「つまり四層の砲弾の壁を想定する必要があるってことか」


 再びファントムが声を響かせる。


「さて……どう攻めるか」


 一人の司令官が声を上げる。


「今の話を聞くかぎりでは、正面対決は避けた方がいいですね、砲撃を避ける形で斜めから滑り込む形で近づいた方がいいでしょう」


 それを聞きローズマンが声を上げる。


「まあ、普通に考えればな……でも、どうもしっくりこないな……。この手の話だと、ロイム司令官が詳しいんじゃないですか。クラット基地も似たような守りをしてたでしょう?」


 ロイム司令官に視線が集まる。ロイム司令官は静かにうなずく。


「ふむ……この手の守りをする基地に対しては、最悪なのは長期戦に入ることですな」


 アールスロウが口を開く。


「つまり最善はその逆、早く攻め、早く落とす……ということですね。もし砲撃から避けるように動けば、それだけ基地の回りをウロウロする羽目になり、そのあいだに逆に砲撃の餌食となる」


 ランクストンが口を開く。


「……となると、たとえどれだけ火力が脅威でも、細かく動きまわらず、突撃したほうがいい……と言うことになるが……」


 それを聞いてロイム司令官がうなずく。


「そういうことになります。ウォールズ・ヘルズベイの火力から下手に逃げようとすれば、かえって追い回されることになるでしょう。どんなに嫌でも前進して立ち向かう覚悟がいります。それと…………戦力を小出しにしないことです。小出しにしたらした分だけ、砲撃による被害が大きくなる。戦力は固めておくべきです」


 それを聞いてローズマンがパッと口を開く。


「そうなると、戦力を固めて横陣で前進ってことになるな」


 すると副総司令の一人が声を出す。


「戦力を固めた上での横陣では、突撃速度が削られる。基地砲のいい的だ」


「じゃあ、縦陣か……」


 すると司令官の一人が口を開く。


「その場合は、砲撃を抜けるにはいいが、そのあとに控える国軍勢を相手にする際不利になる」


「となると斜め陣か……」


「ローズマン司令官、あまりいい加減な意見をポンポン出さないでもらいたい」


「こういうのは意見が多い方がいいんだよ」


 一人の司令官の発言に、ローズマンが少しにらみながら言い返した。


「こういう手はどうでしょうか?」


 アールスロウが落ち着いた様子で声を出した。


「まず横陣を左右正面三つに分ける。その分けた三つの部隊を三方で突撃させる。これなら突撃速度が速く、加えて砲撃を分散させることができます。そして砲弾の壁を突破後、三つの隊を集合させ、元の横陣として敵勢にぶつけます。これなら、突撃速度を落とさず、敵勢にも力負けしません」


 会議室は静寂に包まれた。皆が何かを考え込んでいる様子だ。

 一人の司令官が口を開く。


「少々奇策の匂いがするが……」


 するとローズマンがパッと口を開く。


「そうですか? 機動性も戦闘力も確保できる、この状況ならいい手だと思いますがね」


 アールスロウが再び話し始める。


「この陣形の最大の利点は、横陣で敵と戦えることにあります。これなら中央突破を狙えます。迅速な制圧が可能でしょう」


 それを聞いてロイム司令官が口を開く。


「加えて、突撃速度も申し分なし……」


 ファントムが声を出す。


「不安どころは、砲撃の際にどこかの部隊がひるんで、バラバラになること。それと集合の際に陣形が崩れることだが……」


 ローズマンが笑みを見せながら口を開く。


「フルスロックやウチの兵もいるんです。そこは心配に及びませんよ」


 ランクストンが会議室を見回したあと、小さくうなずく。


「よし、決まりだな。ではこの作戦を軸にして、細かな動きを決めていこう」






 数時間後のビルセイルド基地の広場。

 灰色の石畳の広い空間を大勢の兵士が埋め尽くしていた。

 その兵士たちは、次々と大型馬車に乗り込み、ウォールズ・ヘルズベイに向けて出発する。

 その中にクロコとサキの姿もあった。

 クロコは外へ向かう馬車の集団を見ながら口を開く。


「いよいよだな……」


「はい」


 サキははっきりとした口調で返事をした、もう覚悟は決まったようだった。

 二人は馬車に乗り込んだ。






 ウォールズ・ヘルズベイの広場には多くの国軍兵が整列していた。その一角にロイスバード少将が立っていた。腰には剣をつけている。

 そんなロイスバード少将に大柄の部下が近づいてくる。


「少将、解放軍が姿を見せたようです」


「そうか……」


「いよいよケイルズヘルの恨みを晴らす時が来ましたな」


 ロイスバードはニヤリと笑う。


「ああ…………しかし、やつらはこの広場までたどり着くことができるかな?」







 薄茶色の広大な大地、そこに解放軍の巨大な軍勢が展開していた。解放軍の軍勢が三か所に離れた形で並んでいる。

 三つの太い横陣。その中央の陣の前衛に、クロコはいた。隣に立つサキに話しかける。


「少し変わった陣形だな……」


「はい、基地を出る前にアールスロウさんに聞いたんですが、約80000の軍勢を三ヶ所に分けてるそうです。後方には20000の軍勢が控えていて、ボクらの全兵力は約100000だそうです」


「国軍側も同じぐらいなのか?」


「いえ、情報によると国軍側の全兵力は70000ほどだそうです」


「じゃあ、数としてはこっちが有利ってことか」


「はい、そうなんですが……ウォールズ・ヘルズベイの守りを頭に入れると倍以上と想定した方がいいと言ってました」


「じゃあ、こっちが不利だって?」


「いかに早く崩せるかがカギみたいですね。ウォールズ・ヘルズベイをいかに機能させないようにするかってことみたいです」


「なるほどな……まぁ、よくわかんないが」


 クロコは正面に広がる景色を眺めた。遠くの大地には、巨大な建築物が山脈のようにそびえ立っていた。大地には高い城壁が広くそびえており、その上には太い柱に支えられた横長の建築物が顔を出している。さらにその上に、基地本体と思える縦長の複雑な建築物が天に向かって伸びていた。少し曇った空に浮かぶその巨大な影は、まるで魔城のようにも見えた。

 城壁の前には国軍の青い横長の布陣が展開されていた。規模は40000ほどだ。



 少し強めの風が吹き、荒野の砂を舞い上げる。


 横に並んだ解放軍の三つの軍勢と、国軍の横陣は、数kmの距離を開け、少しのあいだ、互いににらみあっていた。



 パンッ!


 信号銃が響くと共に、解放軍の三つの軍勢が動き出す。

 ウォールズ・ヘルズベイから見て、北西、西、南西の三方向から攻めて来る。

 三つの軍勢は勢いよく突進する。

 先頭の剣兵たちが勢いよく走り、後ろから砲兵たちが大砲を走らせながら必死で追いかける。

 

 初めは、左右二つの軍勢が少し前を走っていたが、徐々にクロコたちのいる中央の軍勢が追いついていき、ほぼ横並びにウォールズ・ヘルズベイ基地へと迫っていく、その時だった。

 クロコは見た、城壁の上空に浮かぶ横長の建築物から、無数の煙が飛び出してくるのを。その直後、目の前に無数の爆炎が立ち塞がった。


「く……っ」


 クロコは思わず険しい表情をする。雨のような砲弾が目の前の大地に降り注ぎ、巨大な爆炎の壁を造っていた。


「なんて量の砲弾だ……」


 辺りの兵士たちがそのあまりに激しい砲撃にわずかにひるんだ時だった。


「ひるむな!!」


 先頭を走るアールスロウが、大声を張り上げた。


「突破する! 皆、俺に続くんだ」


 アールスロウは全く走る速度を緩めず、爆風の嵐に向かって突進する。


「く……負けるか……」


 クロコもすぐにあとへ続く。


「ボ、ボクだって……」


 サキがさらにあとへ続く。


「お……オレたちも行くぞー!!」


 兵士たちも次々と後へ続いていく。

 巨大な爆炎が、次々と兵士たちを襲う中、解放軍全体は足を止めることなく、一気に前進する。三つの軍勢は被害を受けながらも、空中砲台からの砲撃の壁を突破した。

 中央を走る軍勢、その先頭でアールスロウは、今度は城門と連結して建つ砦に目をやる。


(次は……砦からの砲撃か)


 左右の軍勢は、少し中央に寄りながら走っている。それによって、三つの軍勢は中央に集まる形で、徐々にウォールズ・ヘルズベイへと迫っていく。

 三つの軍勢がさらにウォールズ・ヘルズベイに近づいていくが、それにも関わらず砦からの砲撃は行われない。

 その様子にアールスロウは戸惑う。


(なぜだ……? なぜ砦からの砲撃がこない)


 間もなくして、基地本体からの砲撃が放たれ始める。空中砲台の支柱の間をくぐり抜けて放たれる砲撃は、再び爆炎の壁を形成する。しかし、先ほどよりも爆炎の密度は薄い。

 解放軍兵はひるむことなく、その爆炎に向かって突進した。

 二つ目の砲弾の壁をくぐり抜けると、いよいよ国軍勢が近くに見えてきた。

 三方向から進んだ解放軍の三つの軍勢の距離は、もうほとんどなくなっていた。ゆっくりと重なり合う形で集合していき、長い横陣が形成されていく。

 横陣へと変化した解放軍の軍勢は、そのまま国軍の横陣へと距離を詰めていく。それと共に、国軍から砲撃が放たれる。

 解放軍陣の所々で爆炎が上がっていく。

 中央の先頭を走るアールスロウはその様子にまた少し戸惑う。


(砲撃が思ったより薄い。通常の砲撃体勢程度だ。大砲部隊を集結させていないのか? 何かを狙っているのか? しかしこの基地を背に小細工など必要ないはず、ただ攻めが雑なだけなのか……?)


 うねりを上げて動く解放軍の横陣は、城門を守る形で展開されている国軍の横陣にぶつかる。

 砲撃の被害を受けたとはいえ、解放軍の軍勢の規模は国軍の軍勢よりもはるかに上回っていた。


「いくぞ!」


 アールスロウの掛け声と共に、剣兵たちが一気に斬り込む。

 先頭のアールスロウは長剣を引き抜き、洗練された剣技で次々と国軍兵たちを斬り伏せていく。


「よし……オレも行くか」


 後ろを走るクロコも黒剣を引き抜いた。黒剣の刃が鋭い光を放つ。


「行くぞ、スピーゲルグレイ」


 クロコは風のように大地を駆け抜けた。突進し、クロコは一気に斬り込んだ。


 ヒュヒュヒュヒュヒュヒュンッ!!


 クロコから放たれる無数の斬撃は、まるで壁のように国軍兵たちの前に立ち塞がった。国軍兵たちはその壁にぶつかると共に一瞬で斬り伏せられていく。そのあまりの速さに国軍兵たちだけでなく、クロコ本人も驚いた。


(軽い……体が風のように動く)


 クロコの体は、戦場を縦横無尽に駆け巡った。国軍兵たちの体はまるで嵐にでも遭ったかのように次々と倒れていく。

 アールスロウよりもはるかに速く、クロコは国軍兵たちを斬り伏せていく。

 その光景を後方のサキが呆然と眺める。


「クロコさん……凄すぎる……」


 先頭を走るアールスロウもその光景を少しのあいだ眺めていた。

 やがてアールスロウは走る速度を落とし、先頭をクロコに譲った。

 アールスロウはクロコの右側面につき、クロコをフォローする形で敵兵を斬り伏せる。

 サキもクロコの左側面につきフォローする。


 解放軍の軍勢はクロコを中心にして、国軍の厚い陣をどんどん切り崩していく。

 国軍の陣は中央から徐々に崩れていき、真っ二つに分断されていった。


 ウォールズ・ヘルズベイの巨大な城門が目の前に迫ってくる。

 それをアールスロウは見つめる。


(ここまでは作戦通り…………順調だ)


 解放軍の軍勢は、ついに国軍勢を中央から完全に分断した。解放軍はそのまま、一気にウォールズ・ヘルズベイの広場を目指し、城門に向かって突き進む。

 アールスロウもそれに向けて走るが……


(なぜだろう……順調過ぎる。そんな気がする)


 アールスロウは走る速度を徐々に落としていった。


(先ほどの突撃の時……なぜ砦からの砲撃がなかった……?)


 そのとき、アールスロウは気付いた、クロコが足を止めていた。それを見て、アールスロウも足を止める。二人を置いて、解放軍はどんどん突き進む。

 アールスロウはクロコに駆け寄る。


「どうした、クロコ」


 クロコは上を向いていた。


「アレ……」


 クロコは上を指さす。アールスロウもその方向を見た。

 城壁の上空に浮かぶ空中砲台、そこに無数のロープが吊り下げられていた。異常に長いロープだった、おそらく広場の床面まで続いている。

 アールスロウは眉を寄せる。


(地上に下りるためのロープ? いや、変だ、空中砲台は、支柱に設置された階段を使って昇り降りするはずだ。それをわざわざロープで……?)


「アールスロウ……」


 クロコが上を見ながら口を開く。


「あの柱で支えられてる建物。もう、人の気配がないぞ」


「…………!」


 アールスロウは空中砲台に目を移した。確かに人影は何も見えない。大砲だけが置き去りになっている。アールスロウは素早く周りを見た。そして気づいた。

 先ほどまで戦っていた国軍。その左右に割かれた軍勢が、そのまま左右へと動き、逃げるように散っていた。アールスロウの心臓が嫌に高まる。


「嫌な予感がする…………この状況、前にどこかで……」


 アールスロウは緊迫した声を出した。クロコがうなずく。


「嫌な予感か……オレも同じだ」


 クロコは前を向く。


「サキ!! 止まれ!!」


 前方を走るサキが足を止めた。


「え……?」


 サキが不思議そうな様子で振り向いたその時だった。


 ドオオオオオオオオンッ!!!


 巨大な爆炎が、空中砲台を支える巨大な支柱を包んだ。耳を弾くような爆発音と共に、支柱がゆっくりと砕け散っていく。


「これは……仕掛け爆弾!?」


 アールスロウはその様子に目を凝らした。


「これは……前方の支柱だけを破壊している。ということは……」


 前方の支柱を砕かれた空中砲台は、バランスを失い、ゆっくりと傾いていく、解放軍の方向へ向かって。


「逃げろー!!」


 アールスロウは周りの兵士たちに呼びかけた。


「ウ……ウソだろ!」


 クロコはウォールズ・ヘルズベイに背を向けて一気に駆ける。サキも駆けだす。アールスロウも駆ける。

 巨大な建築物が天から解放軍に向けて降ってきた。まるで天地がひっくり返り、地上が落ちてきたかのような光景だった。砕かれた柱の一部は城壁と砦に降り注ぎ、上部を粉々に破壊していく。城門から広場へ侵入しようとしていた解放軍兵たちに、巨大な破片が降り注ぐ。逃げ遅れた多くの解放軍兵たちが、巨大な破片に押し潰されていく。


 降り注ぐ巨大な破片から、解放軍兵たちは死に物狂いで逃げる。

 その中で、クロコとアールスロウは何とか逃げ延びていた。遅れて走っていたサキのすぐ後ろで、巨大な破片が落下していく。サキもギリギリで逃げ延びた。

 最後に巨大な建築物そのものが地面に叩きつけられ、大地を狂ったように揺らした。逃げ遅れた解放軍兵たちの姿は、その中へと消えていった。



 大地に落ちた空中砲台は、その衝撃で粉々に砕け散り、一万を超える解放軍兵たちを飲み込み、その動きを止めた。



 クロコたちの目の前にはガレキの山が広がっていた。

 それを見てクロコは呆然と立ち尽くす。

 その隣でアールスロウも呆然と立ち尽くしていた。


「基地の損害も全くいとわない……なんて作戦だ」


 アールスロウの表情が徐々に険しくなっていく。


「この……絶望にも似た悪寒…………俺は知っている……過去に、確かに経験している。間違いない。やつだ。『七本柱』唯一の軍師……」


 アールスロウの表情にわずかに恐怖が走る。


「『戦場の魔術師』……!」


 左右へと散った国軍の軍勢、その一方から一人の将軍が馬にまたがり、動きを止めた解放軍の様子を眺めていた。

 ライトシュタインはゆっくりと口を開く。


「全て……作戦通りだ」








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