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4-24 これでいいのか


 グラウド東部に位置する首都ゴウドルークス。そこの西には大きな広場があった。純白の石畳で舗装された円形の巨大広場だ。

 そこには数万の国軍兵が整列していた。


 広場の前方に造られている純白の台座にはオルズバウロ元帥が立っていた。そしてその台座にスコア・フィードウッドが上がってくる。眼鏡は外されている。

 スコアはオルズバウロ元帥の隣まで歩くと整列する兵士達の方を向く。

 するとさらに台座に上がってくる者がいる。

 その男は長いひげと長い髪を伸ばし、純白のローブに身を包み、頭には立派な王冠をかぶっている。グラウド帝国の皇帝ブルテンだ。

 左右にお付きを従えて、ブルテン皇帝はゆっくりと台座へと上がって来る。台座の中央まで進み出ると、それに合わせてスコアもブルテンの前まで進み、ブルテンを正面に、ひざますいた。

 スコアはブルテン皇帝の姿をまじかで見つめる。


(この人がグラウドの皇帝……確かに威厳がある。けど……)


 スコアはブルテンの姿を見ながら感じた。


(なぜだろう。威厳のある外側と違い、内側から漂う雰囲気はどこか淡く薄らいでいる……)


 ブルテン皇帝はお付きの者から一本の剣を受け取った。

 ブルテン皇帝はゆっくりと口を開く。


「このたびのスコア・フィードウッドの戦場での功績を評し、その褒美として、我より、聖剣ブリティンガルドを授ける」


 スコアはひざますいたまま、剣を受け取った。

 スコアは立ち上がり、皇帝の隣で再び兵士達の方へ向き直った。そして剣を引き抜いて、掲げた。その剣の刀身は白い光沢を放ち、鋭く光った。

 兵士達が歓声を上げる。


 歓声が収まると、ブルテン皇帝は歩き出し、台座からゆっくりと下りていった。


 それを確認すると、今度はオルズバウロ元帥がスコアの隣に立った。オルズバウロ元帥は兵士達に向け口を開く。


「この度のセウスノールの戦いで、我らは確かに敗北した。しかし、それと同時に我らは、国軍を長く苦しめていた壁であるグレイ・ガルディアをついに仕留めることができた。このスコア・フィードウッドの働きによって!」


 オルズバウロ元帥は拳を力強く握った。


「この先、セウスノール軍は勢いを増すだろう。だが、恐れることはない。やつらは英雄を失い、そして我らは新たな英雄を得た。新たな『瞬神の騎士』スコア・フィードウッドを!!」


 その声と共に、広場は巨大な歓声に包まれたs。


「スコア・フィードウッド!」「スコア・フィードウッド!」「スコア・フィードウッド!」

「スコア・フィードウッド!」「スコア・フィードウッド!」「スコア・フィードウッド!」


 歓声がゆっくりと静まると共に、オルズバウロ元帥がまた声を上げた。


「諸君……」


 オルズバウロ元帥は声を張り上げた。


「間もなくこの戦争は終わるだろう。我らグラウド国軍の勝利という形で!!」


「おおおぉぉ――――――ッ!!」


 兵士達の歓声は長く広場を満たした。



 兵士達の歓声が小さく届く基地の廊下、そこをロストブルーが歩いていた。隣には若い軍人が歩く。

 その軍人は、年齢二十代半ば、白い髪で、上に伸びた眉、鋭い目、どこかまじめそうな印象を受ける。

 ロストブルーの護衛ミッシュ・ノルフォークだ。


「すごい熱気ですね」


 ミッシュは遠くから伝わる熱気に少し驚いている。


「ああ、新たな英雄の誕生だからね」


 ロストブルーは静かに言った。

 ミッシュがあきれた様子で口を開く。


「大げさですね、あんなポッと出の英雄に。いくらグレイ・ガルディアを仕留めたからといって……」


 するとロストブルーは足を止めた。


「ロストブルー将軍……?」


「私はね……『瞬神の騎士』と呼ばれるようになっても、その称号に特に誇りを感じたことも、愛着を覚えたこともなかった」


 ロストブルーは静かな口調だった。


「一年前、スコア・フィードウッドが『瞬神の騎士の再来』ともてはやされていても、私は何も感じなかっし、何の感慨も湧かなかった。けれどね……」


 ロストブルーは少しだけ、もの悲しい表情をしていた。


「不思議だな。グレイ・ガルディアが死んだという話を聞いた時、私は初めて『瞬神の騎士』の称号が、『奪われた』のだと感じたよ」


 その言葉を聞いてミッシュは一瞬口元をきつくした。

 ミッシュはゆっくりと口を開く。


「ロストブルー将軍…………これから、この戦争はどこへ向かうのでしょうか?」


 ロストブルーは再び歩き始めた。


「終わりへと向かうだろう、大きなうねりとなって」




 基地の広間の壁にクロコは一人寄り掛かって座っていた。うつむきながら床を見つめている。

 クロコはさびしそうにずっと広間の床を見つめていた。


 小さな風が広間へと吹き込んできた、その時だった。

 クロコの前にアールスロウが現れた。


「ここにいたのか、クロコ」


「………………」


 クロコは床を見つめたままだった。


「ソラについて、フロウに聞いた」


「………………」


「基地の者にも話を聞いた、ソラからは特にあやしい情報は得られなかった」


「………………」


「ファントムが得た情報では、ソラはライトシュタイン家から三年前に失踪しているとのことだった。その後の三年間については、父であるザベル・ライトシュタインも知らないとのことだ」


「………………」


「すまなかったな、クロコ」


「いいよ…………もう」


 クロコは床を見つめていた。

 アールスロウは少しのあいだ黙ったあと、口を開いた。


「君はこれからどうする?」


「どうも……」


「ただここに座り込んでいるのか?」


「……なにが言いたいんだ?」


「君はこれでいいのかと言いたいんだ」


「これでいい……わけないさ。でも……もう、どうすることもできない」


 クロコのその言葉の直後、アールスロウは一枚の紙をクロコに差し出す。紙はきれいに折りたたまれていた。

 クロコは小さく顔を上げる。


「……なんだよ、コレ」


「ライトシュタイン家まで、安全に行くルートが書いてある」


 クロコは驚いた。アールスロウは静かに話しを続ける。


「ソラがライトシュタイン家に戻っているという確証はどこにもない。だか可能性はゼロではない」


 クロコはアールスロウを見た。


「アールスロウ……」


「このままでいい訳ないのなら、取り戻しに行ってこい。クロコ」


 クロコは紙を受け取った。そして立ち上がり、アールスロウを強い目で見つめた。


「ありがとうアールスロウ」


「幸運を祈る」


 クロコは駆け出した。







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