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4-14 精鋭同士の戦い




 セウスノールの街の東に位置する荒野。そこでは巨大な軍勢同士がぶつかり合っていた。

 セウスノールの城壁の前に横に広がる解放軍の40000の軍勢。それに同じ幅まで横に広がる国軍の10000の軍勢がぶつかっている。


「第二陣進めー!!」


 後方に備えていた二つ目の国軍の10000の横陣が、声を上げて戦場へと進む。



 解放軍中央ではスロディーンが国軍兵を斬り伏せていた。敵陣のなかをゆっくりと歩み進む。途中、国軍兵が斬りかかるたび、その国軍兵は宙を舞う。

 スロディーンは止まることなく敵陣を進み続け、徐々に国軍陣形を切り裂いていく。



 解放軍右翼、その一角でフロウとロウレイブが向かい合っていた。

 ロウレイブは辺りを見渡す。


「どこにいる……クロコ・ブレイリバー」


 それを前にフロウが口を開く。


「僕を前にしてずいぶんな余裕だね」


 その言葉を聞き、ロウレイブはゆっくりとフロウの方向を向く。その直後、ロウレイブは突進し、長槍で斬りかかる。空気を切り裂く高速の斬撃。


 ヒュゥンッ!


 フロウはとっさに反応し、かわした。


「ほう……これもかわすか」


 フロウは剣を構え、突進しようとするが、ロウレイブの突きがそれを阻む。


「く……!」


 ロウレイブの攻撃がフロウを襲う。

 突きと斬撃を組み合わせた攻撃に加え、その攻撃の軌道は複雑に変化していく。

 その変幻自在の攻撃がフロウを絶え間なく襲い続けた。


「う……!」


 ロウレイブの攻撃の壁を前にフロウは近づくことができない。


(く……突きと斬撃のコンビネーションに、切り返しに、軌道変化、軽いフットワーク。加えて僕の三倍以上の間合い。これじゃあ防ぐだけで攻撃に移れない)


 どんどん攻めるロウレイブに対し、フロウは徐々に後ずさっていく。

 途中、ロウレイブの攻撃の数発がフロウをかすった。わずかに血が飛ぶ。


(くっ……これじゃあ、なぶり殺しだ。踏み込むしかない……!)


 フロウは一歩踏みこんだ。その直後ロウレイブの大振りの斬撃がフロウを襲う。


 ギィィィンッ!!


 何とか受け止めるフロウ。しかし強力な威力に体勢が崩れた。


 ヒュゥンッ!


 ロウレイブの斬撃がフロウをとらえた。フロウの体が切り裂かれ、宙に血が舞った。


「ぐ……!」


 思わず膝をつくフロウ。


「他愛もない……終わりだ!!」


 ロウレイブが長槍を勢いよく振り下ろす。


 ヒュゥンッ!!



 ギィンッ!


 ロウレイブの槍は止められた。

 フロウとロウレイブのあいだにはクロコが立っていた。

 ロウレイブはその姿を見る。


「黒い髪の女剣士……」


 ロウレイブの目の色が変わる。


「見つけたぞ! クロコ・ブレイリバー!! 弟の仇。我が誇りに懸けて、きさまは私が倒す!」


「ああ……!?」




 解放軍左翼、その一角でアールスロウとファイナス少将は向かい合っていた。

 アールスロウはファイナスが持つ不気味な形の槍を見る。六本の鍵爪のついた短い槍だ。


「……この奇妙な武器。あなたが『剣封』ジン・ファイナスか」


「ああ、その通り。君は『千牙の狼』ファイフ・アールスロウだね」


「そうだ」


「久しぶりの戦場、何とも血が騒ぐ……」


 ファイナスは槍を構える。


「この奇形槍ギサイアと我が戦術。君に破れるかな?」


 その言葉を放った直後、ファイナスは突進する。

 それに合わせ、アールスロウは斬撃を放った。


 ヒュゥンッ!


 その斬撃を素早く鍵爪にひっかけるファイナス。

 ファイナスは笑みを浮かべ、斬撃をそらし、投げ捨てるようにアールスロウの長剣を弾き飛ばした。大きく逸れるアールスロウの剣。


「なに……!」


 それと共にファイナスは素早くアールスロウの懐に飛び込む。


 ヒュンッ!


 アールスロウの肩がわずかに切り裂かれた。


「くっ!」


 すぐに間合いを取ろうとするアールスロウ。それに対し素早く追撃するファイナス。


 ヒュンヒュンヒュンッ!!


 アールスロウはファイナスの斬撃の一つを受け止めようとした、その瞬間、


 ガッ!


 ファイナスの鍵爪が再びアールスロウの剣をひっかける。再び剣は大きく逸れされる。懐に飛び込むファイナス。


 ヒュンッ!


 アールスロウの左腕がわずかに切り裂かれる。


「くっ!」


 ファイナスはどんどん前に出て、激しい斬撃をアールスロウに放ち続ける。

 それをひたすら避け続けるアールスロウ。


(なるほど、これが噂の『剣封』か……斬撃を放てば、逸らされ、防御さえも逸らされ、強制的に隙を作らされる)


 ファイナスの斬撃の一つがアールスロウをかすった。しかしアールスロウは冷静にファイナスの攻撃に目を凝らす。ファイナスの斬撃の一つをかわしたその瞬間、


(今だ!)


 ヒュゥンッ!


 アールスロウの素早い反撃。しかしファイナスの槍がすぐに返ってきた。


 ガッ!


 長剣は再び槍につかまり、弾き飛ばされる。


 ヒュンッ!


 アールスロウの脇腹が切り裂かれた。血が噴き出る。


「ぐ……ッ!」


 脇腹を押さえながら距離をとるアールスロウ。

 それを見ながら不敵に笑うファイナス。


「軍事貴族である我がファイナス家に、200年ものあいだ代々伝わる剣士封じの技、その極み。そうそう破れるものではない。ノーマルな剣士では絶対に私には勝てない」


「く……!」


 アールスロウの脇腹から血が流れる。



 解放軍右翼、そこではクロコとロウレイブが向かい合っていた。


「覚悟しろ、クロコ・ブレイリバー」


 ロウレイブは長槍を構えた。

 クロコもそれに合わせ大剣を構える。


 ヒュゥンッ!!


 ロウレイブの強力な斬撃。それに合わせクロコも斬撃を放つ。


 ギィンッ!


 二つの斬撃はぶつかり合い、共にはじけた。

 素早く次の攻撃に移るロウレイブ。突きと斬撃の波状攻撃がクロコを襲う。それに対抗し、クロコも大剣を振るう。

 二人の間をいくつもの攻撃がはじけ合う。


「やるな! クロコ・ブレイリバー」


「チッ!」


 ロウレイブと撃ち合う中、クロコはウォーズレイ防衛戦の際に戦った槍使いのことを思い出す。


(……!! そうか、こいつは……)


 ヒュゥンッ!


 ロウレイブの斬撃の一つがクロコの体をわすかに切り裂く。


「く……!」


「まだまだぁ!」


 ロウレイブの槍は軌道を二度変えたあと斬撃となってクロコを襲った。


 ヒュゥンッ!


 肩をわずかに切り裂かれるクロコ。


「クソッ!」


 クロコは素早く距離をとる。その直後、


「クロコさん!」


 サキが駆けつける。それに気づき、にらみつけるロウレイブ。


 ヒュゥンッ!


 ロウレイブの斬撃がサキを襲う。素早く後ろに飛ぶサキ。しかし避けきれず、わずかに体が切り裂かれた。


「う……!」


「雑魚が……私の戦いの邪魔をするな」


 攻撃を受けたサキを見て、クロコはロウレイブをにらみつけた。


「てめえ!」


 突進するクロコ。それに合わせて斬撃を放つロウレイブ。


 キィン


 クロコはロウレイブの斬撃を受け流した。


「なに……」


 素早く懐に入るクロコ。


 ヒュンッ!


 紙一重でかわすロウレイブ。しかしわずかに生じた隙にサキが飛び込んできた。


 ヒュンッ!


 ロウレイブの軍服がわずかに裂ける。


「く……!」


 クロコもさらに斬撃を放つ。


 ヒュンヒュンヒュンヒュンッッ!!


 クロコの激しい攻撃。それにロウレイブが応戦しようとする。しかしそのタイミングに合わせ、サキが斬撃を放つ。


「チ……ッ!」


(クロコ・ブレイリバー、思ったより手強い。加えてこの子供の剣士、嫌なタイミングで攻撃してくる)


 クロコとサキ、二人の剣がロウレイブを囲むように襲う。少しずつ押されるロウレイブ。表情が険しくなってくる。

 さらにフロウが立ち上がり、攻撃に参加してきた。


(この三人を相手にするのはさすがにきつい……ここはいったん退くか)


 ロウレイブは大振りの斬撃を数発放つと共に、後ろに飛んで距離を取り、そのまま国軍兵の群れの中へと消えていった。


 ロウレイブの姿が消えたあと、クロコは小さくため息をついた。



 大勢の兵士達の激しい戦いが荒野で繰り広げられる中、東の石門から、巨大な大砲が顔を出した。

 天にも伸びるような巨大な砲身と、無数の車輪を付けた巨大な砲台。

 解放軍の巨大大砲リック・ノールだ。

 石門から荒野に出た八台のリック・ノールは、左右に散ると、解放軍の右翼と左翼の後方に四台ずつ整列した。


「リック・ノール。撃て――――!!!」


 八台のリック・ノールはごう音を上げ、巨大な砲撃を国軍両翼に向けて放った。

 国軍の両翼から大きな火柱が上がる。

 国軍左翼、アールスロウとファイナスの戦うすぐ後方で爆発が起きた。


「くっ……なんだ!」


 驚くファイナス。その隙を突いて、いくつもの傷を負っていたアールスロウは素早く後方へ逃げた。


「くっ……逃げられたか」




 国軍陣後方、レイズボーンは双眼鏡で戦況を見ていた。


「ふむ、あれが噂のリック・ノールですか。まあ、あの程度の火力ならダメージは少ないでしょう。中央の一角もわずかに切り崩されていますね……しかし」


 レイズボーンはニヤリと笑う。


「大した問題ではない」



 激しい戦闘が続く中、戦場には次々と国軍の横陣が加わっていく。

 国軍の数え切れないほどの砲撃が放たれる中、徐々に解放軍の陣形が崩されていく。


 中央で戦うスロディーンは初めて足を止めた。


「……どうやらここまでか」



 パンパンパンッ!!


「後退だー!! 後退しろー!!」


 号令と共に、解放軍は徐々に後退し、応戦しつつ石門から街中へと下がる。

 それを追って国軍も街中へと入ってくる。


 戦いは市街地戦へと突入する。







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