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4-12 集結する精鋭




 柔らかな太陽がセウスノール基地を照らす。

 セウスノール基地の広間、クロコは一人でそこを歩いていた。

 新しく来た兵士達で込み合っている広間、クロコはその中でサキを見つけた。


「サキ!」


 クロコが呼びかけるとサキは小走りで近づく。


「クロコさん!」


 サキはクロコの前に立った。


「ケガの具合はどうですか?」


「ああ、もうほとんど大丈夫だ」


 サキはクロコのケガの具合を見るふりをして、クロコの様子を見ていた。前より表情が少し柔らかくなっているのを見てホッとする。


「良かったです。大丈夫そうで」


「おまえ一人か?」


「いえ、あそこにフロウさんが」


 サキが指さす方向にフロウが座っていた。剣を磨いている。


 フロウとも合流し、三人は広間を歩きながら、周りを見渡す。


「アールスロウ達はまだ到着してないのか?」


「うん、まだみたい」


 フロウの言葉を聞いて、クロコは少し視線を落とす。


「そっか…………戦力は集まってんのか?」


「うん、ガルディアさんの話だと今の時点の兵力は110000だって」


「すげーな。よく集めたモンだ」


「実力者も多く集まっているみたいですよ。例えば、ほら、あそこの大きな人」


 サキが指さした方向には、大柄の剣士が座り込んでいる。

 その剣士は年齢二十代半ば、馬のタテガミのような長い白髪をしており、獣のような鋭い目をしている。かなり威圧的な風貌だが、どこか物静かな印象を受ける。


「中央の前衛基地ビルセイルドのエース。『進撃の白竜』ロザン・スロディーンです」


「へぇ、白竜ねぇ、おまえが好きそうだな」


「ボ、ボクが好きなのは実物です!」


「実物なんかいねーよ」


 すると向かいから一人の女が歩いてくる。

 クロコはその女に見覚えがあった。


「ミリア……!」


 クロコはその名を呼ぶと女はクロコに気づく。

 女は年齢十八、九、きれいな体つきで、黄色いサラッとした長い髪、きれいな顔立ち、冷たい目に緑色の瞳。目だけでなく全体的に冷たい雰囲気をまとっている。

 ケイルズヘル基地のエース。ミリア・アルドレットだ。


「クロコ・ブレイリバーか……」


 ミリアは静かな口調で名を言った。


「おまえも来てたのか。ミリア」


「ああ……フルスロックでは大変だったな」


「……あ、ああ」


「隣にいるのはおまえの仲間か?」


「ああ」


 クロコがそう返事をして、二人の顔を見る。すると、サキの顔が異常に真っ赤に上気していた。

 サキは目を回すように口を開く。


「ボ、ボ、ボボクは、サ、サササササササキ・フフフフランティスです」


 サキはアワアワと言った。


「こいつは異国人か?」


 ミリアは表情を変えずに言った。


「いや、グラウド人だ。多分……」


 フロウが一歩前に出て、手を差し出す。


「僕はフロウ・ストルーク。はじめまして『戦乱の鷹』ミリア・アルドレット」


「ああ」


 ミリアはフロウの握手に応じる

 サキが何とか息を整えて口を開く。


「ボクは……サ、サキ・フランティスです! よろしく!」


「ササキ・フランティスか。変わった名だな」


 ミリアは無表情で言った。


「じゃあな」


 ミリアは三人をサッと横切った。サキは去っていくミリアの後ろ姿をボーッと見つめていた。


「おい、行くぞサキ」


「あ……! はい」


 三人は廊下を歩く。


「驚いたな、『戦乱の鷹』があんなに美人だったなんてね」


 フロウのその言葉にサキが敏感に反応する。


「でも、僕の好みじゃないな。少し若いや」


 その言葉を聞いてホッとするサキ。すると向かいから二人の軍人が歩いてくる。

 クロコはその内の一人に見覚えがあった。

 軍人の一人は、年齢四十代後半、黄色い髪、ピンとはねた黄色いひげ、目は細く、開いているのかいないのか分からないほどだ。

 その軍人はクロコに気づく。


「おお、君は……クロコじゃないか」


「アンタは……えーと、タ……タ……」


「ティム・ランクストンだ」


 ランクストンはあきれた顔で言った。

 フロウが驚く。


「ラ、ランクストン総司令!?」


 フロウとサキは素早く敬礼する。


「誰なのですか? この子は……」


 ランクストン総司令の隣にいる若い軍人がクロコを見ながら口を開く。

 その軍人は年齢二十代半ば、短い黒髪に大きな目、さわやかな雰囲気を持っている。


「二人目の特例だよ。名はクロコ・ブレイリバーだ」


 ランクストン総司令が、黒髪の軍人にクロコを紹介する。


「クロコ、君にも紹介しよう。彼はリーク・ディスク。本部軍の精鋭である特別戦闘部隊。その隊長だ」


 クロコとディスクは目を合わせる。


「特例になるぐらいだから、君も腕は確かなのだろう」


「当たり前だ」


 二人の様子を見ながら、ランクストンがディスクに向けて口を開く。


「クロコはあのグレイ・ガルディアのお墨付きだよ。実力は確かだろう」


 クロコはディスクを見つめる。


「アンタも……よく分からないが、とにかく……強いんだろ」


「ああ、もちろんだ」


 ディスクは自信に満ちたほほえみで答えた。

 クロコはランクストンの方を見る。


「ファントムは……来るのか?」


「いや、彼は来れない。動けないそうだ」


「そうか」


(国の偉いやつって言ってたもんな。いまゴウドルークス辺りにいるのか……?)


「では我々は行くとしよう。クロコ、君の活躍に期待するよ」


 ランクストンのその言葉と共に、二人は横切って去っていった。





 国軍に占領されたフルスロック基地。その広間をファイナス少将とレイズボーン少将は歩いていた。広間に集まっている国軍人達を見渡す。

 ファイナスがレイズボーンを見ながら口を開く。


「私たち『七本柱』のほかにも実力者が数多く呼ばれている。例えば……ほら彼だ」


 ファイナスは広間の端に座る長身の青年を指さした。

 その青年は二十代後半、黄色い髪に、細い目に高い鼻、厳格そうな雰囲気をまとい、長槍を携えている。


「軍事貴族であるロウレイブ家の若き当主アグレス・ロウレイブだ。槍技の天才だよ」


 それを聞いてレイズボーンはあごをさする。


「ほう……彼が『一角獣』ですか」


「半年前のウォーズレイの戦いで、弟のサイ・ロウレイブが戦死してから、それを倒した女剣士と戦う機会を狙っているらしい」


「女剣士? ミリア・アルドレットですか?」


「いや、無名の剣士らしいが」


「ホゥ……」


 レイズボーンは一瞬ニタッと笑った。


「ファイナス少将、同じ槍使いとして、あなたは彼をどう思いまずか?」


 それを聞いてファイナス少将はほほえむ。


「私の槍技は特殊だからな。それに比べれば彼は正統派だ。さてと……」


 ファイナス少将は再び広間全体を見渡す。


「ほかには実力者はと言うと……」


 ファイナス少将は指先を漂わせる。すると目の前に年齢十七、八の若い剣士が横切ってきた。

 少し乱れた長めの灰色の髪、鋭い目に光る赤い瞳。落ちついた顔立ちをしているが、どこか危険な雰囲気を漂わせている。

 その剣士の姿を見た途端、ファイナス少将の目の色が変わる。


「まさか、レイデル・グロウス……!?」


 レイデルは長めの灰色髪を揺らしながら、鋭くファイナスをにらみつける。


「ああ……!?」


 レイデルはファイナスとレイズボーンをじっと見る。


「なんだ、将軍様が二人揃って、オレに何か用か?」


 ファイナスが冷静に答える。


「君はレイデル・グロウスだろう? 『消剣の騎士』の……」


「そうだよ、だからなんだ」


「私はファイナス少将だ、よろしく」


 ファイナスは握手を求めるが、レイデルは無視した。


「ファイナス? 知らない名だ」


「そうか、それは少しショックだな」


「わざわざ名前を覚えてるやつなんか、両手で数えられるぐらいしかいないからな」


「しかし、グレイ・ガルディアとミリア・アルドレットは知っているのだろう?」


 それを聞いてレイデルはニヤッと笑う。


「ああ、そうだ。この戦いで、その二人と戦いてぇなあ。どちらでもいい。オレが楽しめる相手だといいな」


「君の活躍を期待するよ」


 ファイナスのその言葉に答えす、レイデルは無言で二人の前を立ち去った。


「無礼な男ですね。これだから平民は」


 レイズボーンは少し不機嫌な声を出した。ファイナスが口を開く。


「実力は確かなのだがな。ただ、積極的に働くスコア・フィードウッドと比べ、あの男はかなりの気分屋のようだ。まあ彼の言うように、どちらかとぜひ戦ってほしいよ。そうすれば彼もしっかりと働くだろうからな」


「主力はこんな所ですか」


「あと聖騎士隊も協力してくれるらしいぞ」


「聖騎士隊……あの皇族直属のゴウドルークス最強の剣士集団ですか」


「ああ、そして、『瞬神の騎士の再来』スコア・フィードウッド」


「大したメンバーですね。これでこの野蛮な農民どもの内乱に終止符が打たれることでしょう……」


 レイズボーンは上機嫌に笑みを浮かべた。







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