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2-10 国軍の狙い




 茶色の岩肌に包まれたスティアゴア台地と、巨大な屋敷が連なる純白の町並みに挟まれたケイルズヘル基地。

 ここの指令室に一人の兵が飛び込んでくる。


「敵陣、動き出しました」


 その報告を聞いて、イスにもたれかかっていたメンバーがガバッと起きる。ローズマンが兵士の方を見る。


「来やがったな……規模は?」


「およそ40000!」


「ほぼ全戦力だ……! 陣形は?」


「南の台地を回り込むルートを、一つに固まって前進してきています」


「一つに固まって……!? グラン・マルキノは!?」


「それも三台とも一つに固まっています」


 それを聞いた途端ローズマンはボサボサ頭をかきむしる。


「きたよ! きたきた! 意味のわからん手が! なにが狙いかさっぱり分からねー!!」


 ローズマンがテーブルの前に立つと他のメンバーもそれを囲む。


「相手は戦力を固めてきやがった。だがとてもじゃないが賢い攻め方じゃねー。なにか狙いがあるんだ!」


 隣でマルトフ副司令が口を開く。


「その狙いがわからなければ非常に危険では……?」


「んなこと分かってるよ!! だからおまえも頭絞って考えろ!!」


「ハ、ハッ!」


「クソ! 時間がねー……」


 基地の幹部達は真剣な表情で考え込む。

 隊長が口を開く。


「ただの総力戦が望みでは?」


「んなわけねーだろ!!」


「橋のルートに別部隊が……」


「んなモンあればすぐ分かる!!」


「途中で展開するのでは?」


「グラン・マルキノの速度じゃあ無理だ! だったら初めから展開してる!」


 幹部たちは頭を抱える。

 その後ろからクロコがヒョコッと顔を出す。

 それにマルトフ副司令がすぐに反応する。


「きみ!! まだいたのか! すぐに戦闘が始まる! 早く持ち場に戻りたまえ!!」


 追い詰められているせいか不機嫌だ。


「うるせーな。狙いが読めなきゃ危ないんだろ」


 クロコは地図を見ながら考える。


(このパターン……どっかで見たことあるような。どこで………………そうか!)


「奇襲だ」


 クロコが口を開く。それにローズマンが反応する。


「奇襲?」


「たぶんグラン・マルキノを固めてるのは、かく乱もあるんだろーが、それ以上にこっちを引きつけることにあるんだ。そして引きつけて別部隊で奇襲だ」


「だがどこから……」


 クロコは地図をジーッと見る。しばらく考えると指を動かし、ある場所をさす。


「ここだ」


 クロコは地図上のスティアゴア台地をさした。


「ここを直進すれば基地を奇襲できる」


 それを見てマルトフ副司令が反論する。


「バカな! こんな所を大部隊で移動できるものか……!」


 それを聞きローズマンが口を開く。


「いや、足の利くやつを選抜すれば不可能じゃない。ありえない場所を抜けるからこそ奇襲になるんだ」


 ローズマンは地図上のスティアゴア台地を指でなぞる。


「スティアゴア台地を回り込む際に、部隊の一部を分断させスティアゴア台地に向かわせる。そうすればこちらの偵察隊の目もごまかせる」


 それを聞いてマルトフ副指令も少し納得したようだ。


「……もしそうならば、どう対応いたしますか?」


「奇襲の可能性がある以上、基地にある程度の戦力を残さないといけない。基地に6000ほど戦力を残す。そしてミリアも待機させ基地を守らす。あとの戦力はガチで総力戦だ」


「なら奇襲部隊が南に進路変更して主力部隊を挟み込んでくる可能性もありますね」


「ああ、そうか。それじゃあ北からの奇襲も警戒しなきゃな。よしっ!! 作戦がまとまってきたぞ! クロコ、ありがとな、助かったぜ!」


「当然だろ」


 クロコは得意げだ。


「だが早く持ち場に戻れ。すぐ始まるぞ」


「チェッ、わかったよ……クレイド! 行くぞ」


「んっ!? もういいのか?」


 クレイドはまだイスにもたれかかっていた。





 敵軍司令官テント、ロイスバードは一人紅茶を飲みながらテーブルに広げられた地図を眺めていた。


(我々の作戦、別部隊による奇襲。しかし、敵がこれを読もうと読むまいと関係ない。仮に読まれたとしても、敵に奇襲を警戒させ、その陣形を拘束させることができる。敵に下手な手を打たせず総力戦に持ち込める。それさえ出来れば……)


「こちらに負けは、無い」








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