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6-11 動き出した計画




 ゴウドルークスの純白の街で解放軍と国軍の激しい戦いが繰り広げられていた。


 ゴウドルークス西地区では、解放軍が国軍を蹴散らしどんどん進行していた。

 解放軍の中心で、ミリアとフィンディの二人は勢いよく剣を振るう。

 二人ともわずかに息を乱していた。


「さすがにきついな……」


 フィンディがぼやく。体にはいくつもの傷を負っている。


「……そうだな」


 ミリアはそう言ったあと、少しなにかを考える様子を見せ、また口を開いた。


「フィンディ、あとは任せていいか? 私はいったん下がりたい」


「なんでだ……?」


「体力を温存したいんだ……まだ、肝心なやつが現れていない」







 ゴウドルークス南地区、そこの大通りではゴッドブラン中将を中心とした国軍部隊が、解放軍の攻撃を抑え、足止めしていた。


「撃て撃て撃てー!! 撃ちまくれ!!」


 ゴッドブランが前線で大声を上げる。


「剣兵どもは怯むな!! 私に斬られたくなければ前進だけしろ!!」


 国軍の部隊は猛烈な攻撃で、解放軍を完全に抑え込んでいた。砲撃が降り注ぐ大通りの一角で、サキは必死に剣兵を斬り伏せていた。


「ダメだ……ボクだけの力じゃどうにもならない」


 サキは周りを見渡す。


(フロウさんはどこに行ったんだろう。戦場で一度も姿を見てない…………誰か助けが欲しい……)


 サキは鏡の剣技を駆使し、懸命に国軍部隊と戦う。



 ゴッドブランは少し後方で大声を張り上げている。


「銃兵なにをしている!! もっと引きつけろ!!」


「ゴッドブラン中将……」


 国軍人の一人がゴッドブランに話しかけてきた。


「む……なんだ?」


「それが……」




 西地区では、解放軍が大通りを守る国軍を完全に突破した。


「よし! これより進路を変更! 南地区へと移動し、国軍を挟み撃つぞ!!」


 解放軍の指揮官の号令により、西地区を進行していた解放軍は南地区へ続く大通りへと進路変更した。




 解放軍、国軍、互いの戦力が、徐々に南地区へと集まっていく。




 グラウド国軍本部基地、街全体を見下ろす司令部の部屋から、オルズバウロ元帥は戦場の様子を見て戸惑っていた。


「どういうことだ……? なぜ西地区の解放軍はあんなにあっさり前進しているんだ」


 背後に立つカルス中将が小さく声を出す。


「簡単ですよ、それは後ろ備えの国軍部隊が動いていないからです」


「なに……!?」


 オルズバウロが振り返った直後だった。カルス中将は小銃を取り出し、銃口をオルズバウロへ向けた。

 オルズバウロは一気に緊迫した。


「何のつもりだ……!!」


「すぐに分かります」


 部屋にいた幹部数人が、カルス中将側へと寄る。そのすぐあとに、司令部へと剣を携えた国軍兵たちが次々と入ってくる。剣を抜き、オルズバウロ側に立っている幹部たちに剣を向ける。


「まさか……クーデターか!?」


 オルズバウロの言葉にカルスは笑みを浮かべる。


「ご安心を。殺すつもりはありません。ただあなたは見ていればいいのです。この特等席で、これから始まる建国以来最大のショーを……」






 総務省局の建物内部、その通路を、多くの国軍兵たちが慌ただしく走っていた。


「お、抑えるんだー!!」


 国軍兵たちは剣を抜いて、一斉に斬りかかるが……


 ヒュンヒュンヒュンッ!!


 ヒュヒュヒュヒュンッ!!


 クロコとスコアの前に一瞬で斬り伏せられる。

 剣兵をなぎ払いながら二人は通路を進む。

 クロコは走りながら口を開く。


「ここにとんでもない爆弾の発火場所があるんだよな!?」


「そうだ……爆弾の構造上、多分地下室だ」


 クロコとスコアは剣を振るいながらどんどん通路を進んでいく。行く手を阻む国軍兵たちはまるで相手にならない。

 クロコとスコアは通路を疾走する。

 通路が途切れ、二人は広間に出た。


「そこまでだ」


 大きな空間の奥には一人の軍人が立っていた。ホーククリフ大将だ。

 二人は足を止める。


「国軍の将軍か……」


 クロコは軍服を見ながら言った。

 ホーククリフは鋭い目で二人の様子を見つめる。


「スコア・フィードウッドか。それに隣に立っているのはクロコ・ブレイリバーだな……一体何がどうなって二人が手を組んで、我々を阻止しにここまで来たのか見当もつかんが、まあいいだろう」


「時間がない。ここを通してもらいます」


 スコアとクロコは同時に前に歩み進む。


「それは無理だ」


 ホーククリフは軽く手を上げた。するとホーククリフの背後、奥の通路からゾロゾロと剣士が入ってくる。赤い制服に白いマントを羽織っている。聖騎士だ。五十人ほどいる。

 聖騎士たちはクロコとスコアを四方八方に取り囲んだ。

 ホーククリフは笑みを浮かべる。


「知っているだろう? 聖騎士隊、ゴウドルークス最強の剣士隊だ。幼いころからの英才教育に、さらに特殊訓練を経た剣士の中から、さらに選ばれた剣技のエリート。しかも彼らは第一聖騎士隊。精鋭中の精鋭だよ。一人一人が大型基地のエースにも匹敵する力を持っている」


 クロコとスコアを取り囲んでいる五十人の聖騎士たちが一斉に剣を構える。

 ホーククリフはその様子を楽しそうに眺める。


「君たちの力はよく知っている。しかし多勢に無勢。ここまでだよ」


 そんな中で、クロコは小さく口を開いた。


「なあ……スコア、知ってるか?」


「なんだ?」


「少人数で、多人数を相手にするときは、互いに背中をつけるんだぜ……そうすれば囲まれる範囲を狭められるだろ?」


「……分かった、つまり」


「おまえの背中は、オレが死んでも守る。その代わりに……」


「きみの背中はボクが守る」


 二人は同時に互いの背中をつけた。

 クロコは口を開く。


「一人ノルマ二十五人だ」


 ホーククリフはその言葉を聞いてわずかに眉を寄せた。


「勝てると思っているのか……やれ!!」


 その号令と共に、聖騎士たちは一斉に二人に斬りかかった。


 クロコの前に三人の聖騎士が襲いかかる。三つの剣が同時にクロコを襲った。


 ヒュンヒュンヒュンヒュンヒュンヒュンヒュンッ!!


 その乱れるような斬撃をクロコは全てかわした。黒剣が動く。


 ヒュヒュヒュヒュヒュヒュンッ!!


 クロコの斬撃の嵐に、一人の聖騎士が斬り伏せられた。別の聖騎士が斬りかかるが、クロコの鋭い蹴りが拳をとらえ、腕ごと剣をそらした。


 ヒュンッ!!


 クロコの黒剣がさらに一人、聖騎士を斬り伏せた。


 スコアも勢いよく剣を振るっていた。


 ヒュンヒュンヒュンッッ!!


 宙に血しぶきが舞い飛び、三人の聖騎士が一斉に石床に崩れ落ちる。


 クロコとスコア、二人は勢いよく剣を振るう。見る見るうちに立っている聖騎士の数が減っていく。

 ホーククリフは目を見開き、驚いていた。


 ヒュンッ!!


 クロコが黒剣をひと振りしたとき、最後の聖騎士が床に倒れ伏した。

 ホーククリフは呆然としていたが、すぐに二人をにらみつける。


「お……おのれぇ!!」


 ホーククリフは完全に冷静さを失っていた、小銃を構える。それを見て、スコアはホーククリフに斬り込んだ。


 パンッ!!


 銃弾はスコアの横を通り過ぎた。


 ヒュンッ!!


 スコアの剣が、一瞬でホーククリフを切り裂く。

 血しぶきと共にホーククリフの体がグラリと傾いていく。


「そ、そんな……十四年……やっと、ここまで、きたのに……」


 ホーククリフは静かに石床に倒れ伏した。

 スコアは奥の通路に視線を移す。


「先を急ぐぞ、クロコ」






「騒がしいな……」


 グランロイヤーは言った。


「暴れているという侵入者は仕留めたのか?」


 部屋の入口に立つ国軍人が焦った様子で口を開く。


「い……いえ、ですが、すぐに」


「早く片付けろ」


 国軍人が立ち去ったあと、グランロイヤーは手持ち時計を見た。


「あと五分か……」


 すると隣に立っていたリーヴァルが歩きだす。


「ならば、私が仕留めにまいります。すぐに静かになるでしょう……」


「ああ、手早く済ませよ」


 リーヴァルは部屋から出ていった。





 グラウド国軍本部基地、その司令部の部屋、オルズバウロに銃口を向けるカルス中将。

 カルスはもう片方の手で手持ち時計を見て、ニタリと笑った。


「あと三分……」





 総務省局の地下の大部屋に、グランロイヤーは独りっきりで座っていた。


「時間だ……」


 グランロイヤーは手持ち時計をしまい、立ち上がった。






 総務省局の通路。そこでクロコとスコアは剣を振るっていた。脇の通路から銃兵が五、六人出てきて、一斉に銃弾を撃ち込んでくる。


「うわっ!!」


 クロコは急いで後ろへ下がる。スコアが一瞬で斬り込んで、銃兵たちを斬り伏せた。

 スコアは険しい表情をする。


「クソ、警備の兵が多過ぎる。急がなきゃいけないのに……」





 グランロイヤーは大部屋をゆっくりと歩く。奥にある黒色の長いレバーに向けて真っ直ぐに歩いていた。

 グランロイヤーは徐々にレバーへと近づいていく。


「長かった…………計画通りだったとはいえ、ここまで来るのに、ずいぶんと時間がかかった……」


 少しずつレバーへと近づいていく。


「だが、それももうすぐ報われる…………もうすぐ、全てが始まる」


 レバーまであと数歩。

 グランロイヤーは思わず笑みを浮かべる。


「さあ、神の風を吹かそうじゃないか」


 レバーの前に立った。グランロイヤーは手を伸ばす。

 その手がレバーをつかんだ。


「そこまでだ」


 離れた所から太い声が響いた。その声を聞き、グランロイヤーはレバーから手を離し、小さく口を開いた。


「やはり、私の前に、最後に立ちはだかる者は…………君だったか」


 グランロイヤーはゆっくりと振り返った。視線の先には小銃を構えたルイ・マスティンが立っていた。







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