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6-9 純白の戦い





「第三陣突撃!」


 純白の大都市ゴウドルークス、その西の城壁前方、緑色の草原帯で、解放軍と国軍の軍勢が激しくぶつかり合っていた。

 初めの方こそ国軍が圧倒的な攻めで解放軍を押していたが、次から次へと加わる解放軍の軍勢によって、徐々に国軍が押されていく。

 崩れていく国軍の陣形。その中でゴッドブラン中将は周りを見回し戦況を確認する。


「これ以上戦っても……こちらが優勢になることはないな」


 国軍は徐々に後退していき、ゴウドルークス内へと逃げていく。

 解放軍は追わなかった。少し崩れた陣形の立て直しを図る。


 後方で待機する解放軍本陣。その中央の司令部テント、その内部、そこの中央に置かれた机に、ランクストン総司令官を含んだ幹部たちが集まっていた。


「損害の方はどうなっている?」


 ランクストンの質問に若い副総司令が答える。


「こちらの損害はおよそ55000。国軍の損害は推定40000です」


 ランクストンは少し険しい顔をする。


「やはり前半のグラン・マルキノが効いたか……」


「兵力は現在こちらが195000。国軍は推定210000です」


 それを聞いて大柄の副総司令がランクストンの方を見る。


「これからどのように動きましょうか?」


「うむ……」


 ランクストンは腕を組んで考える。

 その様子を見て、高い鼻の副総司令が机に資料を開き、説明を始める。


「ゴウドルークスは四方を巨大城壁に守られた鉄壁の都市です。ですが東西南北にそれぞれ四つの巨大門を設置しています」


 ランクストンはうなずく。


「ああ、攻めるなら当然その門からになるな」


 それを聞いて大柄の副総司令が声を出す。


「つまりどの門から攻めるかが問題なのですね、どの門から攻めれば有利なのか……」


 若い副総司令が机に置かれた地図を指さす。


「グラウド国軍本部基地は、位置的には南地区と西地区のほぼ境界になりますが……」


 それを聞いてランクストンは口を開く。


「……というよりも、かなりデュークヴァン城寄りだな。街の中心付近と表現した方が適切だろう。距離に関していえば、どの門から攻めてもたいした違いはないな」


 高い鼻の副総司令がうなずく。


「ええ、ですが、いざ攻めるに当たっては、北門に回るにはニコ川を渡らねばならず、東門に回るには、街の南東にそびえるエコースト山が障害となります」


 ランクストンはうなずく。


「そうだな、ただし時間させかければ、その二つの門を攻めることも不可能ではない」


「たしかに……」


「しかし、敵に時間は与えたくないな」


 ランクストンのその言葉に高い鼻の副総司令がうなずく。


「そうですね、守る相手に対して、時間を与えないことがもっとも効果的な攻めとなるでしょう。それによってこちらが優勢にことを運べる可能性が高い。となると…………」


「うむ」


 ランクストン総司令官は目を鋭くし、口を開く。


「作戦は、ゴウドルークス西門、南門からの、二点同時攻撃だ」






「二点同時攻撃だろうな……」


 国軍本部基地の司令部の大部屋で、オルズバウロ元帥が静かに言った。

 隣に立つカルス中将がうなずく。


「そうでしょうね」


 広い部屋の中央に設けられた大きな机に六、七人の国軍幹部たちが集まっている。

 オルズバウロが口を開く。


「二点の内、どちらかに主力を集中させての一点突破だ。それが最も相手にとっては効果的な攻めとなるだろう」


 それを聞いて将軍の一人が口を開く。


「そうなると……解放軍の作戦は西門か南門のどちらかを突破した後、前進し、我々を挟み撃ちにする作戦でしょうね」


「ああ、そうだろうな」


 オルズバウロは言った。

 カルスがオルズバウロを見る。


「ならば、それを見越して伏兵を忍ばせておくべきでしょう」


「いや」


 オルズバウロは言った。


「そもそも突破させる気はない。どちらも完全に抑え込む」


 それを聞いてカルスは少し戸惑う。


「しかし、それでもし突破されたら……」


「十分な戦力は与える。あとは指揮官たちがその場の状況に合わせて動けば良い」


「で、ですが……」


 オルズバウロはカルスを鋭く見つめる。


「カルス中将。戦場においては、下手に策を弄するものではない。全体の動きは極力シンプルに行うべきだ。そうすればミスや想定外の事態を減らすことができる。どっしり腰を落とした敵ほど動かし難いものはないのだ」







 解放軍は戦力を80000ずつ割いて、ゴウドルークスの西門と南門を二点同時に攻めた。

 門を入ってすぐの大通りで、待ち構えていた国軍とぶつかり合う。

 純白の都市の中で、二つの軍勢の激しい戦いが始まった。



 ゴウドルークスの南門を入ってすぐの純白の大通り、そこでは、通りの中央にゴッドブラン中将がドシンと立ち塞がり、攻めてくる解放軍兵をあっという間に粉砕していた。

 ゴッドブランが剣をひと振りするごとに、五、六人の兵が宙を舞う。


「どうした! その程度か!! 貴様らの力はその程度なのか!!!」


 ゴッドブランは大通りの中央で鬼神のごとく暴れまわる。立ち向かう剣兵も銃兵も砲兵も宙を舞い、解放軍は手も足も出ない。

 ゴッドブランはその様子をじっくりと見る。


(ぬるいな……ぬる過ぎる。こちらはオトリか。ならば本命は……)





 ゴウドルークス西門大通り、純白の大通りの中央では、ミリアが立ち塞がる国軍兵を次々と斬り伏せていた。


 ヒュヒュヒュヒュヒュヒュヒュヒュヒュンッッ!!


 ミリアの斬撃の壁の前で、国軍兵は為す術なく斬り伏せられていく。ミリアの圧倒的な攻撃力を前に、国軍兵は叫び声を上げて斬り伏せられることしかできない。

 勢いよく前進するミリアに続き、他の兵士たちも前進する。

 解放軍はどんどん大通りを前進する。

 ミリアは国軍兵を斬り伏せながらどんどん道を開いていく。

 その時だった。

 ミリアは突然足を止めた。前方をにらむ。

 目の前には赤い服のマントを羽織った剣士たちが立ち塞がっていた。


「『聖騎士』か……」


 ミリアは赤い軍団を見つめた。かなりの数がいる。


(ざっと200人か。セウスノールで戦った時と比べると10倍近くいるな……)


 ミリアと聖騎士たちは少しの間にらみ合っていた。

 先に動いたのはミリアだった。


 ヒュヒュヒュヒュヒュヒュヒュヒュヒュヒュヒュンッッ!!!


 ミリアの超高速の斬撃の嵐が、聖騎士たちを襲う。聖騎士たちは一斉に後ろへ跳ぶが、避けきれず、二人が斬り伏せられた。

 四人の聖騎士が陣形を組んで正面からミリアに突進する。聖騎士たちはコンビネーションを組み、変則的なタイミングでミリアに斬り込んでくる。

 しかしミリアは動じない。


 ヒュン! ヒュン! ヒュン! ヒュン!


 ヒュヒュヒュヒュヒュヒュヒュヒュヒュンッ!


 互いの斬撃が交差した直後、二人の聖騎士が斬り伏せられた。ミリアはさらに残りの二人に斬り込もうとした、その直後だった、ミリアの左右から三人ずつの聖騎士が飛び出してきた。わずかに驚くミリア。


 ヒュンヒュンヒュンヒュンッ!!


 聖騎士達の斬撃の嵐を軽やかにかわし、ミリアは反撃の斬撃を無数に放った。左右の聖騎士の一人が斬り伏せられたが、残りの聖騎士は後ろへ跳んで逃げきった。さらにその直後、

 聖騎士の一人がミリアの背後に回り込んでいた。


 ヒュンッ!!


 聖騎士の斬撃は、ミリアをかすった。黄色い髪がわずかに切れ、宙に舞い散る。直後に放たれたミリアの蹴りがその聖騎士をとらえ、動きを止め、鋭い斬撃が聖騎士を切り裂いた。

 次の瞬間、間髪入れずに正面左右から聖騎士たちが襲いかかってくる。


「……!!」


 ミリアは小剣を乱暴に振り回し、斬撃の壁で間をさえぎった。聖騎士たちが動きを止めた隙に、後ろへ跳んで距離を開ける。

 ミリアと聖騎士たちは再びにらみ合う。ミリアは少し表情を険しくした。


「…………多過ぎるな」


「なら、交代しようか?」


 ミリアの隣にフィンディが現れた。


「……フィンディ・レアーズか」


 フィンディは軽く笑みを見せる。


「対集団戦はオレのジャンルだ。任せてくれよ」


「………………」


 ミリアは少し考えたあと、口を開いた。


「分かった」


「ミリアは他の箇所から道を開いてくれ。ここはオレが請け負った」


「礼を言う」


「惚れたか?」


「いや……」


 ミリアは離れていった。


 残ったフィンディは目の前の聖騎士たちに視線を移し、鋭くにらみつける。

 聖騎士たちは剣を構え、いまにも斬り込んでくる様子だ。


「さてと……」


 フィンディは不敵な笑みを見せ、剣を構えた。


「思いっきりやろうじゃねぇか。もしおまえたちが真の『聖騎士』だっていうのなら、この目の前にいる『悪魔』に制裁を加えてみな」


 フィンディは赤い集団に向かって突進した。






「現在、西門、南門、共に抑え込んでいます」


 報告を聞き、オルズバウロ元帥はうなずく。


「順調だな……」


「ええ、順調ですね」


 カルス中将はそう言ったあと、ゆっくりと窓の方へと歩いていき、戦場を見つめる。


(…………そう、実に順調だ。もうすぐだ、もうすぐ始まる。歴史上最高のショーが、我ら『レギオス』の手によってね)


 カルス中将はニヤリと笑みを浮かべる。






 ゴウドルークスの北に広がる草原帯、戦場の爆音が遠くから響く馬車道を、二騎の馬が勢いよく駆けていた。

 その馬には二人の剣士が乗っていた。クロコとスコアはゴウドルークスへ向けて勢いよく馬を走らす。

 スコアは前方を見つめる。


「あの純白の色は……見えた! 首都ゴウドルークスだ!!」


「よし! 待ってろよ、レギオス……!!」


 二人は一気に首都へと迫っていく。







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