閑話 1
よろ
駆け抜けて行った少女を後ろから眺めながら
「はぁ……全く、少しはわしらの気持ちも考えて欲しいものじゃがな……」
そう言ってため息を着くエルフたちの姿があった。
「全く……やっと嫌でダメな母親の役を脱げるわ……」
そう言っているのはベルメリアの母親、『スズリア=アイギス』。
……ベルは知らなかった。彼女の母親が演技をしていたということを。
「──────ベルの剣はまさに『裁断』とでも言うべきでしょう。それは認めます、私『覇剣』、ロザリオが言うのだから間違いはありません」
そう語るのはエルフ族の中でただ1人の剣豪だった女性。
かつてエルフの里が魔法を封じる結界により大ピンチを迎えた時、大剣を片手にその結界を破壊した女性である。
今では、ごく稀に里に帰ってきてはみんなの成長を見守っていた。
「……お主がそういうならば、まあ問題は無いのじゃろうが……うーむ心配じゃ……あの子はいかんせん生まれつき感性がおかしいからのぅ……大丈夫……じゃといいんだがなぁ……」
「……長老、心配ならば私が見てきましょうか?」
「よいよい、お主に迷惑をかけるつもりはないわい…………む?待て、あやつにお金渡したか?誰か!……あやつ冒険者になる為のお金、持って行っておらんのでは無いか?!……」
ベルメリアの母親、『スズリア=アイギス』は
「あっ……」
と慌てて飛び出そうとしたところを止められる。
「…………彼奴本当に大丈夫何じゃろうか……?」
「大丈夫ですよ!なんせあの子は、私らからの呪言による精神負荷テストにも耐えてますし……」
「うむ……この里から出ていくエルフは皆優秀な者ばかりじゃからなあ……あやつの殺意は以前からやばいのは知っておったが……」
「本当っすよ、前なんて魔物かと思って慌てて卵投げちゃいましたもん……」
「というかのぅ……あやつの殺意のせいで寝不足になっておる奴もいるからなあ……本当に出ていってくれて助かった……と言うべきか……」
そう言いながら長老はかつてのことを懐かしむようにつぶやく。
──────かつてこの地にとある予言があった。
その予言はこうだ
『次に生まれる耳の短いエルフは世界を救う力を持つ。故に己自身で旅立つことを助けたまえ。……そしてその者が有り得ぬほどの剣を極めた時、それが旅立ちの日に合図だ』
△▽△▽△▽△▽
「あれ?女神様〜なんか転生者用の訓練場がひとつ消えましたけど、なんかしました?」
ここは天界。神が座す処
「失礼ね!私はそんなにポンコツじゃないわよ!……あ〜その訓練場はね……確かエルフの子がぶっ壊してったわ」
「……エルフ……ですか。いやいや、ぶっ壊せるものじゃないですがあれ……」
そういう天使に対して、女神は
「そうよね……まぁあの子は転生者だけど記憶を失ってるからね……うーん、まぁ記憶を思い出させない方が良さそうだし……放置でいいよ!」
……「分かりました女神様。では次に……海洋国が……」
「またタコの話?もう聞き飽きたんだけど!?」
──────ベルメリアは転生者である。
最も、かつての姿は……語らぬ方が良いのだろう。
もし、彼女にかつての記憶が蘇ってしまったのならば、その時は
世界の終わりを意味するのだから
それがこの世界における、最後の核爆弾。開いてはいけないパンドラの匣
─────だけど今は、剣を極めることに全力を注いでいるのだから、それの邪魔をしちゃあ行けないよ。
──────『ね。』
次の話はまた夜にでも