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心のシリーズ

心のない言葉

作者: リィズ・ブランディシュカ



 出社したら、エレベーターの前でハンカチを落とした。


 それを、知らない誰かが拾ってくれたようだ。


 私はそれをもらって、口を開く。


「ありがとう」






「ありがとう」と言う。


 私は、誰かに何かをしてもらった時に、必ず「ありがとう」と言うようにしている。


 素晴らしい理由なんてない。


 相手に良い印象を与えるためだ。


 社会というのは、「礼儀正しい」人を持ち上げるもの。


 場合によっては、能力が高いとかよりも「礼儀正しい」事は重要になってくる。


 できない奴がいても、「礼儀正しい」だけで持ち上げられる事がある。


 仕事ができて、礼儀のなってないやつより、仕事ができなくても礼儀がなっているやつを、優先する事がある。


 なぜ?


 どうして?


 それは。


 だって、その社会をまわしているのは人だから。


 人を気持ちよくさせる事が重要なのだ。


 人間の社会は、そういう価値観がかなり重要視されている。


「ありがとう」


 だから私は、心のない感謝の言葉を言い続ける。


「ありがとう」


 むなしくなってきてもやめやしない。


 会社の同僚に、上司に、部下に。


 空っぽの、中身のない言葉を吐き続ける。


 ほら、これでいいでしょ?


 みんな騙されてる。


「いつも提出が遅くなってごめんなさい」


「少し間違えちゃったけど、許してね」


「これくらいなら、大丈夫よね?」


 私が何か遅れても、間違えても、勘違いしても。


 礼儀正しい人だから、ってみんな許してくれるのよ。






 私は、仕事を終えて会社を出る。


 トイレによってから帰ろうと思って、足を向けると。


 違う部署の人達が話をしていた。


「あの人、ほんと不愛想よね」

「仕事はできるけど、ちょっと近寄りがたいわ」

「関わりたくないから、他の部署にうつってくれないかしら」


 ほら、やっぱりみんなそう。



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