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数日後、アルマーが裏庭で昼食をとっている私のところへやってきた。
「久しぶり。最近つめたいね、ダリア」
そんな言葉をかけられる。
まだそんなことを言うのか、と呆れてしまう。まぁ時間をくれと言ったのは私だけど。
でも、ちょうどいいわ。
日にちも時間もぴったり。
「そうですか? 恋人でもなんでもないので、特別お話することは無いと思いまして」
「恋人だろう?」
私は肩をすくめて立ち上がった。
「では今日から恋人ではありません」
「……考えた結果がそれかい?」
「私はあなたに婚約者がいると知らなかった。そのことをご存じでしたか?」
「気にしたことなかったよ。聞かれなかったし」
「私は身分の問題で貴族の情報には疎かったのです。だから知らなかった。そういうことを考えていただけなかったのでしょうか」
「だから言っただろう? 知らなくても大丈夫だよ。誰かに非難されたりしないから」
「それは私が学園にいる間の恋人で、婚約者であるテレーザ様がそのことを知っても怒らないと思っていたからなのですよね」
「当たり前だろう?」
貴族とはそういうものだ。と至極当然という顔でアルマーは言う。こういう態度を取られると、なんだか私がおかしいような気すらしてくる。
「では、アルマー様のしたことは浮気ではないのですね」
「そうだよ?」
「だ、そうです。テレーザ様」
私の言葉にアルマーが驚く。その直後、私の後ろの木陰から、テレーザ様が姿を現した。
金色の美しい髪が靡いている。
彼女の顔は、その美しさも相待って非常に恐ろしくみえた。
「ご機嫌よう、アルマー」
玲瓏な声が響いた。