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 私の恋人、シューベル伯爵家の息子アルマーには婚約者がいる。

 テレーザという美しい人で、身分は侯爵令嬢。

 男爵家の、それも成金の家の娘である私とは全くちがう、雲の上の人だ。

 

 成り上がって突然貴族になった私が学園に入学した時、優しくしてくれたのがアルマーだ。彼は貴族のたしなみがわからず虐めを受けていた私を助けてくれた。

 いい人だと思っている。

 だから彼から告白された時、私は喜んでお付き合いすることにした。


 彼に婚約者がいることを知ったのはその後のことだ。


「ということで、別れましょうアルマー様」

「どうしたんだダリア、突然……」


 困惑した様子のアルマーに私はため息を吐き出してしまう。


「どうしたって、ご自分の胸にお聞きになったらいかがでしょう」


 昨日までは商家だったころの口調で話していたが、今はもう他人行儀。貴族相手に話すように修正している。

 というか、はやく他人になりたい。


「何を言っているんだ? ダリア」

「アルマー様……婚約者がいるそうですね」

「どうしてそれを?」

「どうしてそれを? まさか、私が気づかないとでも? いいえ、確かに告白されて、つきあって、他の方に忠告されてようやく知った私が馬鹿でした。でも知ってしまった以上、私は侯爵家に喧嘩を売る真似はできません」


 キッパリと言ってやった。なのにアルマーは困惑した顔をしている。


「何がそんなに気に入らないんだ。たしかに俺には婚約者がいる。けれど、学園にいる間は自由にすることができる。それが学園なんだ。だから俺はダリアと付き合っているんだ」

「それは……」


 私は絶句してしまった。まさかそんな言い訳があるだろうか。

 いや、もしかして貴族とはそう言う物なのだろうか。ならばそんなものになってしまったことを後悔したくなるほどだ。


 ――道徳の勉強をしたらどうかしら。


「ちなみにそれは婚約者であるテレーザ様はご存じなんですか?」

「さぁ言ったことはないけど、でも彼女は知っても怒らないと思うよ」


 ――なぜ断言できる。


 あきれてものが言えない。

 普通に考えて、婚約者が学園にいる間であっても他の恋人を持っていたら嫌だと思うし、不快だと思うのだが。

 全く理解できない。できないが、一つ分かったことがある。


「わかりました」

「わかってくれたか、それじゃあこれからも……」

「なんにしても、私はあなたに弄ばれたということはわかりました」

「は? そんなつもりはないよ。君は俺の大事な恋人だ」

「学園にいる間のですよね」

「そうだよ」

「はぁ」


 ため息しか出ない。

 

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