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スチュアートエイジ「ブラックナイト(黒騎士)」

作者: ヨッシー@
掲載日:2022/06/15

スチュアートエイジ「ブラックナイト(黒騎士)」


ゴゴゴゴゴゴー

激しい振動とともに、私は宇宙空間に突入した。

数十分間の揺れ、僅かな時間だが何度経験しても楽しいものではない。振動と熱、私にとっては地獄の扉を開けるような不快な時間にしかない。

このまま爆発してしまうかと、いつも思ってしまう。慣れる事はない……


宇宙の景色が見えてきた。

実際の宇宙とは、漆黒の中にまばらに星が輝いているだけだ。映画やアニメーションの様な綺麗な宇宙とは全く違う。黒…暗黒、あの暗闇を見つめていると吸い込まれそうな嫌な気分になる。

私だけか?宇宙は嫌いだ。


光るものが見えてきた。

ISS(国際宇宙ステーション)だ。10年ぶりの来訪。少し懐かしい。

しかし、前回とはかなり違う。AIによる自動航行は、かなり楽だ。燃料の節約にもなるし、ほぼ計器の確認もいらない。全てお任せ、座っているだけでことが済む。

人間もいらないんじゃないか?そんな事さえ考えてしまう。

極秘で打ち上げられた軍事用スペースシャトル ロングノーズ号(形そのままのネーミングだ)。

シャトルと言っても、昔とは形も機能もかなり違う。以前のロケットの背部に乗るシャトルではなく、前頭部の一部分にシャトルが設置してある。これは重量バランス的にかなりイイい。NASAは、今後この方式で計画を進めていくらしい。

打ち上げは深夜だった。任務は極秘。軍にも「新型人工衛星打ち上げの為の無人ロケット発射」と報告してある。私が搭乗している事は完全に伏せてある。あくまでも極秘だ。

この国は極秘が多い。

ISSは、あと1年で終了する。閉鎖計画が始まってから、はや10年。延長に延長がかさみ、とうとう終了だ。今はもう数人しか搭乗していない。すべてアメリカ人だ。

現在は、最後のミッションとして大気圏降下計画を遂行中。


突然の任務だった。私は、研究者の傍らCIAの仕事もしている。よく聞く派手な仕事では無く、あくまでも研究上の情報の収集だ。宇宙での情報収集も仕事の一つだ。たまに、大変なミッションもあるが…

再びISSに来訪するとは夢にも思わなかった。当局からの極秘ミッション、受託に迷いはない。


確認事項、

コードネーム「ブラックナイト1(Black Knight 1) 」地球極軌道上を不規則に周回する浮遊物。全長120メートル、重量10トン、秒速7.9キロメートル(時速2万8800キロメートル)で極軌道上を周回している。

位置は、月と地球の間のトロヤ点、いわゆるラグランジュポイントL4〜L5だ。

赤道面から79度傾いた軌道の公転周期は104.5分。遠点1728キロメートル、近点216キロメートル。どの国にも属さない、公に公表されていない謎の浮遊物だ。

一部のオカルトマニアには、地球外生命体の衛星だと噂されている。

当然、私は信じてはいないが興味はあった。密かに情報を収集していたのを当局に見つかり、ミッションを指名された。私以外、適任者は見当たらなかったそうだ。それも不思議な話だ。CIAは何でも知っている。怖いものだ。

「パスコードOK、レーザーセンサー確認」

AIからのアナウンスがした。

AIの操縦は間違いがない。安心できる。ヒューマンエラーの方が怖いものだ。

ガッチャ、

ISSにドッキング、振動もない。

マイクロデブリに傷ついた搭乗口が、静かに開く。

「オールグリーン」

「搭乗を許可されました」

「ラムダ、今からISSに乗船する」

「OK、スチュアート博士、お気をつけて」AIの声はスマートだ。

シューッ、ハッチが開く。

「お久しぶりです、スチュアート博士」

ケンブル大尉が、出迎えてくれた。

地上で会ってから一年ぶりだ。気のいい奴だが、真面目過ぎるのが欠点だ。白いシャツが眩しい。相変わらず身なりが正しい。他にジョンソン中佐、メジャー少佐が滞在している。この三人はエリート中のエリートだ。我々とは頭のできが違う。心技体すべてが揃っている。

ISSの降下作戦は、間違いがあってはならない作戦だ。彼らは適任である。

極秘ミッションの事は既に承知している。私が単独で任務を遂行する事も了承済みだ。

「ISSの住み心地はどうだ?」

「可もなく不可もなくです」

エリート軍人らしい返答だ。

「そうか、それは良かった」私も月並みな返事をした。

決して住みやすい所ではない。任務の為なら不平を言わないのが軍人だ。

「早速だが、BK1は変わりはないか?」

「はい、変わりありません」

「私のミッションは、AIラムダと兼任任務だ」

「調査内容は、君達やNASAには一切、報告はできない。解っているね」

「はい、解っています。干渉せず、できる範囲のお手伝いをしろと言う指令を受けています」

「解った、ありがとう」

「はい」敬礼をする大尉。


私は直ぐにブラックナイト1探査の準備をした。シュミレーションは何度もこなした。準備は万端だ。

コンテナドックを見る。

カッチャ、カッチャ、

ラムダが、黙々とミッションの準備を整えている。

定刻、

「ドック開閉、サブブースター点火」

「発進します」

バシュッ、軽く姿勢制御を整えた探査機はシャトルから離れた。

「航行経路順調、秒速10キロメートルで進みます」

ラムダのアナウンスはいつも冷静だ。心が安まる。

探査機はISSから離れ、ブラックナイト1に向かう。

しばらく航行すると、

「電波信号を記録しました。信号名EPN1288-1920です」ラムダのアナウンス。

資料によると、この電波信号は、うしかい座イプシロンイザルから送信される電波信号と同じだ。私の研究でも合致している。この情報も一般には伏せてある情報だ。

知的生命体、

当局も実は疑っている。

探査ミッションは今回で5回目だ。直近のミッションは、2001年。ミッション名「M-STS01」。

全て失敗、

探査員は全員死亡。家族には、航空機での事故死と報告されている。

私も死亡したら事故死となるだろう。勲章など欲しくもない。くだらない、承知の上だ。

まあ、いい、

探査機は、大型デブリ回避のため、大きく迂回した。想定内。

「再び、ブラックナイト1の起動上へ航行を修正します」ラムダのアナウンス。

バシュッ、

探査機が姿勢制御バーニアを吹かす。

現在、ブラックナイトに国籍はない。

この物体は、世界中のどの国にも属さず学術的調査記録もない。多分、不明だからだ。不明と言うか封印されている。ブラックナイトに近づく者は全て破壊される。デスサテライトと呼ぶ国もある。かの某大国も、幾度もチャレンジしたが失敗を繰り返し、とうとう諦めたらしい。CIAからの情報だ。

当局も、過去1969年から探査を実行していたが、全て失敗に終わった。アポロ13号も実は、ブラックナイト探査だった。探査員3名が死亡。あくまでも所有を最初に表明したいこの国は、いったい何人の死人を作ったのだろう、困ったものだ。

私も個人的好奇心から引き受けたが、今となっては後悔が募る。科学者としては興味津々だが…

一つ疑問がある。何故、ブラックナイトと呼ばれるのか?

中世では、紋章を黒く塗りつぶした所属不明な騎士をブラックナイトと呼んだが、今回の命名者は不明だ。誰が、いつ、名付けたのだろう。その由来も気になる。

一部の権力者だけは知らされている事だろう。探査する私にも伏せている。謎が多い浮遊物ブラックナイト。

信じられない事実も記載されていた。

ブラックナイトの起源は13000年前。そんな事があり得るのか?いくら何でもありえない、SF小説か?目を疑った。

そして、SS電磁波。人類の科学では、まだ発見されていない机上論電磁波だ。

このSS電磁波は、一種のシールド効果も果たし、ブラックナイトに近づく探査機の計器を破壊し、探査員の肉体も分子沸騰化により細胞を破壊する。

探査隊は、外部、内部から破壊され宇宙のもくずと化す。これが、数々の探査員たちが死亡した理由だ。

今回は、抗電磁波セラミック合金で船体が覆われており、このSS電磁波は軽減される。科学の結晶だ、ノーベル賞も役に立つ。

私の宇宙服も抗電磁波セラミック製だ。しかし絶対はない、不安は残る。

見えてきた。

「SS電磁波、上昇。フェーズ2に入りました」ラムダからのアナウンス。

やはり、このボディーでも計器が異常を示すのか、

まだ耐えられる。シュミレーション通りだ。

「到着まで残り200メートル」

順調だ、さすが軍事用。

「残り100メートル、」

光っている。

太陽に照らされたブラックナイト1が宝石のように輝いている。

黒水晶、鉱物というより宝石に見える。

美しい、

本物のブラックナイト1を目撃して、私は興奮が止まらない。ファーストコンタクト、心躍る自分が現れる。

「スチュアート博士、心拍数が上昇しています。落ち着いてください」ラムダのアナウンス。

「すまん、わかった」私は持ち込んだ聖書を掴み、ゆっくりと深呼吸をした。

「心拍数低下、平常値です」

これもシュミレーション済みだ。

目視観察。

やはり美しい、巨大な宝石が、ゆっくりと回転している。

「あと、5メートル、4、3、2、1」

「キャッチ、」ラムダのアナウンス。

ブラックナイトの軌道に到着した。

SS電磁波はMAXレベルだ。

ガガッ、微量にきしむ探査機。

ブラックナイトの回転と同じに、探査機も回転をする。

二つの物体が、ゆっくりと回転する。これも美しい。

攻撃してくるか?

…大丈夫だ。

「ラムダ、マニピュレーターを出してくれ」

「OK、スチュアート」

私はラムダに命令した。探査機頭部からマニピュレーターが二本出る。

「手動機能、マニュアル転換」

「了解」

私のコクピットに機能が転換した。青いランプが着き出す。ここからは手動で行う。

「側部ハッチ、オープン」準備されていたケースから鉱石を取り出す。

この鉱石が鍵の役目を果たすのだ。

エジプトのピラミッドの中から発見された鉱石(ギザストーンA)。

調査では、隕石とまでは解っている。

これが少量だが、うしかい座イプシロンイザルから送信される電波信号と同じ信号を発している。ブラックナイト1と同等の鉱物構成と解釈。当局は、ブラックナイト1の鍵と想定。

ギザストーンAをマニピュレーターで掴み、ゆっくりと近づける。

反応がある、

ブラックナイト1の腹部がゆっくりと開いた。花の蕾が開花するように変形するブラックナイト1。

雌しべのような場所が飛び出してくる。

ストーンホルダーだ、シュミレーション通り。

慎重にマニピュレーターを操作するスチュアート。

緊張で、手に汗が滲む。

ハーッ、ハーッ、呼吸音。

ゆっくりと、ギザストーンAをはめ込む。

合致、

1ミリの隙もない。

ホーッ、安堵するスチュアート。

2001年、前回のミッションM-STS01では、このギザストーンAを使わず、ドリルなどで強引に破壊し、侵入しようとした。攻撃されて当然だ。

彼らに、原始的過ぎる行動は野蛮人そのものに見えるだろう。私には理解できない。時に当局は野蛮人になる。それが人間だが…

ここまでは、順調だ。

スーッ、

BNホルダーが収納され、左前側部にドアらしきものが開いた。

予定通り。

「ラムダ、セカンドミッションを開始する」

「OK、お気をつけて」

私は、NEMU(抗電磁波船外作業ユニット)を装着した。

NEMUは宇宙服アセンブリ(Space Suite Assembly-SSA)と生命維持システム(Life Support System-LSS)の二つのユニットから構成されており、今回のミッションに伴い、狭所作業用小型LSSが開発された。分離、離脱が単独で可能だ。

さすがに緊張してきた。

「レフトハッチオープン、」

「了解しました」

私は船外に出た。宇宙を泳ぐ。ゆっくりとブラックナイト1に近づく。

計器を見てみる。順調、アラームも無い。

大丈夫だ、SS電磁波は最小レベルだ。ここもシュミレーション通り。


ブラックナイト1内部

暗い、

通路の様な道を進む。

MEMU頭部のオートライトの光が強くなる。

何も無い……

四方一面、壁だけだ。

パパパパパパッ、

突然、明かりが点き出した。今度は透明な水晶板が現れる。

こっちへ来い、と言うことか、

驚いた、歓迎されているのか?導くままに奥に進む。

左に曲がる。

部屋があった。

カーテンの様な薄い幕がある。くぐる。

広い部屋だ。個室の様なボックスが一つあるだけ。辺りを見回す。

見たことのない計器が並んでいた。さまざまな色に輝き、これも機械というより宝石に見える。文字は見当たらない。

我々より進んだ文明だ、本能的に感じた。

彼らに比べると我々は原始人そのものだろう。かなり遅れている。

あっ、

椅子らしき物が、ゆっくりと回る。

人だ!

真っ黒い服の、人の様な生き物が椅子に腰掛けている。

とっさに、銃を構えるスチュアート。条件反射だ。

「物騒な物はしまいたまえ、スチュアート君」

黒い服の人が喋った、しかも英語だ。私の名前も知っている。

「驚くことは無いよ、スチュアート君」

何故、名前までも?

私の頭は混乱した。地球外生命体だとは思っていたが、私の想像を遥かに超えた生命体だ。全てが読まれている。私たちの浅はかな考えなど、子供の悪戯の様なものだった。

言葉が出ない…考えていることさえも読まれているのか、

「そう怯えなくてもいいよ、スチュアート君。私の名前はアルフォート」黒い服の人が話しかけてきた。

「お招きいただき、ありがとうございます。アルフォートさん」

私のスピーカーを使って、ラムダが代わりに喋り始めた。

緊急対応措置だ。

落ち着け、落ち着け、あくまでも友好的に、友好的に、

「君たちの文明は理解している。君たちの思考も理解している」アルフォートは、続けざまに喋った。

「貴方たちの文明の高さに、私たちは感動しております」ラムダの声。

「そう、かしこまらずに、友人と思っていいよ」

「君たちは、まだ未熟だが、順調に発達している。いずれ私たちのレベルまで達するのも遅くはないだろう」

「ありがとうございます」ラムダの声。

「君の考えも理解しているよ、スチュアート君。会話している声もアシストだと理解している」

すべてお見通しってことか、

「そう、その通り」

「えっ、」

私は今喋っていない、心の中も解るのか?

「そう、この声も君の脳に直接話しかけている」

私たちより格段に進んだ文明だ。言葉を選び選び話した事も無駄だった。

「そう、その通り」

やりづらい、マニュアルが使えない。

「単刀直入に質問します。あなた達は何故ここに、この物体を設置しているのですか?」勇気を出して言ってみた。

「君たちはまだ、多面的心情コントロールが未熟だ。科学だけが発達し、他の星の生命に脅威を脅かす可能性がある」

やはり、私の想定した通りだ。各星々に調査員を置き、そこの文明を監視し警戒しているのだ。

「そう、その通り。君は賢い」

「私達は、干渉はしない。あくまでも観察しているだけだ」

本当なのか、(心の声)

「本当です」

やりづらい。心の声が丸聞こえだ。

しかし、人類の歴史に出てくる不自然な異星人からのコンタクトは証明できないぞ。

「君は賢い」

「以前は、この星系の区分が統制されておらず、各星々が独自に調査、干渉、侵略を行なっていた。幸い、この星は温厚な民族が調査していたので、侵略は間逃れた」

「資源をすべて奪われ、崩壊された星は多々ある。君たちは運がいい」

そうだったのか。

「これからどうするのですか」

「干渉はしないが、観察はする」

「そうですか」

「君たちは、今も人類同士戦争をしている。本能的に行動する人間が多い。多面的に物事を考え、心情をコントロールする努力をすれば、より良い民族になるだろう。時間はかかる。君が選ばれたのは必然だ。君は多面的心情コントロールができる可能性が高い」

「そうなのかな?」

「そうです」

「そうそう、君たちの統治者には、まだ伝えられない。その段階ではないからだ。順序を追ってコンタクトを行う」

「来るべき時、この星の民族が平和的統治をできた後、私たち星系連邦に招待されるだろう」

「それまで、段階を踏んで進化したまえ。理解できたかな」

「解りました」

「君は賢い」

会話は、あくまでも上から目線だな。

「すみません」

ああ、やりづらい。

「友好のために告白するが、私は君たちのAIと呼ばれる物と同じ物だ」

「ええっ、」

「私もそう思っていましたよ」ラムダの声。

「あなたも賢い」

「この星には5つのステイムがある。初期コンタクトは今回だけだ」

「ステイム?」

「君たちがブラックナイトと呼ぶ物だ」

ああ、そういう名前なのか、

「私たちは、君たちの先輩という立場だ、理解して欲しい」

「解りました」

私は、実は選ばれていて、ここに来たのも彼らに導かれ、必然として訪れたらしい。不思議だが本当の事らしい。

未来への期待、進化するまでの時間、異星人との友好、星系連邦、

頭がパンク寸前だ……


追記

当局には探索不明と連絡した。

まだ、この星には早過ぎる情報だからだ。

AIラムダも私も、ブラックナイトから必要以上の記憶を消された。

彼らは必然と言うが、私は、彼らからの助言を受けながら、これからもミッションをこなすだろう。

来るべき時の、本当のコンタクトのために、


絶望的な未来ではなく、希望的な未来のために…

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