展望
こういう流れを書こうと思ってた
ダムで働く
男に似た、ブルジョワの落ちこぼれみたいな雰囲気の、インテリ思考の持ち主と出会い、話をする
「永遠とは、この空の上でギラついてる太陽のことさ」「しかし、ね、君、永遠という概念は、「永遠」と言葉にしてしまうことで,把握可能な、有限なものになってしまうからタチが悪い」
……
「悪は加速するんだ。空中を石が落下していくように。そして最終的には、君や、あるいは君の周りの人をも巻き込んで破滅に追いやるかもしれないのだ」
石が川に落ちる、そのしぶき。
ダム建設は過酷で、誰かが地面に墜落して死んだとバケツリレーしているうちに聞かされる。
「それを実際に見たのか?」
「いや、見ていない」
「なら、嘘だ」力無く笑う。
工事の賃金は予定よりだいぶん削られる
「おかしいじゃないですか!これじゃ生きていけないですよ!」
「いいか!この国の失業率は4.8%だ!それだけの人たちが,みんなこっちに流れてくるんだ、満足な金が出せるわけないだろう!」
娘からの手紙は滞りがちになる
男は何駅分か歩いて、それから列車に乗って帰る
娘は派手な化粧をして、酔っている
「私も、できることしたいの」
水商売をしているらしい
夜、娘の誘いで散歩に出る
周りのビルはピンクにライトアップされている
川の中を舟が通っていく
橋の欄干に、娘はひらりと座る
「お父さん、私ね?ずっと秘密にしてたことがあるの……」
「私、お父さんのことがずっと怖かった」
にこやかな顔が一瞬で強張り、娘の体がぐるんと後方に回転する
彼女の体は欄干に打ち据えられ、男の目には娘の赤い靴がはっきり見える
娘はぽちゃんと川に落ちる
おわり