⑦男子の99%は見てるよ
テントの中の機材をもの珍しそうに見ていた浅井は、今度はいきなり河野のナップザックの中身をあさり出した。
「あ、おいよせよ。何してんの」
「いやー、なにか珍しいものでも入っているかと思って」
「珍しいもんなんか入ってないよ、エッチな本でも入ってたらどうしようかと思ったよ」
「あ- 私兄貴がいるから、大丈夫よそうゆうの。へーでも航ちゃんでも見るんだ、そういうの」
「男子の99%は見てるよ、確実に」
「ふーんそういうもんなのね」
浅井は、ナップザックの河野のネームプレートを見て、驚いたように言った。
「えっ、航ちゃんって、本名『こうのこう』っていうの?」
「こうのこう、なんて名前があるわけないでしょ。河野わたるだよ、わたる!」
「あ- そうか、航ちゃんって名前の『こう』じゃなくて、あーそっかそっか」
自分の名前が浅井にちゃんと認識されていなかったことに、河野は大いに落胆した。
「ま、蝉丸の方がメジャーだからね」
「あ- そうそう、その『蝉丸』だけどさ、だいたいなんで蝉丸なの?」
「あ- 話せばちょっと長くなるけど、聞きたい? 中学時代の百人一首&坊主めくりバトル事件」
「聞きたい聞きたい、武勇伝武勇伝って感じで」
どうも浅井はかなりお笑い系に造詣が深いようだ。河野は中学時代の事を話し出した。