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⑤この深夜放送の投稿、絶対やらせだろ!

河野は学校の備品のテントにこもり、好きな深夜放送の「オールナイトミュージック」を聞きながら、観測を続けた。

なんだか、自分の引退にはふさわしいかもな。

河野は天体写真の露光の時間を気にしながら、ふとそう思った。


ラジオから、リスナーからの手紙を読むDJの声が流れてくる。

「それでね〇〇さん聞いてくださいよー、はい聞きましょう。6年間ですよ6年間。6年間もまともに口を開いたことの無かった男子から、告白されちゃったんですよー。なんとなんと相手も6年間も私のことを思ってくれてたんだって、もう超ハッピー・・・」

河野は苦笑しながらラジオに聞き入っていた。6年間だって? ありえねえじゃんこんな都合のいい話。

と思いながら自分の過去十年間くらいを走馬灯のように思い出し、結局自分はあの小学校「抜け殻事件」から一歩もふみだしていないんじゃないかと、また苦笑いを浮かべた。

どんなに自分が思っても、言葉や行動で相手に伝えなければ、何も無いと同じだ。その点ビールはえらいよな。時々修羅場みたいにもなってるけど、おれなんかよりよっぽど世の中を動かしているよな、きっと。

今のおれにいったい何ができる? 浅井陽子に告白でもするか? 河野の頭の中に浅井の笑顔と、小学校のときの彼女の泣き顔がオーバーラップしていた。


この時河野は実は半分意識を失って眠っていたらしく、今写していた分の天体写真が完全に露光オーバーになっていることに気がついた。

あー数カット損したな。

・・・それにしてもマジ冷えるな。まわりの家も真っ暗だ。

もう十一月だしな。

ほんとに受験の3年ていうのに、何やってんだか。


・・・あれ? おい、よせよ、懐中電灯はヤバいって、あ~あ、この分もNGか。

あれ? なんだあの光、こっちに向かって来るぞ。誰だ?

「ごめーん遅くなって。あれ? 航ちゃんだけ? みんなは?」

「??? あれー 浅井じゃん。どうしたの」

河野はまだ夢の続きを見ているのかと思った。

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