表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

21/29

㉑どうぶつの星 +(その3)

あ、ここで誤解しないでね、ウルフ君はそんなに悪い子じゃなかったと思うの。

遊び慣れてたのはその通りだけどね。むしろ普通の男の子だった様に思うわ。

ルナちゃんはね、ウルフ君と、あっという間に夏休み前に深い関係になっちゃったのね。

ルナちゃんの生活は乱れたわね。ゲーセンやカラオケ、酒・タバコとかね。

自分でも止め処が無い方向に突き進んでいっちゃうのがわかっていながら、どうしようもなかったわけよね。

そうこうしているうちにね、パムちゃんが、いきなり死んじゃったの。

たしかにウルフ君と付き合うようになってからわね、敷物の新聞もあまり替えてあげなかったし、ろくに遊んであげなかったから運動不足だっただろうし、えさもあげるの忘れたり、急に違うえさをあげたりね。

夜中にとても苦しそうになってね、いそいでお父さんといっしょに、動物病院につれていったんだけど、もう遅かったわね。

ペットってね、少し冷たくすると、すぐ感じちゃうんだってね。

それでね、パムちゃんが死んでね、ルナちゃんは目が覚めたの。

なんてくだらないことやってたんだろう、ってね。

で、いきなり不登校になっちゃってね。

悪い友達とも、一切、いっぺんに縁を切ったんだけど。

あんまり急にいい子ちゃんに戻っちゃったんでね、その仲間やウルフ君からは恨まれてね。

学校でも悪いうわさばかり流れて、とうとうその女子高はやめちゃったのね。

それで中途半端なかたちで、某公立高校に編入してきたわけ。

でね、ルナちゃんは実は、未だにタイガー君への思いを捨てきれないのよ。

本当にたまにタイガー君とメールのやり取りをするんだけど・・・

タイガー君はとっても輝いていて、元気みたいよ。今度地方版だと思うけど、テレビに映るかも知れないって。

それでね、ルナちゃんは、完全に袋小路なのよ。

自分の思いを、自分で汚してしまってね、そんな思いをタイガー君にいまさら伝えられるわけないじゃん。

そういう時、ルナちゃんはね、星に祈るのよ。

「なかった事にしてください」って

「全部なかったことにしてもらえませんか」ってね。

でも今でも、ルナちゃんは、ルナちゃんの心は、パムちゃんが死んでしまって、もうだれも住んでいない、ハムスターのかごの中にね、今もいるんだわ、その中からね、抜け出せないのよ。

「心の化石」ってね、あるのかと思ってね。

私この前ね、小さいときからずっとかわいがってくれたおばあちゃんが亡くなって、お葬式行ってね、火葬場まで行ったのよ。

そうそう、わたし律儀にも、パムちゃんもちゃんと火葬にしたのよ。そういう業者ってあるのね、やっぱり。

それでね、焼かれて出てきたおばあちゃんの骨を見ながらね、思ったの。

もしこのまま一生、誰かを思い続けるようなことがあったなら、その証として、絶対心の中にね、何かが残るはずだと思ったの。

だって本当に冗談じゃなくこんなに心が痛むのに、なにも残らないわけないでしょ。

きっとそれは、化石みたいな形になってね、

死んで、最後に焼かれたあとに、誰もわからないけど、きっと何かの形になって、残ってるんじゃないかなって。

そしてわたしの化石は、人から見たらきっとずいぶん汚れてしまってるんじゃないなって、思うのね。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ