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《連載版》名探偵の友人は「迷」探偵?  作者: 吉川 由羅
第一章
8/15

管理人と『彼』

「か、管理人さん!?」


蓮と理乃は揃って仰天した。

会社の社長が住まうようなマンションだ。管理人は相当な富豪だろう。


「ど、どうしてここに?」

「大村とかいう刑事に呼ばれたんです。探偵の調査に協力してほしい、と。」

「大村刑事が?」


蓮は目を見張った。

(警察側の人間が協力してくれるなんて)


「とにかく。私は多忙な身なんです。話は手短にお願いしますよ。」


美久利は耳に垂れた黒髪を弄びながら、無表情で言う。

カーディガンの色とは異なり、本人の印象は凄く暗い。


「えー、では、まずあなたの事件当日の行動を教えてください。」

「その日私は一日中、管理人室にこもって作業をしていました。」

「………。」

「………。」

「…え、終わりですか?」

「ええ。」


美久利は「それが何か?」と言わんばかりに首を傾げる。

蓮は焦った。大村刑事が作ってくれた機会を無駄には出来ない。


「で、ではその時何か気づいたことはありませんでしたか。」

「それなら一つ。」

「え?」

「ドアのオートロックです。4時半頃に、急にガチャリと…」

「解除されたんですか。」

「はい。」


4時半。その時間はちょうど、琴乃さんが死体を発見した時間だ。


「ねえ蓮さん。」

「ん?」

「私、昨日大村刑事から聞いたんですけど。駆け付けた警察が現場に入ることができなかったから、警備員さんに解除してもらったらしいです。」

「ああ、なるほどそういう事か。」

「ちょっとお待ちください。」


すると、美久利が声を上げた。


「だとすると、変です。オートロックが解除されたのは、4時半と5時の、計二回なんです。」

「え、そうなんですか?」

「はい。私はてっきり、5時に警察の方が来られたと思っていたのですが。」

「4時半の方は?」

「警備員のミス、かと。」


蓮は考え込んだ。

(よく考えると、4時半ぴったりに警察が駆けつけて、警備員にオートロックを解除させるって可能なのか?いくら何でも速すぎる。とすると、警察が開いたのはもう一方の5時の方になる。じゃあ、4時半の解除は…)


「…理乃。」

「?」

「警備室に戻ろう。」

「え、どうしてですか?」

「どうやらもう一回、彼の話を聞いた方が良さそうだ。桜川さん、ご協力感謝します。」


蓮は理乃の腕を引いて、エレベーターに向かった。






「すみませーん!」


警備室の前で、蓮は叫んだ。

すると扉が重々しく開き、剛力が顔を出した。


「どうしました?私はもう事件について話したはずですが。」

「いいえ、あなたの事件当日の行動をまだ聞いていません。詳しく話してもらいましょうか。」

「い、良いですけど…」


剛力は渋々と言わんばかりに警備室から出てくると、フロントに蓮たちを案内した。


「で。私の行動でしたっけ?」

「はい。」

「私はずっと一人で警備室にいたんです。そこで防犯カメラの管理やら、何やらしていたわけです。以上ですよ。」

「あの、一つお尋ねしてもよろしいでしょうか。」

「はあ。」

「事件が起こった日、部屋のオートロックが解除された時間帯があったんですよ。」

「ああ、それは自分ですね。警察官たちがここににとんできて、開けてほしいと。」

「いいえ。そのことではありません。俺たちが聞きたいのは、もう一つの方です。」

「もう、一つ?」


剛力は顔をしかめて、蓮たちを見つめる。


「それは、一体どういうことですか?」

「知らないとは言わせませんよ。4時半頃に、解除されているんです。警察が来るよりも前の話です。」

「はあ。心当たりがありませんね。」

「嘘をつかないでください。オートロックが解除できるのは、ここだけなんです。」

「し、しかし…」

「ちなみに、4時半はちょうど琴乃さんが死体を発見した時間です。タイミングが良すぎるんじゃないですか?まるで、現場を見せつけるかのように。」

「う…」


剛力は唇を噛んで、蓮たちを睨みつける。


「さあ、どうですか!」

「き、きっとそれは他の警備員が…」

「いいえ、そんなはずがありません。あなたはさっきこう言ったはずです。『事件のあった日は一人で警備室にいた』と。」

「あっ……」


剛力は、完全に言葉を失った。


「もう言い逃れは出来ませんよ。認めてください。」

「う………。み、認めます。私が、オートロックを解除しました。」

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