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《連載版》名探偵の友人は「迷」探偵?  作者: 吉川 由羅
第一章
6/15

聞き込み

「さて、今日はどうしようか。」


翌朝、蓮と理乃は机を囲んで食事をしていた。

机の上にはロールパン、サラダ、パックのいちごミルクが二つ。どれも蓮が昨晩コンビニで買ってきたものだ。


「調査ですよ。決まっているでしょう?」

「いや、現場調査は一通り終わらせただろう?次は聞き込みとかかなーって。」

「聞き込み、ですか。」



いちごミルクをちゅーと吸い上げながら、理乃は考え込む。


「関係のある人物、ですよね?琴乃さんはもう聞いたし、どうします?警備員さんとかですかね?」

「警備員って、被害者のマンションの?」

「はい。」


理乃はそう言うと立ち上がり、ポンとベレー帽を頭にのせ、ジャケットを羽織った。


「さ、行きますよ。」

「その前に食器片付けなよ。」

「はーい。」


理乃はその場で回れ右をして、皿を重ねて持って行った。






「ここが、警備室ですね。」

理乃が大きく立派なドアを、まじまじと見つめている。


「こんなの二度とお目にかかれませんよ!」

「確かに、大きなドアだな。俺たちの事務所よりある。」


蓮はスマホを取り出し、一枚パシャリと撮影する。

すると、

「駄目ですよ。勝手に撮影しちゃあ。」


ぎくりと身をすくませ、振り返ると、一人の男がこちらを怪訝そうに見つめていた。


「あ、ごめんなさい。警備員さんにお話を伺いたくて。」

「はあ。私がそうですけど。あなた方、何者なんです?」

「探偵の、峰崎蓮です。こちらは、助手の佐伯理乃。」


蓮は理乃の頭を押さえて、お辞儀をさせた。


「探偵というと、あの社長さんの事件ですか?」

「はい。昨日から担当になりまして。」

「そうだったのですか。」


納得したように、警備員は頷く。


「あなたは、いつもここで警備をしているんですか?」

「ええ。」

「つまり、事件当日も?」

「はい。」


(これは重要だ)

蓮は言った。

「少し、お話を聞かせていただけないでしょうか。」






「ここでいいですか。」

「ご協力、感謝します。」


警備室の中の小さなテーブルに、蓮と理乃は腰掛ける。


「まず、あなたのお名前を教えてください。」

「剛力浩也と申します。」

「ごうりきひろや、と。」


理乃はいつも通りメモを取っていく。


「あなたが警備している間、怪しい人物を見かけませんでした?」

「怪しい人物ですか。あまり目につく人はいませんでしたね。」

「では、質問を変えます。その日被害者の部屋を訪ねた人物を全て教えてください。」


蓮はすらすらと質問していく。実を言うと、蓮は依頼人に怒られない対策として、時間があれば推理小説を開いているのだ。そのため、質問のバラエティーには富んでいる。


剛力は少し考え込んだ後、言った。


「あの日お越しになっていたのは、琴乃様ともう一人。」

「もう一人、とは?」

「誉様のお母さまです。」

「どうして、お母さんが?」

「私も少し不思議に思っていたんです。普段は滅多に姿を見せないお方が、どうしてあの日はここに来たのでしょう?」

「そのことについて、本人に直接尋ねはしなかったのですか?」

「ええ。私も尋ねようとはしたのです。しかし、なんというか…。ただ事ではない雰囲気が漂っておりまして。」

「というと?」

「すごく取り乱していて。部屋の鍵を振り回しながら、走って行ってしまったのです。」

「なるほど。」


蓮は頷く。理乃のペンを走らせる音だけが、警備室に響く。


「…さて。蓮さん。」

「ん?」

「被害者のお母さまのところ、行ってみましょう。彼女が取り乱した原因、この事件と無関係だとは思えません。」

「確かに、そうだな。」

「私、会えるんならどこまでだって行っちゃいますよ!」

「あ、探偵さん、お母さまなら…」


剛力が何か言おうとしたその時。

ポロロン、と着信音が鳴った。

見ると、大村刑事からの電話だ。蓮は通話ボタンを押した。


「もしもし」

『れ、蓮くん!助けてくれないか!?』

「お、大村刑事、何事です!?」

『現場に、侵入しようとしている、女が…』

『ちょっと、なに呑気にお電話しているんですの!?』

『えっ、ちょ、待っ…』


次の瞬間には、蓮のスマホは低い機械音を立てていた。


「切られたか…」

「あ、あの。」

「「?」」


蓮と理乃は、同時に剛力の方を向く。


「先程の女性の声、誉様のお母さまの声で間違いないと思います。ついさっき、お越しになられてましたし」

「え」


感情のない理乃の声が、空間を貫く。

そして蓮と理乃は、同時に叫んだ。


「「それを早く言ってください!!」」






マンションの階段を駆け上がり、被害者の部屋の前に着くころにはもう大変なことになっていた。


「このすっとこどっこい刑事!!さっさと通しなさいよ!私のボディーガードを呼びますわよ!」

「ここは事件現場なんです!一般の方は通せないんですよ!」

「私はこの事件の関係者なのよ!」


上品な身なりの女性が大村刑事に押さえつけられ、暴れていた。

しかし大村刑事の方がもう体力の限界らしく、肩で息をして汗を流している。


「大村刑事!」

「おお、蓮くんと、理乃くん!見ての通りだ、助けてくれ!」

「分かりました、任せてください!」


そう言ったか言わなかったか、理乃は女性に飛びかかっていった。

そしてその女性のみぞおちを、思い切りグーで殴った。


「やあっ!!」

「あっ」


女性の動きが鈍る。その隙を突いて理乃は、大村刑事を救出した。

女性は苦しそうにみぞおちを押さえ、ハアハアと息をしている。


「ちょ、理乃!警察の前で暴力は…」

「はあ、はあ…。こ、今回ばかりは許す。その警察を救ってくれたんだからな。」


荒く息をしながら、大村刑事は笑う。

理乃はその場で女性を見下ろし、言い放った。


「あなたの知ってること、全部話してください。」

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