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《連載版》名探偵の友人は「迷」探偵?  作者: 吉川 由羅
第一章
4/15

現場へ

その後、立ち話もどうかということで、5人は近くのカフェに場所を移した。

四つのコーヒー、一つのココアを注文したところで、蓮は切り出した。


「ではまず、あなたが知っている事件の事について話してください。」

「分かりました。」


琴乃は少し俯きながら、話し始めた。


「私、被害者…、誉の妹なんです。近くに住んでいることもあって、よく遊びに行ったりしていました。事件のあった日も、私はお兄ちゃんの家に遊びに行きました。4時ぐらいにマンションに行って、いつものように警備員さんにも挨拶しました。でも、その日はなんだかいつもと違って。何度チャイムを鳴らしても、返事が返ってこないんです。おかしいなと思ってドアに手をかけると、静かに開きました。そして部屋の奥を見ると…。」


そこで一瞬、琴乃は息を呑んだ。


「…見ると、天井からぶら下がった、お兄ちゃんが…。」

「!!」


蓮と理乃ははっと顔を見合わせる。賢人と流川はもう知っていたのか、真顔で聞いている。

すると理乃が、ぎこちなく賢人に話しかけた。


「け、賢人…さん。」

「ん。どうした、佐伯。」

「とすると、被害者は窒息死だったということですか?」

「ああ。死体解剖の結果、そうだと分かった。」

「ふむふむ、死因は窒息…と。」


理乃は素早くメモを取った。


「最初見たときは、自殺かと思いました。でも、お兄ちゃんが自殺する理由が思い浮かばなくて。それなのに、駆け付けた警察の方は自殺として調査を進めているんです。どうしても納得がいかなくて、今回依頼させて頂いた、というわけです。」

「なるほど、よくわかりました。辛いのに、ありがとうございました。」

「いえいえ。」


琴乃は柔らかな笑みを浮かべて、私たちにお辞儀をした。


「では調査に戻るとしよう、蓮。」

「そうだな。琴乃さん、ご協力感謝します。」


蓮は軽く礼をすると、カフェを後にした。






「皆さん、お疲れ様です。」


現場に戻ると、一人の刑事が蓮たちに向かって敬礼してきた。


「大村。ご苦労。」

「賢人、知り合いなのか?」

「ああ。こちら捜査第一課の大村刑事だ。」

「大村だ。君たちの話は綾小路殿からよく聞いている。仲良くしよう。」


大村刑事はそう言って手を差し出した。そして、蓮と握手をした。

(見た目は怖そうだったけど、良い人みたいだ。)

蓮は少し安心する。


「大村。ここの調査をしたいのだが。」

「それならもう許可を取ってあります。好きなだけ調べてもらって結構です。」

「それはありがたい。」


そう言うと賢人は蓮の方を振り返った。


「私たちができるのはここまでだ。後は自分たちで調べろ。これはお前の推理の力を試しているんだからな。」

「分かった。」


そして賢人は、流川を連れて去っていった。


「さて、どうしようか。」

「どうするって、現場を調べるんじゃないですか。ほら、行きますよ。」

「ちょ、理乃、引っ張らないで…」


そして2人は現場に足を踏み入れた。


「さあ、調査しますよー!」


理乃はやる気満々だ。賢人がいなくなったことで、いつもの調子に戻ったようだ。

まっすぐに部屋の奥に駆けて行った。


一方の蓮はというと、慎重に辺りを見回して、手がかりを確実に見つける作戦に出た。

玄関ドアの前で、ひとつひとつ調べていく。

すると、

「ん?」


蓮はドアを見つめて、小さく声を上げた。


「あの、大村刑事?」

「どうした?」

「このドアって、カードキーで開くんですか?」

「ああ。」

「それについて少し教えていただけないでしょうか。」

「もちろんだ。ここはセキュリティが万全で、不審な人物を確実に入れないように作られているんだ。特にこのドアは凄い。オートロックの機能がついているんだ。しかもこのドアを壊そうものならサイレンが鳴って、警官が飛んでくる。」

「しかし、この事件が起きてしまった。」

「事件、か。」

「え?」


蓮はそこで琴乃さんの言葉を思い出した。

『警察の方は自殺として調査をすすめているんです。』


(もしや、マズイこと言ってしまったのでは?)

蓮はハラハラしながら大村刑事の様子を伺う。


すると大村刑事は、なんと歯を出して笑った。

てっきり何か反論されると思っていた蓮は、ポカンとして大村刑事を見る。


「いいんじゃないか?そういう考え方も。」

「え。で、でも警察は自殺として考えているんじゃ…」

「だからと言ってその考えを押し付けはしないよ。まあ、頑張れ。」


大村刑事は大きな手を振って去っていった。


(大村刑事、やっぱいい人!)

そしてそれに感動する蓮であった。

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