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《連載版》名探偵の友人は「迷」探偵?  作者: 吉川 由羅
第一章
10/15

立証

「は、ははっ、どうせハッタリでしょ。そんなの、あるはずがない!」


琴乃は肩を震わせて、笑う。

あからさまに顔が引きつっている。


「…残念ですが。」

「!」

「あるんですよ。本当に。」


蓮は落ち着いた口調で、そう言う。


「まず、動機から説明していきましょう。あくまでも推測にすぎませんが。」

「だから、言ってるでしょう?私にお兄ちゃんを殺す動機はない。それが全てよ。」

「確かにその通りですね。あなたには被害者を殺す動機がない。」

「でしょ?なら…」

「ならば、他の人ならどうでしょうか。」

「は?」

「あなたは他の人に恨みを抱いていた。だからその人の心を深く傷つけるべく、お兄さんを殺害した。」

「そこまで言うんなら、聞かせてよ。その恨みを抱いてた人っていうのを。」

「簡単な話です。ズバリ、お母さまでしょう。」

「え…。」


琴乃はあからさまに動揺した。

(図星みたいだ)

蓮は攻めを続ける。


「お母さま自身の話を聞いていて分かりました。お母さまは極端にお兄さんをひいきしていたようですね。」

「……。」

「それと反対にあなたはお母さまから嫌われていた。そうですね?」

「…ふんっ、そうよ。」

「なら、ここに自然と動機が生まれます。あなたは、お母さまに恨みがあった。しかし、中学生の頃から離れて暮らしているため、いきなり実家を訪ねると怪しまれる。だから、あなたはこう考えたのです。『あの女の一番大切なものを奪ってやる』と。」

「いい加減にして!」


琴乃はいよいよ我慢の限界だったのか、声を荒げて叫んだ。

しかし、蓮は動じない。


「さて、これで動機が説明できました。次は証拠ですね。」

「う、嘘。あるはずがない。」

「どうでしょうかね、剛力さん。」

「えっ!」


完全に油断していた剛力は、突然の蓮からのご指名にびくりと体をすくませる。


「ど、どうして私に?」

「どうして?あなた自身が持っているからですよ。彼女の犯行を示す証拠を。」

「な、なんでしょうか。」

「まだとぼける気ですか。わかりました、説明させていただきます。」


蓮は理乃に目配せする。理乃はそれに気が付くと、手に持っているメモ帳を手渡した。


「えー、まず。剛力さんがこの事件にかかわっていることは明白です。」

「どうして?」

「剛力さんは最初に話を聞いたとき、事件当日にお母さまがマンションに来たという証言をしています。しかし実際は、お母さまはその時ウルグアイに出張しており、来るのは不可能だったのです。つまり、剛力さんのこの話は嘘ということになります。」

「あ…。」

「しかもこの嘘、もし現実だとしたらお母さまにとって圧倒的に不利ですよね?こんな嘘をつく理由、一つしか考えられません。剛力さんはあなたと繋がっている。」

「証拠はあるの?」

「まあまあ慌てずに、最後まで聞いてください。」

「ちぇっ。」

「ではそう仮定して話を続けましょう。琴乃さんは4時半頃に被害者の自宅に行き、被害者を絞殺。さあここで早速一つの疑問が生じる。あなたはどうやって部屋に侵入したのか。」

「だから、私は犯人じゃないの!」

「少し聞き方が悪かったですね。では、剛力さんに聞きます。琴乃さんはいつも合鍵を使ってお兄さんの部屋に入っているんじゃないですか?」

「琴乃様は、お兄様の勧めで合鍵を作っております。おそらく、それを使っていると。」

「そうですか、合鍵を。では、琴乃さん。今その合鍵を持っていますか?」

「そ、それは、その…。なくしちゃったのよ。」

「なくしちゃったんですか。」


蓮は意味ありげに笑うと、くるりと踵を返し、玄関の方に歩いて行った。


「ちょっと、どこ行くのよ!」

「合鍵のもとへ、です。」

「え…?」


蓮は振り向かずに言うと、扉を開けた。それを追うように理乃たちが続いた。






「ここです。」

「こ、ここは…。」


琴乃は言った。

「警備室…?」

「ええ。俺の予想が正しければ、ここにあるはずです。何もかも。」


蓮は剛力を先頭にして、警備室に入った。


「まずは、剛力さん。カードキーの使用記録を見せてください。1002号室の。」

「は、はい。」

「……。」


琴乃は黙って、蓮の背中を睨みつけている。


「…これですね。」

「ありがとうございます。…おや、おかしいですね。あなたが現場に来た4時半には、カードキーが使用されていません。」

「それは、オートロックが解除されていただけで…」

「それはおかしい。ドアをパッと見ただけでカギが開いているなんてわかるはずがない。普通なら一度カードキーをかざすと思いますが。」

「で、でも。」

「これはまるで…そう。オートロックがその時刻解除されていたことを知っていたみたいですね。」

「!!」


琴乃は動揺を隠しきれず、顔を真っ青にしてうめいた。


「そう。あなたは現に知っていたのです。オートロックが解除されていることを。もちろん、あなた自身が剛力さんに指示したのでしょう。そして、その際預けたんじゃないですか?合鍵。」

「あ…あ…」

「この記録に残ってしまったら、犯行がばれてしまう。そう思ったあなたは、住人に気づかれるというリスクを抱えながらも、オートロックを選択した。そしてカードキーの方は、剛力さんに渡して証拠を隠蔽しようとしたのです。」

「そ…、そんなの、言いがかりよ!」

「なら、今からここを調べても構いませんね?」

「…い」


琴乃さんはその場で膝から崩れ落ち、叫んだ。


「いやああああああああああっっ!!!」

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