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《連載版》名探偵の友人は「迷」探偵?  作者: 吉川 由羅
第一章
1/15

名探偵と、「迷」探偵

短編バージョンでの高評価、ありがとうございます(^▽^)/

というわけで、連載化します。

短編バージョンを読んでいない人は、そっちを読んでからの方が楽しめる…かも?

夜の東京の街を、「迷」探偵峰崎蓮は、助手の佐伯理乃と共に歩いていた。


というのも、彼はこの探偵人生で一度も依頼を成功させたことがない。一度も、だ。

だからこの日、蓮は探偵の仕事を辞めようとしたのだが、理乃に必死に止められてしまった。

そして、現在に至る。


「なあ理乃。」

「?」

「これ、偽物じゃないだろうな。」


そういって蓮は、一枚の新聞紙を取り出す。

それは理乃が机にしまっていた、新聞紙。これが、蓮を止めるために使った、理乃のネタだ。

そこには、一面に大きな記事が。


『天才名探偵登場!警察が唸るような難事件も一日で解決!』


「当たり前じゃないですか。用意する時間が、いつありました?」

「う。た、確かに。」


蓮は理乃から目を反らす。


「住所によると…、あ、ここですね!」

そんな蓮に微笑みかけながら、理乃はその天才名探偵の事務所に走っていった。




「こんばんは。」

自動ドアをくぐった途端に見知らぬ男に挨拶をされ、蓮と理乃は同時に体をびくりとすくませた。


「驚かせてしまい、申し訳ございません。」

「あ、あなたは?」

「私は流川湊と申します。この事務所の秘書を務めております。」


流川は、礼儀よくお辞儀をした。


「えーと、る、流川さん。この記事の天才名探偵の事務所がここだと聞いて、来たのですが。」

「はい。予約はしておられますか?」

「予約?い、いえ。」

「では、綾小路様のもとへはお通しできません。既に一年待ちでして。」

「「一年待ち!?」」


理乃と見事にハモる。


それにしても、と蓮は思った。

名探偵の正体はやはり綾小路だった、と。


「じゃあ、俺の名前を綾小路さんに伝えてください。」

「は、はあ。お名前は?」

「峰崎蓮です。きっと通してくれるはずです。」

「うーん…。」


首をかしげながら、流川は部屋の奥に消えていった。


「やはり、知り合いだったのですね。」

「うん。」


残された二人は、ソファーに腰掛けた。


「こいつとは幼稚園のころからずっと一緒だった。クラスも、全部一緒。」

蓮は新聞紙のイラストを指さして言う。

「でも、こいつの方が俺より才能があったんだ。あいつは陸上部のエース、俺は野球部の補欠。」

「それは、お気の毒に。」

「でも、学力だけは勝負できていた。あいつに、今回だけは負けたくないんだ。」

「…ほお。」

「…これもすべて知っていたうえで、新聞を用意していたんだろ。」

「はい。お母さまから、ちらちらと。」


理乃は無邪気に笑う。


すると、奥から流川が姿を現した。

蓮と目が合った途端、すごい勢いでこちらにやってきて尋ねられる。


「あなた方、いったい何者なんです!?」

「え。」

「綾小路様が予約していないお客様を通すなんて、初めてです!」

「…ぷっ。」


蓮は笑いをこらえながら、理乃と顔を見合わせた。



「綾小路様!お客様をお連れしました!」

「入れ。」


流川はそっとドアノブに手をかけ、静かに開いた。

「それでは、私はこれで。」


流川が去ったのを見計らい、奥に座る男、綾小路賢人は切り出した。


「やはり、お前だったか。」

「久しぶりだな、賢人。」

「まあ、座れ。」


賢人はソファーへと二人を促す。


「その女は?」

「佐伯理乃。助手だ。」

「ほお、助手?お前、何をしてるんだ?」

「探偵だよ。」

「探偵…?」


賢人の鋭い目が、大きく見開かれる。


「お前、また私を真似たのか?」

「真似たわけじゃない。そもそも、またじゃないし。」

「ほお。で?」

「今まではお前に全て負けていたが、今回ばかりは勝たせてもらう。それを言いに来たんだ。」

「勝利宣言、というやつか。」

「ああ。」


蓮が頷くと、賢人の怪訝そうな表情は、次第ににやけてくる。


「なにがおかしいんだ?」

「ふっ。実はというと、もう知っていた。」

「「は?」」


蓮と理乃は、驚いて顔を見合わせる。


「わ、分かってたって…」

「決まっているじゃないか。お前が探偵だってことを、だ。」

「えっ」


蓮は絶句し、何も言えなくなってしまった。

その代わりに、理乃が尋ねる。


「どうして、ですか。」

「知り合いだからに決まっているじゃないか。腐れ縁の蓮の職業くらい、知っておこうと思ってな。…蓮、お前噂によると、一度も依頼を成功させたことが無い「迷」探偵らしいな。」

「ぐっ。」


痛いところを突かれ、二人はすっかり黙り込む。

実に愉快そうに、賢人はそれを見つめていた。


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