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FoxBoxで異世界放浪記  作者: 風詩
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初めての魔物(改)

ナギに別れを告げた後、深い森の中をかれこれ1時間近く歩き続けていた。

セティによると森を抜けた先に大きな街があるという。

このまま何も無ければ日暮れ前に到着するだろう。

だがそれよりも気になっているのは森の中から聞き慣れない鳴き声がずっと離れない事。

鳥とも野犬とも異なり、ゴフゴフという響くような声。

一応、ここに来る前にナギから刀剣術の技能を授かっては来たが、異世界へ来て早々に魔物と戦うのは勘弁して欲しいものだ。

そんな情けない考えを抱きながら腰に刺した刀の柄に触れると不思議と手になじむ。

軽く刀を抜くと、銘が掘られていない事に気が付いた。

折角だから、こいつにも名前を付けておくかな。

狐に貰った刀か…、それなら「狐徹コテツ」というのはどうだろう。

うん、悪くない。

今日からお前の名は「狐徹」だ!

柄にもなく初めて手にする刀に浮かれていると、急にセティが立ち止まり毛を逆立て茂みの奥を警戒しだした。


「何かいるのか?」


「気を付けて!何かが凄い勢いで近づいて来てるよ!」


確かに茂みの奥から地響きを立てながら何か巨大な物が近づいて来ている。

慌てながらいつでも刀を抜けるよう身構えていると、茂みを押し退け巨大な猪が姿を現した。

体長は4メートルと優に超えるだろうか、口からは鋭く大きな牙が4本も突き出ている。

待て待て!こんな化け物猪、某有名なアニメの中にしかいないはずじゃなかったのか!?

一体どうする?セティを担いで逃げられるか?いや、無理だ!逃げられないなら、やるしかない!!


「セティ、離れてろ!」


俺の身体は無意識の内に動いていた。

突進して来る猪に向かって走り出し紙一重で躱した後、首を一太刀で刎ねていた。

頭部を失った猪の身体はフラフラとよろめきながら、地面に倒れ二度と動き出す事は無かった。

・・・今のは一体どういう事だ?

身体が勝手に動いたぞ?

それにあの巨体を一刀両断するなんて到底、初めて刀を持った人間に出来る芸当ではない。

これがナギから授かった刀剣術という技能の力なのか。

だとしたら魔物と戦ううえで頼りに力だが、それよりもこの高揚感は何だ?

魔物とはいえ俺は初めて生き物を殺してしまった。

それなのに何も感じないのは何故だ?


「ねぇ、大丈夫?」


「あ、ああ。何でもない」


駄目だセティを不安にさせる訳にはいかない、考えるのは止そう。

大事なのは力の使い道。

俺が道を誤らなければ、きっと大丈夫さ。

気持ちを落ち着かせていると、セティが先程の猪をじっくり調べていた。

死体を見慣れているのだろうか?

狐とはいえまだ幼い子供なのに随分と肝が据わっているな。


「移動しよう。血の匂いを嗅ぎつけて他の魔物が近寄って来るかもしれないからな」


「待って。多分これ、ワイルドボアっていう魔物だよ」


こちらに来る前、セティはナギを通して事前にこの世界の事を調べて来たという。

目の前に転がっているワイルドボアとかいう化け物猪は、一般人には到底倒す事の出来ない強い魔物だそうで、毛皮や牙が武具の素材に、肉は高級食材で魔石も取れるそうだ。


「つまり俺は、そんなに強い魔物を一撃で倒した訳だ。ははは、これ夢じゃないよな?」


「残念だけど現実だよ。それより猪を異空間収納アイテムボックスに入れて持っていこ。街で売ればお金になるって聞いてるからね」


「なるほどな。だったらここに捨てていく理由は無いな」


魔物と遭遇しただけでなく、その素材を売って金に換えるだなんて、いよいよファンタジー感が増して来た。

それに魔石は箱庭の動力となると言っていたから、売らずに取っておくとしよう。

尚、魔物の死体は冒険者ギルドに持ち込むと、有料で解体してくれるという。


「ギルドって事は、つまり冒険者がいるんだな?」


「うん。お使いから護衛、魔物討伐まで色々な仕事を受けてくれる人達みたい。それにギルドで登録すれば身分証代わりになるって聞いてるよ」


「そりゃ俺達からしたら都合が良い話だ。街に着いたら登録しておこう」


猪の死体を異空間収納アイテムボックスに放り込み、頭も一応持って行く事に。

収納するには触れる必要があるのだが、まだ生温かい。

改めて生物を殺した事実を実感させられたが、こんな所で躓いている暇は無い。

気を取り直し出口を求めて歩き続けていると、ようやく視界が開けて来た。

森を抜けた先には見渡す限りの平原が広がっており、その先には高い城壁に囲まれた大きな街が見える。

早速、街に向かって歩き出そうとしたが、ここである事に気が付く。

街に入る際、セティの事をどう説明したらいいんだ?

ペットと言ったら本人も気分が悪いだろう。

それにこの珍しい銀の体毛を目当てに悪い輩に攫われるような事にもなれば見世物小屋に売り払われてしまう。

いや、最悪の場合、狐鍋にされるんじゃないか!?

色々な不安が頭をよぎっていると、当の本人は不思議そうに俺の顔を覗き込んでいた。


「どうかしたの?」


「それなんだがな、セティの事をどう説明したもんかと・・・」


カクカクシカジカ説明中


「それなら心配いらないよ。最初から街に入る前に姿を変えるつもりだったからね」


姿を変える?

意味が分からず見ているとセティの身体が淡い光に包まれ、次第に大きくなったかと思えば人間の姿へ変化していく。

腰まで伸びた銀色に輝く美しい髪に瞳の色は空のように澄んだ青、そして美少女といっても差し支えの無い整った容姿、歳の頃は10~12歳といったところだろうか。

正直言って、凄く可愛い。

しかし、あれは尻尾か?

よく見たら頭に獣耳まであるじゃないか。


「セティ、耳と尻尾がそのままだぞ」


「大丈夫。この世界には亜人族って言われている様々な種族の人達が住んでいるからね。一応、全部隠す事も出来るけれど、集中しないといけないからあまりやりたくないの」


なんでもこの世界には、人族だけでなく獣人やエルフ、ドワーフ、魔族、天翼族、他にも妖精や人魚、竜人など数多の種族が住んでいるという。

いずれそんな彼らとも接触する機会があるだろうから、異世界好きな俺としては楽しみが増えた。

何はともあれ、これで気兼ねなく街に入る事が出来る。

刀も好きですが、個人的には鉈とバールが大好きですね。


それに加え、フリントロック銃が4丁あればいう事ありません(*´ω`*)b

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