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FoxBoxで異世界放浪記  作者: 風詩
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異世界へ旅立つ・其の2(改)

「まだ少し心許ないのう。じゃが、流石にこれ以上技能を授けるとなると妾の力が…」


もしや、スキルを授け過ぎて後悔しているのだろうか?

未知の世界で生きる上で最低限の技能は授かったとは思うが、可能ならどうしても欲しい能力がある。


「贅沢を言うつもりは無いんだが、出来れば健康な身体が欲しいな」


「・・・随分と庶民的な願いじゃのう。そんな事で良いのか?」


「健康は何よりも大事だろ。向こうで変な病気になんてかかりたく無いし、効くかどうかも怪しい呪い師やヤブ医者の世話にはなりたくないんだよ」


「わはは、正論だのう。相分かった、その願い叶えてやろう。じゃが、これ以上は流石に問題が出るやもしれん。後は妾のヘソクリから支度金を用意するしかないのう・・・」


ヘソクリって…。

でも、金が貰えるというのはありがたい。

見知らぬ土地に無一文で行くとなると、宿に泊まるどころか食事すら出来ないからな。


「さて、行く前に何か聞いておきたい事はあるかの?」


「娘さんの修行の旅に同行しろって事だが、具体的に何をしたらいいんだ?」


「妾の娘を護ってくれさえすれば良い。後は其方の好きに異世界での生活を愉しんでくれて構わぬぞ」


修行の内容は本人が分かっているそうなので、必要に応じて手伝ってくれればいいという。

つまり俺の主な仕事は娘さんの障害となるモノを排除する事。

動物さえ狩った事の無い俺にそんな真似が出来るか不安だが、どうしても無理そうな相手と遭遇したら逃げるしかないな。


「其方は異世界について詳しいようだのう。修行の旅とはいえ我が娘はまだまだ子供、良ければ色々な事を教えてくれると有難い」


「小説やゲームの知識が役立つなら、お安い御用だよ」


「ふふ、宜しく頼むぞ。さて、そろそろ時間じゃが、別れを告げたい相手はおるかの?」


「家族はいない。だから大丈夫だ」


既に両親は他界しており未練など無い。

そう答えると、俺の身体が光に包まれていった。

この瞬間、二度とこの世界には戻れないと悟り、静かに別れを告げた。

そして到着したのが、この深い森の中・・・という訳だ。

先程まで神社にいたのに、痛みも無く一瞬で到着出来るとは予想外だったな。

辺りを見渡していると、頭の中に先程の声が響いて来る。


「どうやら無事に到着したようじゃのう。身体の具合はどうじゃ?不具合が無ければ良いが…」


そういえば技能の他に、若返らせてくれると言っていたな。

都合良く近くに流れていた小川で自分の姿を確認してみると、そこには数十年前に鏡で見た若かりし頃の自分が映っていた。

嬉しくて軽く飛び跳ねてみると、身体が異様に軽い。

シャツを捲って腹を確認してみると運動不足でたるんでいた贅肉が消え、腹筋が見事に割れている。

若い時、これ程見事なシックスパックを持った記憶は無い。

もしかすると、気を効かせて身体能力を強化してくれたのかもしれないな。


「では、技能の確認からじゃ。まずは異空間収納アイテムボックスを使ってみるが良い」


使い方は至って簡単。

頭の中で袋から物を取り出すイメージを思い浮かべながら、目の前の空間に手を伸ばすだけ。

実際にやってみると自分の手が目の前の空間に飲み込まれていった。

試しに落ちていた小石を入れてみると、自然と頭の中に何が収納されているのか瞬時に理解する事が出来る。

同時に異空間の中には、何やら麻袋と硬い棒のような物が入っているのが分かった。

確認の為に取り出してみると一振りの刀と見慣れぬ硬貨、そして黒光する石が入っていた。


「日本刀じゃないか!模造刀なら見た事あるが、本物は一味違うな…」


「その刀には妾の神力が込められておる。切れ味、耐久度も普通の刀とは一線を画す名刀じゃよ」


「普通の刀じゃないって事か。ありがたく、使わせて貰うよ。」


早速、腰のベルトに差しておくことにしよう。


「この硬貨はこっちの金だな。金貨に銀貨と、これは銅貨か?」


「他にもいくつか種類はあるが、それだけあれば暫くは困らんじゃろう」


「助かるよ。こっちの黒い石は、もしかしてこれが魔石って奴か?」


「左様。魔力が結晶化したもので大きければ大きい程、大量の魔力を含んでおる。心臓の辺りに埋め込まれておる故、魔物を倒した際は必ず抜き取っておくのじゃ」


「倒したら勝手にドロップする訳じゃ無いのか。そこはゲームと違って普通なんだな」


「箱庭の動力には必要不可欠なもの。強力な魔物程、大きな魔石を持っておるから頑張って倒すのじゃ」


「まだ来たばかりなんだから無茶言わないでくれ・・・」


最後に「狐の箱庭」の確認だが、大まかな機能は以下のようになる。


※スキル:狐の箱庭

狐の箱庭開拓方法

1)箱庭のメニュー画面に現地のお金を入金後、拡張及び選んだ建物を任意の場所に建設する事が出来る。

また、建物の配置は箱庭のメニュー画面から自由に再配置が可能となる。


2)電力及び上下水道用の動力源として魔石が必要となる。


3)箱庭の扉を設置した際、外部の者を招き入れる事が出来る。

また、使用者の許可を受けた者は扉を閉じたとしても、そのまま中に居残る事が可能。


4)箱庭のメニュー画面より、異世界に存在する店舗から品物を取り寄せる事が可能となる。

また、テナント契約を結ぶ事で箱庭内に店舗を設置出来るようになる。


「なるほど、これは便利そうだ。つまり、ある程度の金と魔石さえ確保出来れば、一生引き籠る事も可能って訳だな」


「有り体に言えばそう言う事じゃが、そうなってもらっては困るぞ?」


「じょ、冗談だって。そういや、まだ名前を聞いてなかったな」


「おや、それは失礼をしたのう。妾の名はナギという」


「世話になったな。これなら何とかやっていけそうだよ」


架空の世界だと思っていた異世界に連れて来てくれただけでなく、こんなに便利な能力を授けてくれたのだから、ナギには感謝の言葉しかない。

これだけ優遇して貰った以上、何としてでも快適な生活環境を整えこの世界を満喫しなければ失礼に当たるってもんだ。


「それで、この子がナギの娘さんか。俺はカルマっていうんだ、今日から宜しく頼むよ」


「は、はい!これか…ら、よろ、よろしくお願い…」


「はは、これから一緒に旅をする仲だ、堅苦しいのは抜きにしよう。すぐには無理かもしれないが、もっと気軽に話してくれると嬉しいな」


「・・・うん、分かった。宜しくね」


「おお、可愛い・・・」(なでなで)


あまりにも可愛かったので、つい頭を撫でてしまった。

すると頭の中では、ナギの怒声が響き渡る。


「こ、これ!いきなり妾の娘を撫でるとは、気安いにも程があるであろう!!」


「す、すまん。つい、可愛くてな…。それで、君の名は?」


「その子にはまだ名が無くてのう。そこで、お主に名付けて欲しい」


「おいおい、それは流石に母親の役目だろ?」


「それが、そうもいかんのじゃよ」


ナギが名付けをしてしまうと大量の力を娘に注ぎ込む事になるのだそうだ。

その失った力を回復させるには気の遠くなるような長い時を要する為、魔力が溢れるこちらの世界で名付けした方が都合が良いのだという。


「ちょっと待てよ?ここで俺が名付けしたら、今度は俺が力を失う事になるんじゃないのか?」


「心配には及ばぬ。妾には特別な伝手があってのう。其方らをそちらに送った際に、名付けようの力を其方に授けて貰ったのじゃ」


「特別な伝手?」


「その内、其方も会う事になるじゃろう。それよりも早く妾の娘に名を付けてやっておくれ」


「分かった。しかし名前か…、何がいいだろ?」


本人に希望はあるかと尋ねると、俺に任せると言ってきた。

ペットすら飼った事が無いってのに、いきなり名前を付けて欲しいと頼まれても困る。

悩んでいると、森の中から心地よい風が流れて来る。


「・・・セティ。フォルセティっていうのはどうかな?」


「フォルセティ…うん、良い名前だと思う」


「よし、今日から君の名はフォルセティだ」


改めて名を口にすると急に身体が怠くなるのを感じ、子狐が淡い光に包まれていった。

何事かと慌てていると、この世界に名が認められたのだと説明を受ける。


「成功したって事で良いんだよな?」


「ご苦労。和名でないのが気になるが、良き名を貰ったのう」


「北欧神話が好きでね。でも少し長いから、普段はセティって呼ぶよ」


「セティ…うん、それでいいよ」


「早々に我が娘を愛称で呼ぶとは何事じゃ!せめて、さん、を付けぬか!」


「おいおい、今から一緒に旅をする仲なのに、年下にさん付けはないだろ」


「しかし、それでは・・・」


「それじゃ私は、貴方の事をカルって呼ぶね」


「・・・え?」


割と気に入っている自分の名を、子狐に略される日が来るとは思いもよらなかった。

とはいえ、長い旅になるかもしれないのだから、それくらい構わないか。

無事に名付けが終わると、ナギから別れの時が来たと告げられる。

俺達を別の世界に送っただけでなく、特殊な技能などを授けた事もあって力を使い過ぎたそうだ。

暫くは語りかける事も無理なので、後の事は全て俺に任せるという。


「セティよ、この男の言う事を良く聞き修行に励むのじゃぞ」


「はい。お母様もお元気で…」


「カルよ、妾の娘を頼んだぞ」


「ああ、任せてくれ」


すぐには無理だろうが、あの様子なら力が回復次第すぐに話し掛けて来るだろう。

改めてセティに宜しくと声を掛け、俺達の冒険の旅が幕を開けた。

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