ダンジョン攻略・其の6
途中、休憩を挟みながら襲って来る敵を薙ぎ払い、たまに箱を見つけては空けていく。
何だか、初期の迷宮探索ゲームを、過剰な戦力で攻略している気分になる。
暫く進むと、少し広めのフロアに到着し、魔法陣が描かれた台座を発見する。
「いつもなら、ここでもっと稼いでいく場所なんだ」
「カル達と一緒にいると、良い意味で暇ね」
「この際だから次の階層に進まないか?」
「そうね。セティちゃん、ずっと寝ちゃっていますし」
セティは途中から暇過ぎて、ハクロウの上で器用に眠っているのだ。
確かにこれが続くのは、退屈過ぎるね。
「それじゃ、もっと次へ進もう」
魔法陣を起動し、14階層へ。
14階層ではコボルト、オークの上位種に加え、ゴブリンの上位種まで現れるようになった。
ようやくダンジョンらしくなってきたようだが、セティは相変わらず寝ている。
「そろそろボス部屋に到着するぞ」
「前に来た時は、5日くらい掛かったのにね」
「たった半日で来る事が出来るなんてな思わなかったな」
「カルさん達だけなら、もっと早いかもしれないですね」
確かにこれまでの強さから考えると、
15階層までならノンストップで駆け抜けたかもしれない。
しかし、こうやって臨時パーティを組むのは新鮮で楽しい、これはこれで良い経験だ。
ボス部屋の前で自分達の番を待ち、中に入ると…。
「はは、これはまた随分と敵が多いな」
部屋の中にはコボルトキング、オークキング、ゴブリンキングに率いられた、
ちょっとした軍隊が待ち構えていた。
「手分けして倒していくか。アルガス達はゴブリンキング、セティはオークキング、俺はコボルトキングをそれぞれやろう」
「了解。ハクロウ、いくよ!」
「わ、分かった!俺達だってやれるって事を見せてやる!いくぞ、みんな!!」
「アウラン、お前はアルガス達を護ってくれ、頼むぞ」
「ワォン」
今回は相手が3つに分かれている事もあり、それぞれ分担して倒していく。
俺の相手はコボルトキングとその軍勢。
素早さと連携が少々厄介ではあるが、個別に対応していけば、そう大した相手では無い。
狐徹を抜き、襲って来る相手の首を刎ねていく。
それにしても、以前倒した時より相手の動きが遅く感じるのは、
それだけ自分の方が素早くなったという事だろう。
襲い掛かって来る敵を、次から次に斬り倒し、残るはコボルトキングのみ。
大きな斧を振り下ろしてくるが、余裕で回避し、そのまま首を両断する。
セティはハクロウに乗ったまま、魔法を放ったかと思うと、複数の竜巻を発生させる。
オーク達は逃げまどうが、竜巻に引き寄せられ文字通りひき肉に変わっていく。
これが外であれば血の海になりそうなものだが、
ここがダンジョンであった事が幸いし、落ちてきたものはドロップ品の山だった。
頼むから、それを地上ではやらないでくれよ?
アルガス達はというと、ゴブリン達を見事な連携で倒している。
しかし、相手の数が多いせいで何度も攻撃を受けていたようだが、
アウランが4人に結界魔法をかけているようで、攻撃が届く事は一度も無かった。
「俺とレイチェルで奴の動きを止める!マリウス、後は任せた!」
「分かった!」
「了解!」
アルガスとレイチェルがゴブリンキングを左右から攻撃してバランスを崩し、
そこにすかさず、マリウスの大剣が振り落とされる。
ゴブリンキングは断末魔を上げながら崩れ落ちていく。
「はぁ、はぁ、やったぞ!みんな平気か?」
「こっちは無事。カルとセティちゃんは、息も切らしてないみたいだけど…」
「でも、不思議だよな?何であれだけ攻撃されて俺達は無傷なんだ?」
「ええ、何だか不思議な壁にはじき返されていたように見えましたわ」
「アウランに礼を言ってくれ。ずっと4人を結界魔法で守っていてくれたんだよ」
「ワォン」
「け、結界魔法ですって?そんな希少な魔法を使えるなんて、でも、その子の種族を考えたらありえるのかしら?でもそんな事、聖書には載っていなかったし、うーん」
カミラがアウランの魔法について唸っているようだが、使えるものは仕方ない。
「何にせよ、俺達はアウランに守られていたって訳だ」
「ありがとう、アウラン」
「お前のおかげで助かったよ」
「ワォン」
その後、手分けしてドロップアイテムをかき集め、15階層へと進んで行く。
「カル、そろそろ一回休まないか?恐らく地上では夜になる頃だ」
「そうなのか?全然気が付かなかったよ」
「私は全然平気だけど」
セティは14階層のボスまで、ハクロウの上で寝ていたからまだまだ元気だ。
「お腹も空いたし、さっきの戦いで武器も損傷しているから修理しないとね」
「俺はもう、腹が減って動けねぇよ」
「ふふ。無理をしても良くありません。休憩所も近いですから、休んで行きましょう」
「そうだな。それじゃ案内を頼むよ」
4人を見ると、負傷はしていないようだが既に疲労が溜まっている。
いつもは二人で旅をしているから、配慮が足りなかったと反省する。




