修行開始
戦神様に修行のアドバイスだけでも貰えたらと思っていたのだが、
異世界の酒の力で一気に愛弟子にしてもらえたうえ、
同時にセティも薬神様に修行をしてもらえる事になった。
お互い神様に修行してもらえるなんて凄い事だが、一体どんな修行をするのだろう?
※カルの修行
修行開始から一日目
「良いか、儂らが修行してやれるのは一週間じゃ。その間に強くなるのじゃ」
「は、はい!お願いします」
「良い返事じゃ。では初めに・・・走れ」
「・・・は?走れ?」
耳がおかしくなったのかな?今、走れって言ったよね?
走るだけなら別に、戦神様は要らないんじゃないか?
「この戯け者!!儂が普通に走らせる訳が無かろう」
「それじゃ、何かしながら走るんですか?」
「フフフ・・・お主にはこれを着てもらうぞ」
「これは…Tシャツ?」
戦神様が手に持っているのは、どう見ても普通の黒いTシャツだ。
これを着たからといって何か変わるのだろうか?
しかし、Tシャツを手渡された瞬間、この修行の意味を即座に理解する事になる。
「うおっ!?…お、重い!?」
「特別な糸で編まれた物じゃ。重さは100キロある」
「ひゃ、100って俺より重いじゃないですか!!こんなのどうしろと・・・!?」
「着て、走れ」
自分より重い物を着て走れって、どの漫画の修行方法だよ!
「尚、儂が良いと言うまで走り続けるのじゃ。さもなくば、このハンマーが飛んでくるぞ」
戦神様が手に取ったハンマーは、何やら禍々しい気配を放っている。
「・・・マジですか?」
「マジじゃ。さぁ行け!5-4-3-・・・」
「ヒ、ヒィィィ!?」
急ぎ上着を脱ぎ棄て、戦神様のTシャツを着て走り出す。
重い!とてつもなく重い!!
しかし、ナギから肉体を強化されている為か、速度は遅いが何とか走る事が出来る!
「ほぉ、やれば出来るではないか。ほれ、箱庭の中をひたすら走り回るのじゃ」
「は、はいい!!」
こうして戦神様の修行、一日目が始まった。
◇◇◇
※セティ
修行開始から一日目
・・・カル!?
今、カルの叫び声が聞こえたような気がするけど…きっと気のせいだよね。
「どうかしましたか?セティ」
「ううん。多分・・・気のせい」
カルは大丈夫、この世界に来てから強い魔物だって倒してきたんだから。
ただの修行くらい、なんてことないよ、うん。
「あれ?薬神にセティ?」
「丁度良い所に。あなたもセティの修行に付き合ってくれませんか?」
「面白そうだから構わないよ。それで、カルはいないの?」
「彼は今、戦神が修行をつけていますよ」
「うわぁ…それはご愁傷様・・・」
カル、きっと大丈夫だよね!?
それに私の修行って何をするのだろう、何だか怖くなってきちゃったよ。
薬神様に連れられてきたのは、旅館の敷地内にある私の製薬所だった。
「さあ、貴女には私が自ら調合の技を伝授する事にしましょう」
「それじゃ私は、魔法の使い方を教えたらいいのね?」
「そうですね、午前と午後で分ける事にしましょう」
私の修行の方は、何だか普通で良かった。
カル…ハイポーションは一杯あるから、頑張ってね。
◇◇◇
※カル
修行開始から2日目
※あれから丸一日が経過する
「そこまで!よくぞ走り切った。8回程ハンマーを投げたが、お主良く死ななかったのう」
「ひ、必死で避けましたからね…」
何度か限界が来て足を少し止めた瞬間、恐ろしい速度でハンマーが飛んできたのだ。
あんな物食らったら一発でミンチになっていたぞ。
そして結局、このクソ重いTシャツを着たまま24時間耐久マラソンをやらされたよ。
既に足は棒になっており、これ以上一歩も動くことが出来そうに無い。
「多少疲れたようじゃな。では、これを飲むがいい」
渡されたのはただのヒールポーション一本。
栄養剤じゃないんだから、こんな物で疲れが取れる訳が無いのだが、
水分補給にもなるので、ありがたく一気に飲み干す。
うん、肉体的なダメージが大き過ぎて全く効いた気がしないよ。
「よし、元気になった所で次の修行に入る」
「・・・はい?えっと、休憩は?」
「今が休憩時間じゃが?」
「デスヨネ」
24時間走り続け、休憩時間約3分。・・・何て優しい世界なんだろう…。
「今の走りでお主は持久力を手に入れた。そこで次は上半身を鍛えてもらう」
「上半身・・・懸垂でもするんですか?」
「察しがいいの。まぁ似たようなものじゃ」
懸垂か。若返り強化された今の肉体なら20回くらいは余裕だろう。
「では、お主のスキルを使わせてもらうぞ」
すると、地響きと共に箱庭の地形が変わっていき、目の前の地面が隆起していく。
その結果、巨大な断崖絶壁が姿を現した。
崖の高さは100m以上あるようだが、まさか箱庭のスキルを使ってこんな事が出来るなんて…。
「次の修行はこれを使う」
「・・・この崖をどうしろと?まさか、登れっていうんじゃ・・・」
「良く分かったの。察しが良くて助かるわい」
「は、はは…」
次はこの断崖絶壁を登る事で、上半身を徹底的に鍛える修行らしいが、
まさか山岳装備も無しに、ロッククライミングをやれという事なのだろうか?
幸い突起物は沢山あるから、しっかり掴めば多少は登れるかもしれないが…。
「・・・何をしておる?さっさと上まで登らんか!」
そう言って戦神様は、愛用のハンマーを肩に担ぎこちらを笑顔で見ている。
まさか、ここでも止まったら投げる気か!?
1日目の恐怖が蘇り、慌てて断崖を登っていく。
下を見るのが怖い!高い事も怖いのだが、それよりも戦神様が怖い!!
身体能力が上がっているせいで、何とか登る事が出来る、これならイケる!?
しかし、戦神様の修行はそんな甘いモノでは無かったよ。
※ドガーン!!
「!?」
戦神様がハンマーを振り上げ、目の前の崖そのものを殴り始める。
その一撃は重く、崖に伝わる振動で今にも岩を掴んでいる指が外れそうになる。
しかも、質が悪い事に何度も不定期に崖を殴っているじゃないか。
不味い、このまま振動が続くようなら、そのうち確実に落ちる!!
振動の合間を縫って、ひたすら全力で崖を登る。
15分後、自分でも驚きだが、何と頂上まで登りきる事に成功する。
人間死ぬ気になれば何とかなる・・・のか!?
「ワハハ、良く登り切ったではないか、偉いぞ」
「な、何て無茶な事するんですか!本当に死ぬかと思いましたよ!!」
「そうじゃな。次は死ぬかもしれんな」
「・・・へ?」
※ドガッ
「ギャァァァァ!!」
あのクソ爺!!俺を崖から蹴落としやがったぁぁぁぁ!!
修行はまだまだ続く。
あ、暑い!
雨が多い夏だったとはいえ、まだまだクーラー無しでは生活出来ません。
熱中症には十分お気を付け下さい。
水分補給とカリカリ梅がお勧め(´・ω・)b
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