表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
FoxBoxで異世界放浪記  作者: 風詩
130/603

祝勝会

カリュブディスを無事討伐した事で、急遽宴が催される事になった。

一度箱庭に戻り、必要だと思われる物をいくつか用意し準備が終わるのを待っていると…。


「セティ、ここにいたんだね。ちょっと付いて来てくれる?」

「何処に行くの?」

「折角の宴だからね、着替えようと思って。カルさん、セティを借りて行きますね」

「ああ。行っておいで」


セティはアイピに連れられ、家の方へ歩いて行った。

どんな格好をしてくるのか、ちょっと楽しみだね。


「カルさん、ここにいましたか」

「ズクシ、どうかしたか?」

「調理をしている者から、例のショウユという調味料を分けて欲しいと言われまして…」

「丁度良かった、それ以外にも良さそうな物を見繕って用意しているよ」

「本当ですか?では、調理場の方へ来て頂けますか?」


ズクシに案内され、城の中にある調理場へとやって来た。

中では多くの女性達が、様々な魚介料理を作っている所だった。


「あら、ズクシさん。どうかしましたか?」

「カルさんが例の調味料を持ってきてくれたんですよ」

「まぁ、うちの旦那が言っていましたよ。魚の切り身に付けると、凄く美味しくなる黒いソースがあると」


この女性は屋台の親父さんの奥さんらしく、旦那さんから醤油の話を聞いているようだ。


「それじゃこっちへ来て、使い方を是非教えて。みんなー、こっちへ来て頂戴」


人魚の女性陣に囲まれながら、持ってきた調味料の使い方を教えて行く事になった。

魚のアラ赤出汁、味噌汁の作り方、醤油を使った煮付け料理など、知っている限り伝えていく。

初めは黒いソースに懐疑的だった女性陣だったが、

刺身にちょっと付けて食べてもらうと、目の色を変えていたのが面白かった。

醤油も味噌も保存が効くし、城の倉庫にでも保管してもらうといいかもね。


使い方を理解した女性陣は、俄然やる気を出し料理作りに集中していたので、

これ以上は邪魔になると思い、ズクシと一緒にその場を退散し会場へ戻る事に。

すると、既にテーブルや椅子などが用意され宴の準備は整いつつあった。

自分達の仕事が終わった男連中は、会場でその時を待っていた。


「そうだ。一応酒を持ってきたんだが、人魚って酒は飲めるのか?」

「もちろんです。人族との交易の半分はお酒が大半を占めていますからね」


どうやら人魚族はかなりの酒好きのようなので、周りの男連中に手伝ってもらい、

用意しておいた様々な酒をテーブルに並べていってもらう。

見た事もない異世界の酒を目の前にし、男達は宴が始まるのを今か今かと待っている。

すると、女性陣が作った料理が次から次へと運ばれて来る。

女王もこちらへやって来たので、そろそろ宴が始まりそうだ。


「カルさん、お待たせしました」

「お、来たか。丁度始まる頃だ…ぞ?」

「・・・お待たせ」

「・・・セティ、なのか?これはまた・・・」


セティは貝殻や珊瑚を使った装飾を身に着け、アイピと同じように人魚の衣装を身に着けていた。

普段とは違う格好をしているせいで、新鮮でとても可愛らしい。

きっと母親のナギがこの場にいたら、可愛さのあまり発狂してしまうかもしれない。


そうこしていると宴の準備が整い、女王からの挨拶が始まる。


「皆さん、この度はカリュブディスの討伐、本当にお疲れ様でした。私達の同胞アイピが連れて来た新たな友人、カル様、セティ様のご助力もあり、幸いにも犠牲者が一人も出る事はありませんでした。海を統べる海王の妻であり、この街の代表として深くお礼を申し上げます。ささやかなもてなしではありますが、どうぞ心ゆくまで楽しんで行って下さい。それでは皆、盃を・・・母なる海に、感謝を!」

「「「感謝を!」」」


女王の乾杯の音頭と共に、宴が開始される。

ある者は料理に舌鼓を打ち、ある者は酒に酔い、

そして、人魚達の奏でる歌声が町中に響き渡り、宴は夜遅くまで続く。

深海の底で人魚達と共に宴を楽しむなど、少し前の俺達には考えもしなかった事だ。

あの時、早々に街を後にしてアイピに出会わなければ、この場にはいなかっただろう。

バクナワにカリュブディス、あんな化け物が残り5体。

海王はどこかで戦っていると言っていたが、他でも封印された魔物が活動しているのかもしれない。

最初は魔人族、次はグライアイという魔女達が裏で暗躍をしていた。

もしかすると、他の地でも同じように、裏で何かが蠢いている可能性がある。

異世界に来た理由の一つはセティの旅の手伝いだが、助けられる命があるのなら助けたいと思う。

だが、その為には今のままではダメだ。

結局、一人ではカリュブディスを倒す事は出来ず、セティの力を借りなければ不可能だった。

次も同じような強大な敵と遭遇した時、それがもし複数だった時の事を考えると

今以上に、強くなる方法を考えていく必要がある。

だけど、素振りをする程度じゃ意味が無い。ここは一つ、あの人に相談してみるか?

そんな事を思いながら少し離れた場所で、一人酒を飲んでいたのだが…。


「カルさん、ここにいたんですか」

「考え事なんて珍しい。どうしたの?」

「たまにはな。料理は美味しかったか?」

「うん、赤出汁が最高だったよ」

「いつもより凄く料理が美味しかったですよ。あんな調味料が地上にはあるんですね」


まだ見ぬこの世界のどこかには、

俺やセティも知らない、未知の調味料扱う国があったりするのだろうか?

そんな国があれば行ってみたいし、味わった事の無い料理があれば、尚嬉しい。

ナギにもセティの修行に付き合う代わりに、異世界を一緒に楽しんで欲しいとも言われている。

幸いセティには転移魔法ゲートがあるから、一度行けば自由に往来出来る。

この調子でどんどん新しい土地を見て回るのも悪くはない。

もちろんその前に、あの人に相談してからになるけどね。


宴はまだまだ続く。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ