こんなに強くていいんですか?
不束者ですがよろしくです
「てください!おきて!」
とても深い微睡みの中、重い瞼を開けるとそこには可愛らしいもふもふの犬が1匹、顔を覗き込んでいた。
「あぁ、おはようネル」
「おはよう、じゃないですよ!もう5年は寝てたんですからね!」
そうか、5年しか寝てないじゃないか。じゃあもうちょっと寝よ。
「だぁかぁらぁ!寝ないでください!今日はようやく外に出る日なんですから!」
「もう2年くらい良いだろ?だって俺達不老で年取れないんだし」
「そういう問題じゃありません!ボクのように1日1回陽の光を浴びて散歩しているのと違って貴方は5年もこんな洞穴で寝てたじゃないですか!そのうち苔が生えますよ!」
「いいじゃん苔。何もせずにただ生きるだけなんてなんて楽なんだろう。」
「あぁもうなんなんだろこの面倒くさいご主人。もうやだ」
そう言ってネルは俺が随分前から住んでるこの深い森の洞穴の中にある改造された食料庫へ朝飯を取りに行ってしまった
俺、リルム・バーメリオンは不老者である。
元から錬金術師兼魔法使いとして働いていた俺は伝説の秘宝と呼ばれる錬金術の原点とも言える不老薬をある事がきっかけで偶然作れてしまった。そして、うっかり飲んでしまった。
その時に、隣に居たまだ人語を話せなかったネルも飲み込んでしまい今じゃすっかりお世話焼きになってしまった。
最初は戸惑いもしたが数ヶ月もすれば慣れていった。
まあそれからは特に家族や友達も居ないので仕事をバックれてこの誰も近寄らない深い森の洞穴を見つけてひたすら魔法と肉体について学んできた。
「なあ、ネル」
「なんですか?リルム様」
「俺達がここに来てから何年だっけ」
「えーと、たしか3000年とちょっとだった気がします」
もうそんなに経ってたのか。
2000年を超えたあたりから六大魔法術(火、水、土、風、光、闇)と結界魔法、身体強化魔法等大体の特性の魔法を除く全魔法を極めてしまい、
身体操作も筋肉の筋1本1本まで繊細に動かせるようになったので魔力を高める為に瞑想として寝ていたのだ。
「もう!ボクがこの1000年どんな思いで居たか!」
「でもちょいちょい起きてただろ?」
「本当にちょっとじゃないですか!!1000年の間で1年くらいしか起きてませんよ!!魔力を高めれば気が済むんですか!!」
「いや、、だって魔力を高めれば身体能力も上がるし、魔力コントロールも上手くなっていい事しかないんだもん」
「ボクは【身体強化魔法】しか使えないんですから1人で森の中を散歩したりそこいらの魔物を狩ったりしか楽しみがなかったんですから!!」
「なんで、外に出なかったんだ?外に出ればそこいらの適当な家族の所に行ってちょっと飼われて居たら良かったのに」
俺がごく自然のことを言うとネルは目を見開いて俺に迫ってきた。
「貴方がボクに寝る前に契約魔法で洞穴に近付くもの全てを抹殺するように頼んだんでしょう!?忘れたんですか!おかげでここら一帯の地域は恐れられて魔物でさえも近寄ってきませんよ!よかったですねっ!!」
おおう、そんな事頼んでたっけそういえば。前に不用意に入ってきた奴を倒して思い出したんだ。ここ偶に魔物が入ってきて起きたら俺は食われてるんじゃないかって。
「忘れてたよ。ごめんありがとう見張っててくれてたんだな。」
「そうですよ!まったく、ほらご飯にしましょ」
そう言ってネルが咥えていたのは干し肉だった。そういえば俺が寝てる間にネルは野生の動物を食べるからいいとして貯蓄用にあった食べ物はこれ以外ほぼ腐ってるだろうなぁ。しまった。
「、、、今日でここ空けるんだし干し肉だけ持っていって他は放置でいいよな?」
「ダメです!いくら暫く戻らないと言っても帰ってきたらホコリで凄いことになってますよ!掃除をして、それからです外は!」
そう言ってブンブンしっぽを振りながら抗議するネル。可愛いなこいつ。しかしこの改造してサッカーコート5個分はある入り組んだ場所を掃除か。骨が折れるなぁ。
「なぁ、別に全部やらなくてm」
「全部です」
「あっはい」
そして俺達(主に俺)は結局掃除で一日が潰れて行くのは明日になったとかなんとか。