森の夕飯
「ただいま、アリス、コハク」
「ウォウッ!!」
「おかえり、アレン…なにかあったかい?」
笑顔でおかえりを返してくれるアリスに心が温まる気持ちになるアレン。
おかえりと言ってもらえるのは両親が生きていたころ…ずいぶんと前のことだった。
「…騎士団の物と思われる装備品を回収してきたよ」
「ッ!!……そうか、その、遺体…は?」
「俺が行ったときには魔獣に…もう」
「くっ!…覚悟はしていたがやはり仲間が死ぬのは嫌なものだ」
泣きそうな顔で俯くアリス…
「…装備品は、どうする?今、ここに出そうか?」
「いや…もう少し心を落ち着かせてからにしてくれ…すまない」
「分かった」
「ありがとう」
…無理に笑顔を作ってお礼を言ってくるアリスに胸が痛くなった。
「アリス、お腹へっただろ?そろそろ普通に食べても大丈夫そうかな?」
「あぁ、すごくお腹が減っているよ!起きてからは木の実や薬草茶?ばかりだったのでな!」
「そうだったね、それじゃなにか適当につくるから待ってて」
「分かった、しかし料理までできるのか、君はなんでもできるんだな」
「ははは、1人で生きてきたからね」
さてと…今あるものは火熊の肉、イタドリ草、ブナンの浄水に白甘草、鬼の芽だな、調味料は香液の樹液と硬生姜の木、乾酪の根。
うーんどうしようか…火熊の肉は普通ならそのままでも食べられるけど、病み上がりには少し肉が硬い、これはブナンの浄水で煮込んで柔らかくしよう。
白甘草とイタドリ草はどちらも森に自生する山菜だ。白甘草はシャキシャキとした食感と程よい甘みがあり、下手に味付けしなくても十分だ。イタドリ草もそのまま煮て食べられる上に体の痛みを取る効果がある、この2つでおひたしとかき揚げを作ろう。
鬼の芽は鬼の角のようにねじれた形の鋭い木の芽だ。決まった時間煮込むことで柔らかくなり、独特の風味が出る美味しい山菜だ。しかも体を強靭にしてくれる効果も持っている。
香液の樹液は黒く、香ばしいにおいがする樹液で、様々な料理に使える。
硬生姜の木は同じ、硬生姜の木とこすり合わせることで生姜の風味がでる粉が取れる。
乾酪の根は上物のチーズだ、そのまま食べても美味しいが山菜と合わせて焼くとお互いを引き立てあう。
「よし、作るか!!」
アレンは素材を手に取り、手際よく調理していく。
その顔はすごく楽しそうで、嬉しそうであった。
「う、うまい!!ただの肉だと思ったのに、なんだこの柔らかさは!!」
「火熊の肉をブナンの浄水で煮込むとすごく柔らかくなるんだよ」
「それにこの山菜たちも!!今まで食べてきた野菜なんかより断然うまいぞ!!」
「取れたて新鮮だしね、なによりここの山菜は質がいい」
「美味い!美味いぞ!!それに…なんだか体がポカポカしてきたぞ!」
「あぁ、それは料理のほとんどに体を良くする成分が多いからだね」
「アレン!わたしの専属料理人にならないか!?」
「は、ははは…それは勘弁かな、また作ってあげるから」
「むぅ…残念だ、本気だったのだがな、まぁこれ以上の贅沢は言うまい」
2人は賑やかで楽しい夕飯を共にし今日の1日が終わるのだった。