情報収集
ブラッディモンキーを掃討し、装備品を取り返したアレン。
「さてと…このままだと他の魔獣が集まってくるな」
ブラッディモンキーは倒すと武器化、防具化している血の硬質化が解け周りに激しく飛び散るのだ。
その匂いに釣られ、他の魔獣が集まってきてしまう。
「死骸を一か所に集めて…【土流葬】」
アレンの土魔法によって死骸が静かに、ゆっくりと地中に沈んでいく…周りの地面に飛び散った血もキレイになくなった。
「樹についた血は…樹がすぐに吸収するだろ、それより…」
そういって放置することにした。
禁断の森の樹木…もちろんここの付近にある樹もただの樹ではない、針樹といって針のような葉を飛ばし獲物を殺し養分にする樹だ。ちなみに今は休眠期に入っており針を飛ばしてくることはない。攻撃性が出てくるのは栄養が取りづらくなる前の秋ごろだ。
「…また人の気配がするな、今度は10人くらいかな?…アリスを罠にハメたやつがきたのかな、様子…見てくるか」
アレンは気を引き締め直し、人の気配がする方へと向かっていった。
アレンは見つからないように気配を殺して近づいていった。禁断の森の魔獣たちですら気づくことがない隠密に人間種が気づくはずもない。
相手のことを十分観察できるほどに距離をつめることに成功、様子を見ることにした。
「どうだ?なにか痕跡はあったか?」
「いえ…ところどころに騎士団の装備品などが転がっていましたが…」
「そうか…」
リーダー格の男が回りの男たちに話しかけている、誰かを、もしくは何かを探しているようだった。
やはりアリスを探しにきたのだろうか。
男たちの恰好は冒険者のような恰好で…良く言えば機動性重視な、悪く言えば統一性のない恰好であった。アリスの来ていた騎士団のような鎧姿ではなかった。
騎士団…の人間ではなさそうだな、鎧も着ていないし、捜索にしては不十分な人数だ。
「今日はここまでだ。ここでキャンプを張るぞ。魔除けの結界の準備をしておけ」
「了解です」
「…みな、回復薬の残りは?」
「…ほとんど使い切ったと言っていいでしょう、残っているのは全体で2,3個といったところです」
「禁断の森…話には聞いていたが…話以上の場所だな、最悪撤退も視野に入れんとな」
「しかし!!我々が撤退しては…!」
「分かってる!それ以上は言うな!すでに2人死んでるんだ、このままこの森の探索は全滅だってありえるんだ、分かってくれ…」
「…はい」
…話しを聞く限り森に入ってから2人ほど死んでしまったらしい、確かにこの森には強力な、そして癖の強い魔獣が多い…遭遇した魔獣によっては死人が出るのも仕方がないことだ。
これ以上は日が暮れて帰りづらくなるな…アリスも待っているだろうし、今日は一度帰ろう。
アレンは野営を始めた10人に気付かれずに静かに帰って行った。
話しを聞かれていたことなど、まったく分からなかった10人だった。