返してもらうぞ
お守りの素材を回収し終えたアレンは、アリスが倒れたいた場所まできていた。
「うーん、ここらへんにはなにも無いな、もう少し範囲を広げてみるか」
アリスが倒れた場所、軍隊狼と戦った場所にはなにも無かった…まぁここに落ちてきた訳ではないから手掛かりがあるとは思っていなかったけど…。
そのままなにか他に手掛かりがないか探しながら進むアレン。
「…あれは」
目の前に崩れてきたであろう崖の痕跡があった。
おそらく、アリスが爆発に巻き込まれて落ちてきたのはここらへんなのだろう。
死骸は無いが、魔獣のものであろう血の跡と…おそらく人間種のものの血の跡があった。
おそらく遺体は魔獣に持っていかれたんだろう。
森の中に引きずっていった痕が残っていた。
「これは…アリスに報告しづらいな」
報告した時のアリスの表情を想像して苦い顔をするアレン。
…とりあえずなにか身分の分かるものでも残っていればいいが。
そう思いながら血の跡を追っていくことにした。
「キャー―!!キャー―――ッ!!」
「キキキッ!!!」
森を探索するアレンに頭上…樹の枝に無数の気配があった。
アレンを囲むように四方八方に…。
「こいつらは…ブラックモンキー?…いや上位種のブラッディモンキーか、遺体を持ってったのはこいつらか」
ブラッディモンキー…猿の魔獣でその名の通り体が赤黒い血の様な色をしている。狡猾で残忍、雑食でなんでも食べる奴らだ。
遺体を持って行ったのはこいつらだろう…何匹か剣を持っていたり騎士が使いそうな兜なんかをかぶっている。
「それはアリスの仲間のモンだろう…返してもらうぞッ!!【スローイング・ナイフ】!!」
「「ガッ!???」」
「「ギャー―ッ!!」」
言うなり空間魔法で両手いっぱいのナイフを猿たちに向けて投擲する、その速さに回避できた猿は皆無であった。全部で8刀…8頭が瞬時に絶命する。
しかし、前回の軍隊狼を上回る数でアレンを囲む猿たち…死んだ仲間には目もくれずにアレンを食糧にしようと凄まじい速さで木から木へ飛び移り、アレンへと襲い掛かる。
「ちっ…数が多いな、おまけに…」
呟きながら両手に剣を召喚…向かってきた猿に振るう
キキィン!!
アレンの振るった剣を…同じく赤黒い剣で受け止め弾くブラッディモンキー。
「やはり硬いなこいつ等の【凝血】は」
ブラッディモンキー…その名前は見た目だけで付けられたわけではない、自分自身に流れる血に魔力を通し、凝固、武器や防具として扱うことができる強力な能力がある。
「キキキッ!!」
「…なに笑ってやがる」
攻撃を防いだことによって自分が有利に立っていると思ったのか笑いだす猿…周りのやつらもニヤニヤしている。
「その余裕…今からぶっ壊してやるよ…ふっ!!」
剣を握り直し猿の集団に突っ込んでいくアレン、それを見た猿は余裕そうに待ち構えている。
「…【付与・斬鉄】、オラァ!」
ザンッ!!
「キッ!?…」
手に持つ血剣ごと縦に真っ二つになるブラッディモンキー…先ほど余裕の笑いを見せていた他の猿たちもその笑みをひっこめている。
「獲物に魔力を通わせられんのはお前らの専売特許じゃねーんだよ…アリスに代わっててめーらが食った仲間の敵、とらせてもらうぞ」
「「キ、キィ!!」」
ほどなくしてアレンの手によりブラッディモンキーたちは殲滅され、アリスの仲間が使っていたであろう装備品を取り返すことができた。