欲しけりゃ…
ドォスゥ――――――ンッ!!!
アレンに首を落とされた【双魔鷹】は羽ばたく力を失い、地面へと轟音をたてながら落ちていった。
アレンも巻き込まれないように危なげなく地面へと着地する。
「……はっ?」
そして近くには斧を構えたまま固まっている女性冒険者一向がいた。
それはそうだろう…今までは戦っていた魔獣がいきなり首を切られ死んだのだから、呆然となるのも仕方がないことである。
しかし、そのままずっと呆然としてるわけはない…すぐさま状況を整理し、自分たちが戦っていた獲物を横取りされたことを理解する。
「てめぇーー!なに人の獲物横取りしてんだこらぁーーー!!」
たいそうお怒りのご様子で近づいて来る女性冒険者。
まぁ…そりゃそうだよな、でも緊急事態だし…説明してなんとか納得してもらうしかないな。
そう思い、女性冒険者へと向き直るアレン。
「横取りしたことは謝ります。しかし、どうしても急ぎで【双魔鷹】の核石が必要なんです。…他の部位に関してはあなた方にお渡しします。核石だけ譲っていただきたい」
頭を下げながら女性冒険者へお願いする。
「そういう問題じゃねーんだよっ!こっちは依頼を受けて討伐にきてんだ!オレたちが倒すのが筋ってもんなんだよっ!」
どうやら納得はしてもらえないようだ。
「その点については本当に申し訳なく思ってます。ですが…こちらも引くわけにはいきません」
「ほ~う…この俺様に向かっていい度胸だな!おい!」
「あ、姉御!もう少し抑えてください!」
青筋を浮かべながら斧を担ぎ直し、アレンへと迫ろうかという女性冒険者を後ろから、仲間止める。
そしてもう1人の男性が質問をしてきた。
「…にーちゃん、冒険者か?見ない顔だが…名前は?」
「アレンと言います。冒険者になったのはほんの数日前になります」
「数日前だと!?そんな奴が【双魔鷹】を一刀で倒せるとは思わないが…」
「…では証拠にこちらを」
そういって自分のギルドカードを取り出し、相手へと投げる。
カードを受け取り、その内容を確認してもらえれば冒険者なことは分かってもらえるだろう。
「…本物だな、しかし…」
「なにか?」
「数日前に登録したのにBランクというのが…な」
「…特例で繰り上げてもらいました」
ここは誤魔化さずに素直に答えた方が良さそうだな。
アレンの答えに反応したのは羽交い絞めで抑えられている女性冒険者だ。
「特例~?んなの聞いたことねーな…だいたいなにやって特例になったんだよ?」
「…登録時にちょっと揉めまして、それでジュリアンて人と模擬戦を…」
「なに!?あの筋肉マッチョマンとやったのかよ!?…ははーん、んで負けたけど良い勝負したとかなんかで繰り上げか…どーせあの筋肉のことだ、手でも抜いたんだろ!」
「いえ…」
「んだよ!違うのか!?」
「勝ちました」
「はっ!?」
「ですから…ジュリアンとの模擬戦には勝ちました、それで…」
「ちょ、ちょっと待て!あの変態筋肉ヤローに勝ったってのか!?」
…ジュリアンの名前がどんどんひどくなっていく…他の冒険者からどんなふうに見られているか良く分かるなぁ~。
「まぁ…はい。お互い全力ではなかったですが」
「あの全身完全化けモンが全力で戦ったら大変なことになるわな…しかし、お前…それでもあいつに勝ったのか…アレンって言ったっけ?」
「はい…それで、処罰に関してはのちほどいくらでも構いません、今は核石を譲ってください」
「ふん…まぁいいぜ、今回の依頼の内容に核石は入ってなかったしな!持っていきな!」
「ありがとうございます」
冒険者カードを見せたことで盗賊などではないとわかってくれたようだ。
冒険者3人が見ている中、【双魔鷹】を解体していく…できるだけ無駄に傷つけないように慎重に作業していった。無駄に傷をつけてこの冒険者たちと更に揉めることを避けるためだ。
「ほぉ…上手いもんだな、なかなか手馴れてやがる」
「解体はよくやってるので……あった、これだ」
【双魔鷹】の胸あたりの奥深くから1つの石を引っ張り出す。
大きさは手のひらより少し小さいくらいの丸い石だ。紅く、透き通るような…まるで宝石のような核石だ。
「では、これだけいただいていきます」
「あぁ…好きにすればいいさ」
これで必要な物は手に入った…あとはすぐに帰ってローラちゃんに…ツッ!?
ゴウッ!!ギィィンッ!!
アレンは核石を握り占め、立ち上がり…冒険者たちに背を向けて立ち去ろうとした。
しかし、そのアレンの背に巨大な斧が凄まじいスピードで振りぬかれる。
すぐさま振り返り、片手で剣を構え防ぐ…が…
「おらっ!!」
「ぐっ!!」
斧を受け止めた瞬間、その斧を振りぬいた女性冒険者がアレンの腹部へと蹴りを放つ。
アレンも核石を握りしめた方の腕でその蹴りを防ぐが、あまりの威力に吹き飛ばされ…握っていた核石も離してしまった。
「さすが…不意打ちにもしっかり対処してくるか」
「く…いったい何の真似だ?」
そして離してしまった核石は女性冒険者の手に…。
「なに…これからだって時に獲物を獲られちまったんでね、不完全燃焼なのさ」
「だから…なんだってんだ」
「ふふふ…お前、核石が欲しいんだろ?それは今、オレの手にある訳だ…どうゆうことか分かんだろ?」
「…力づくで取ってみろってことか」
「その通りさ…さぁ!欲しけりゃ奪い取ってみせなっ!」
どうやら獲物を横取りしたことよりも、戦えなかったことが不満らしい…できれば無駄な時間は使いたくないが…肝心な核石があっちにあるんじゃどうしようもないな。
「いいだろう…時間が無いんだ、速攻で決めさせてもうらぞ」
「はっ!やってみろよっ!…いくぞおらぁっ!!」
「ちょっ…姉御ぉ!!」
女性冒険者が斧を振りかぶり袈裟切りに襲い掛かってくる。
巨大な斧がうねりをあげながらアレンへと迫る…巨大でかつ重量のある斧をこうも易々と扱っているあたり尋常な筋力ではないだろう。
ギィン…スゥ…。
迫りくる斧に対し、アレンは一瞬受け止めたものの力に逆らわずにそのまま剣の角度を変え、受け流す。
ギィン…ギィン…ギィン…
一度振れば、その重量のせいで体勢を崩しそうなものなのに普通の剣を扱うかのように振り続ける女性冒険者…それに対し、冷静に、確実に斧を受け流していくアレン。
「くッ…やりにくいね!【ダブル・スラッシュ】!」
全身を使い、回転するように斧を二度切り付ける…その威力、スピードと共に先ほどの攻撃よりよほど威力がある事が分かる。
剣で受けることはまずい感じたのか、すぐに後方へと身を引き躱すアレンだが、回転が弱まる一瞬の時を見逃さず反撃にうつる。
一足飛びに肉迫し、二振りの剣を叩きつけるように切りかかる。
ガギィィ――――ンッ!! ズザァ――――ッ!!
斧を盾のように構え…アレンの攻撃を受け止めるが、その衝撃で後方へと強制的に下がっていく女性冒険者。
「くーーーっ!見かけによらずいいパワーしてんじゃないか!」
「核石を渡せ」
「せっかちだねぇ…もっと遊ぼうぜ!!地よ!我に力を!敵を打ち砕く武器を!【武器創造・斧】!」
女性冒険者の魔法…地面が蠢き、1つの斧の形をとる。
それを手にし、2本となった斧をそれぞれ片手に構え、さらに激しい攻撃をアレンへと浴びせにかかる。
「そらそらそらぁーーーーっ!」
ギギギギギギィンッ!!!
こいつ!重量のある武器を片手で軽々とッ!くそ…攻撃が重いッ!!
「敵の動きを止めろ!【アース。バインド】っ!」
「しまっ!?」
「遅いね!!喰らえっ!!」
女性冒険者は攻撃を加えつつ、行動阻害の魔法を使う。
アレンの足元の地面が動き、その脚に絡みつき固まる…気づくのが遅れたアレンは脚をとられ、その隙をついて女性冒険者が2本の斧を水平に振りかぶり、アレンへと勢いよく切り込んだ。
ブォンッ!! ガンッッッ!!
「ツッ!!!?」
剣を盾に耐えようとするが、余りの威力に絡みついた土が壊れ、再度吹き飛ばされる。
「…ゲホッ…ペッ…」
防ぎ切ったものの、さすがのアレンも無傷とはいかず血を吐いた。
「よく防ぐ…お前、強いな~!くくくっ!」
「…あなたも十分に強いですよ」
「あなたじゃねー…カーラだ、覚えときな!」
「やはり、あなたがSランク冒険者の…」
「なんだ?知ってんのか…てっきり知らねーのかと思ったよ」
「まぁ知ったのは少し前なんですがね…ふぅ」
「なんだ?諦めんのか?」
「いえ…本当に時間がないのでそろそろ終わらせようかと…いきます」
「ふん!こいよ!…おらぁ!!」
ガギンッ!
二振りの剣を構え、体勢を低くし…カーラへと突っ込んでいく。
カーラはその速さに驚きながらもしっかりと対応し、魔法で創った方の斧を振り下ろした…それを剣で一瞬受け止め、上へとかち上げた…そして…
「【震脚】!!」
バァゴ―――ンッ!!!
身をひねり…斧に向かい蹴りを放ち、破壊する。
そしてそのまま勢いをころさず、さらに武技を発動させる…狙いは残った方の斧だ。
「【篠突く雨】」
ギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギィンッ!!
「ぐあっ!!」
まるで強い雨が降るがごとく連続での切りかかり。
あまりの衝撃に手が痺れ…斧を手放してしまうカーラ…手を抱き込むようにうずくまってしまう。
スゥ…
そしてその首にアレンの剣がそえられ…勝敗が決した。




