依頼を受ける
ターニャに案内され、冒険者ギルドの入り口近くへとやってきたアレン。
受付の近くには大きな掲示板があり、そこに何枚もの紙が貼ってあった。
「こちらが依頼の掲示板になります。なにか受けたい依頼があれば、ここに掲示してある依頼書を受付にお持ちください。」
「分かりました」
「なお、掲示してある依頼はE~Aランクに分かれています。Sランクに関しては掲示せずにこちらから冒険者に依頼をお願いする形になっています。」
「…Sランクって今は何人いるんですか?」
「現在、このギルドには3名のSランク冒険者がおります。その1人がジュリアン様になります」
ジュリアンのほかに2人もSランク冒険者がいるらしい。
あれほど強かったジュリアンと同じランクということは、同じレベルで強いのだろう。
少し考え事をしていたアレンにジュリアンが声をかける。
「うふ…他の2人はアタシみたいにフレンドリーじゃないからねん、絡まれないように気を付けた方がいいわん」
「…そうか、ありがとう」
「いーえん」
ジュリアンがフレンドリーかどうかはともかく、あまり友好的ではないようなので自分からつながりを持とうとは思わない。
「まぁとりあえず依頼を受けてみるか…なにかおススメなんかありますか?ターニャさん」
「そうですね…普通だと最初は街中の依頼や、薬草採取などを勧めるんですが…アレン様の実力だと討伐系や難しい採取系の依頼でも問題なさそうですし…」
「以来の受理から達成までの流れを経験しておきたいでの簡単なもので構いませんよ?」
「そうですか?では…こちらはどうでしょう?」
ターニャは掲示板から1枚の依頼書を剥がし、アレンへと見せる。
「…【ラープ草】の採取」
「はい、【ラープ草】は上級回復薬の材料となる薬草になります。Cランクの依頼になります。少し見つかりづらい上、毒草である【ラープ草モドキ】に似ているため採取してくる人が少なく、在庫が少なくなっているそうなんです」
「この薬草を採ってくればいいんですね?」
「そうなります。一応見分け方などをギルドでもレクチャーしていますが、お聞きになりますか?」
「いや、大丈夫です。見たことがあるものだと思うので」
そういって依頼書にのっている薬草の絵を見ながら答えるアレン。
「分かりました。ちなみに、この依頼には【ラープ草】の他にも有益な薬草を採取して持ってきて頂ければ、報酬の上乗せもございますので、なにか見つけたら採取をお願いします」
「了解です」
「では、依頼の受理をいたしますので、受付のほうへどうぞ」
アレンはターニャに言われた通りに受付へ行き、依頼書とともにギルドカードを提出した。
少しすると、依頼の受理が完了しギルドカードを返される。
「ではこちらの依頼は受理してから3日間が依頼の完了期日となります。それ以上時間がかかりますと依頼を失敗したとみなされ、依頼は掲示板へ再度貼りなおします。そして違約金が発生してしまうのでお気をつけください」
「なるほど…期日があるんですね、それに違約金も」
「はい…期日を設けないといつまでたっても依頼を受けっぱなしになって依頼主に迷惑になってしまいますし、違約金がなければ気軽に依頼を受け、簡単に依頼を放棄する人もいるでしょうから…」
「確かに…考えれていますね」
「はい。ではアレン様、依頼の受理はこれで終了になります。依頼完了の説明はアレン様が依頼を完了した時にさせていただきます。【ラープ草】の採取、頑張ってください」
「分かりました、行ってきます」
依頼の受け方はこれで終わりのようだ。
依頼を達成した場合のやり方は後ほど教えてくれるそうなので、【ラープ草】の採取に街の外へと向かっていくアレン。
その背中を、無事に説明が終わったとほっと息をつくターニャと、腕を組みながら一連の流れを見ていたジュリアンの2人の眼が見送っていた。
「…ぶ、無事に終わりました。エリックさんの無茶ぶりに一時は心臓が止まるかと思いましたが、優しい方のようでよかったです~」
「ふふふ、そうね…あれだけの力があれば増長して傲慢になってもおかしくないのに…素直な子ねぇ~」
「いきなりCランク依頼を受けていただきましたが、大丈夫でしょうか?」
「アレンちゃんなら大丈夫じゃない?難しそうな顔してなかったし…」
「そうですか?」
「そうよ…もしかしたらすぐに依頼達成してくるんじゃないかしら」
2人はしばらく楽しそうにアレンの事を話すのだった。
アレンが登録を完了し、ギルドを出たのはすでにお昼を過ぎていた。
「うーん…思ったよりだいぶ時間がかかっちゃったな、とりあえず今日は様子見で近くの森にでも行ってみようか」
このまま帝国近くの森へと向かうことを決めたアレン。
近くに森があることはアリスたちと帝国へ帰国するときに確認済みだ、パッと見だが山菜や薬草などが生えていそうな雰囲気がある森だった。
そのまま城壁の門へと向かい、外に出ようとするが…他にも出ようとしている人たちに対し、警備の騎士たちによる検査が行われていた。
1人1人にそこまで時間がかからず、すぐにアレンの番になる。
「よし…次の者!身分証を確認する!」
「身分証…これでいいんですかね?」
「ギルドカードか…冒険者だな、なにかの依頼かね?」
「はい、薬草採取に森の方へ行こうかと…」
「森には少なからず魔獣が出るので注意しろよ…と言ってもそこまで強力な魔獣は稀だがな」
「そうなんですか?」
この騎士の話では、帝国の近くにある森や山には魔獣が出るが…そこまで強力な魔獣はいないらしい。
強力な魔獣が出た場合は被害が拡大する前に騎士団が討伐に出動するので、魔獣による被害もほとんど皆無のようだ。
「平和なんですね~」
「ははは!このグラン帝国は人間種の国で一番大きく、強力な国だからな!街のみんなも安心して暮らせているよ」
「羨ましいですね…俺が住んでいたとこはあまり安全ではなかったので」
「なんだ、ここに来たのは最近か?」
「えぇ、つい先日ここに着きまして、とりあえず冒険者稼業でお金稼ぎでもと…」
「そうか、まぁ気をつけてな!」
「ありがとうございます」
警備の騎士と少し会話をし、問題なく門を通り外へと出れた。
そのまましばらく道を歩いた後に、その道を外れ目をつけていた森へと入っていく。
禁断の森ほどでははいが、薄暗く虫の鳴き声や、動物の気配などを感じられた。
「…なんだか懐かしいなぁ、あの森から出てきたばかりなのに…あ、そうだ…コハク!」
「ウォウッ!」
アレンの呼び声に答え、影から出てくるコハク。
「ずっと影に入って貰ってたからね…森の中では好きに動いていいよ、あとで合流しよう」
「ウォフッ…」
「…ついてくるのか?まぁ好きにしていいって言ったからね、じゃ一緒に薬草採取に行こうか!」
「ウォウッ!!」
アレンとコハクは、禁断の森に住んでいた時と同じように一緒に森の奥へと入っていった。




