ジュリアン
空間魔法のことを記載し忘れたので、前に投稿したものを修正しました。
「アタシがやるわん」
誰も声をあげないなか、1階の…少し影になるようなところから立ち上がった男?がいた。
そしてそのままアレンとエリックの近くへ歩いていく。
大きい…身長は2メトル越えで筋肉ムキムキで肉体だけ見れば歴戦の兵士のようである。
そう、肉体だけ見れば…。
「んふ、他のオトコたちは腰が引けちゃったみたいね…仕方がないからアタシが相手をしてあげるわぁん」
語尾にハートマークがつきそうな喋り方をしている。
…お察しの通りオカマである。ムキムキの筋肉を少しだけ、すこーしだけ隠す程度のビキニアーマーを纏い、金髪のさらさらした髪の毛をサイドテールに流し、顔にはしっかりとお化粧を施している。特に口紅を厚く、あつ~く塗ってあるのか異様に紅くテカっていた。
その異様な風貌に…見慣れているはずの他の冒険者も、ギルド職員も…そしてもちろん初見のアレンも口を閉ざしてしまった。
「あ、あの…なにもジュリアン様が出るほどのことではありません!」
沈黙を破ったのは仕事ができる…受付嬢、ターニャである。
ばけも…冒険者である巨漢のジュリアンの風貌に呑まれつつも即座に復帰し、やる必要はありませんよ~と声をかけた。
「でも~…他にやれそうな人いないしねん、そ・れ・に…アタシ個人的にもちょっとヤリあいたいなぁ~って思ってたのよね!」
そう言いながらアレンの方を見るジュリアンと呼ばれた冒険者…それに対しアレンは目つきを厳しくさせ言い放つ。
「チェンジで」
まさかの誰か交換してくれ発言である。
ジュリアンを怖がった(ある意味怖いが)訳ではなく、単に気色悪かったためだ。
さっきからこの人…俺の体を隅々までなめるように見てくる…お、悪寒が…。
「だめよ~、チェンジなし!むしろ永久指名しちゃうわん」
「いや、チェンジでお願いします。マジで」
「ふふふ、楽しみねぇ~」
「おい、どこ見てんだあんた…なんで下を見る、なんで視線が下なんだよ」
「じゃ、早くヤリましょうか♪」
「待て、やるって試合だよな?そうだよな?」
「焦らないで…こっちに訓練場があるからそっちで…ね」
「人の話聞けよ!?」
基本的には敬語で話すアレンも、さすがに素が出てしまう…。
アレンのターン、アレンは逃げるを選んだ…失敗っ!!
ジュリアンとの戦闘は不可避だ!!
嫌がるアレンをなんのその…なんだかんだでギルドにある訓練場へと連れてこられてしまった。
個人の練習や、集団での連携の訓練のためギルドの中庭にはそれなりの広さが確保されていた。
今回の模擬戦もそこでやるようだ。
訓練場にはアレンとジュリアンはもちろん、関係者のターニャとエリック…ギルド内で興味深そうにこっちの話を聞いていた冒険者の姿がちらほらと見受けられた。
「ジュリアンが出てくるとは思わなかったが、これはこれでいい勉強になんだろ…おい、ターニャ、治療師呼んどけ…死ぬことはないと思うが念のためだ」
「りょ、了解です」
ギルド責任者、エリックの言葉に素直に従い治療師を呼びにギルド内に戻るターニャ。
自分がけしかけたとは言え、さすがに死人が出るのはまずいと判断したのだろう。
そんな外野のことは意にかいさず、アレンとジュリアンは訓練場の真ん中で対峙していた。
「んふ、さてと…さっき4人を相手に見事な動きだったわん、アタシにも遠慮なくかかってらっしゃい」
「…どーも」
「不服そうな顔ね、分かるわん!あなたも待ちきれないのね!すぐにヤリたい!そうよねぇ!!」
「いえ、違います。むしろ全力で逃げ出したいです」
「ふふふ…素直じゃないわねぇ」
「心の底からの思いなんですが…」
ヤル気まんまんのジュリアンと、対照的にどこか気落ちしたように見えるアレン。
心底やりたくなさそうである。
「勝負は…一撃じゃ面白くないわねぇ…どちらかが気絶なんかの戦闘不能、もしくはアタシをま・ん・ぞ・く、させたら終わりにしましょう」
「棄権したいんですが…」
「だめよん、それに今棄権したら冒険者登録できないわよ?」
「…だよな~、仕方がない、やるか~」
「えぇ!存分にヤリましょう!」
「…絶対字が違う」
これも冒険者登録のためと割り切ることにしたアレン…できるだけ早く終わってほしい、心底そう思っている。
「武器は?」
「あなたはいつも使ってるものでいいわよん、アタシはコ・レ」
そういってジュリアンは自分の拳を握り、眼の高さまで持ってくる。
その巨体を活かした肉弾戦・超近距離戦闘を得意とするファイター系戦士のようだ。
「…真剣でいいのか?」
「かまわないわよん?元より命がけの職業…戦闘は常に命のやり取りを想定しなきゃ」
「そっちがその気なら俺はかまわん」
模擬戦とはいえ、アレンに対し真剣を使っていいと言ってくるジュリアン…最悪命を落とすことさえあるが、それさえも想定内だという。
「エリック、合図をお願いねん!」
「あぁはいはい、わかったよ」
エリックに戦闘開始の合図を任せることにしたようだ。
アレンとジュリアンは話していた距離より更に距離を取り、対峙する。
お互いに向き合ったタイミングでアレンが空間魔法で、虚空から愛用の2振りの剣を取り出して見せる。
「!!あ、あなた…本当に空間魔法を…」
「なんだとっ!?そんなばかな!?」
「おい…いまの見たか?」
「どこから…本当に空間魔法?」
「て、手品じゃないのか?」
そのことに訓練場にいた全員が驚いた。
空間魔法など今や伝説上の魔法になっている…誰も使用できない、失われた魔法、それが空間魔法なのだ。
ジュリアンは驚きながらも面白そうな顔をし、ファイティングポーズを取り戦意を高めていく。
一番驚いているのは責任者のエリックだろう、嘘だと言い切ったものを目の前で見せられたのだから。
しかしエリックはまだ認めなかった…伝説の空間魔法など使えるはずがない、そう思ったエリックは…
「そんなものなにかの手品に決まってる!ええい!もういい!試合開始っ!!」
声を荒げながら模擬戦の開始を宣言するのだった。
ジュリアン「うふふ…アタシと楽しいことし・ま・しょ♪」
アレン「森に帰らせていただきますっ!!」
アリス「アレン!?ちょっ!…アレン、カンバァ―――――ックッ!!!!




