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登録…の前に


宿屋の主、クリスが錯乱から回復し…アレンは美味しい朝食にありつけた。

クリスとたわいない話をしつつ、朝食を食べ終わるころにはちょうど、冒険者ギルドが開く時間になっていた。


「それじゃ冒険者登録に行ってきます、ご馳走様でした」

「はいよ、いってらっしゃい」


クリスに一言いってから宿を出る。

そしてそのまま、昨日アリスに教えられた冒険者ギルドの建物へと向かっていった。


ちなみに今、コハクはアレンの影の中だ。

昨日のクリスの反応を見て、連れだって歩くのはさすがにまずいと学習した結果である。


宿を出て、そのまま大通りに出るアレン。


「おぉ…人がいっぱいいるなぁ」


アレンが思わずつぶやいた通り、大勢の人で賑わっていた。

昨日はすでに暗くなっていたのでそこまで人はいなかったが…今は、仕事をしている者や商いをしている者、様々な人たちがいて活気に満ち溢れていた。


「らっしゃい!らっしゃい!!」

「朝一の鮮度抜群の野菜だ!!買った買った!!」

「これはここらへんでは珍しい品物でね…」

「これとこれをもらおうか」

「…もう少し安く…」


中でも目を引いたのが商人たちの声掛けだ。

何人もの商人が大通りを歩く人に向かって自分の商品の良さを語りかけている。

ここまで活気があり、かつさまざまな品物が並べられていることからこの国がどれほど豊かなのかを想像できる。


商人の声掛けや、商人とお客のやり取りを眺めながらゆっくりと…1つ1つを楽しみながら歩いていくアレン。今までに見たことのない風景に心躍らせながら冒険者ギルドへと向かっていった。



アレンが冒険者ギルドに着いたのは宿を出てしばらくたってからだった。

あっちにフラフラと、こっちにフラフラと…気を引くものがあればついつい見に行ってしまい道草を食いまくった結果である。


「しまったな…すぐに来るはずだったのに…まぁ今日は登録だけでもいいしね」


1人呟き、冒険者ギルドの中へ入っていく。


カランカラ~ン♪


アレンが冒険者ギルドの扉を押して入るとドアに付いていた呼び鈴が鳴る。

中は食堂も兼ねているため結構広く、入って正面にはカウンターがあり、右にはいくつもの椅子やテーブルが並んでいる、今も料理を食べている何人かの冒険者も見受けられた。

建物自体は上に続く階段があり、二階、もしくは三階建の建物になっていた。


呼び鈴が鳴り、少しするとギルド内にいた冒険者たちの視線がアレンへと向いた。


「なんだ?見ねー顔だな…」

「新人じゃない?」

「ちっとヒョロイな…すぐに死んじまうぞ」

「あら、いいオ・ト・コ」


冒険者たちがそれぞれに自分の思ったことを口にする…ちなみに最後にいいオトコと言いながらアレンに熱い視線を送っているのは妙齢の美女…ではなく、ガチムチマッチョの完全おねぇ系のオカマさんだ。青髭に真っ赤に塗った唇…とてもシュールな生き物だった。

アレンは周囲の冒険を見つつ(一部は極力見ないようにしながら)受付らしきカウンターへと向かっていく。


「こんにちわ」

「……」


受付の女性へと声をかけるが…アレンの顔を凝視するばかりで返事がない。


「あ、あの…」

「はっ!す、すいません!冒険者ギルドへようこそ!ご用件はなんでしょう!?」


アレン再度声をかけられ、焦ったように我を取り戻した受付嬢…無視されたわけではなさそうでほっとするアレン。


「冒険者登録をしたいので手続きをお願いします」

「へっ?なにかの依頼…ではなく冒険者登録ですか?あ、あなたが?」

「…なにか問題あるでしょうか?」

「い、いえいえ!問題はございません!ただ、冒険者になるようには見えませんでしたので…」

「ははは…確かに見た目は強そうに見えませんよね」

「そういった意味では!…お気を悪くされたら申し訳ございません」


この受付嬢…アレンの顔に見惚れていただけなのだが、あんたみたいな弱いのが冒険者になるの?本気で?という風に考えていたとアレンに思われたようで…すぐさま頭を下げていた。

アレンはそういう風に見られていてもまったく気にしなかったのだが…受付嬢が何度も頭を下げていた。


「おい!おい!おい!!俺らのターニャちゃんになにしてんだ!?くそがき!!」


そんな中、アレンの後方…食堂に近いテーブルの方から怒声とともに数人の男がアレンに近寄ってくる。

どうやら何度も頭を下げている受付嬢…ターニャの姿を見てアレンがなにか難癖を付けているか…なにかしらの問題を起こしていると思ったようだ。


「あ、あの!皆様!特に問題はございませんので!」

「大丈夫大丈夫!ターニャちゃん!俺らに任しとけって!こんなやつギルドから叩き出してやるよ!」

「にーちゃん、痛い目あいたくなかったら出てけや」

「ついでに金もな、迷惑料ってやつだ」

「「「がはははは!!」」」


アレンに近寄ってくる男たち4人はみな、酒が入っているようだった。

どうやら昼間から酒を呑みできあがってしまっているらしい。


「ターニャちゃん!こいつ追っ払ったら俺とデートしてくれよ!」

「おい!お前ずりーぞ!俺も俺も!!」

「抜け駆けすんなてめーら!俺とデートしてくれぇ!」

「ターニャちゃん…ターニャちゃん…はぁはぁ」


…どうやら善意だけで助けに入った良い人たち…ってわけでも無さそうだ。話題の受付嬢、ターニャも気持ち悪そうな目で冒険者たちを見ている。


「わ、私は大丈夫ですので!皆さん、お席にお戻りください!」

「かーーっ!健気だねぇ!大丈夫だって俺が助けてやるから!!」

「で、ですから…」

「あー…大丈夫ですよ、ターニャさん?でしたっけ…だいぶ酔ってるみたいですね」


まったく人の話を聞かない冒険者たちに頭を痛めている受付嬢のターニャに対し、問題ないとばかりに微笑みかけるアレン。

そんな2人のやり取りが気に食わなかったのか、怒気を強める冒険者…。


「おい!クソガキ!早くこっから出ていけや!おめーみてーな奴が来る場所じゃねーんだ…よっ!!」


言いながら冒険者の1人がアレンへと殴りかかる…さすがに一般人と比べればその拳は速く、それ相応の威力があるのは一目で分かるほどだ…ただし、一般人のそれと比べればの話である。


パシッ!


「…はっ?」

「酔いすぎですよ…ターニャさんにも迷惑になっていますし、もうここらで終わりにしませんか?」


冒険者の男が放った拳は…簡単にアレンに受け止められていた。

当然である…禁断の森で毎日が死闘、そんな生活を送ってきたアレンにとって男の拳は止まって見える。


「ふ、ふざけんなあっ!!おい!お前ら!!」

「おう!おらぁ!!」

「喰らえ!!」

「うらぁー!」


拳を止められた男が逆切れし、仲間たちに声をかける…アレンは4人の男たちから一斉に攻められることになった。

男たちの拳が、蹴りが次々とアレンを襲う…建物の中と言う限られた空間の中で多勢に無勢、普通ならすぐにぼこぼこにされて終わりなんだが…アレンは余裕の表情ですべての攻撃を避け、いなし、一切のダメージを負う事はなかった。


飛んできた拳を避け、軽く手を当てその軌道を誘導…他の男の拳に当てるなど、たかがケンカにもはや神業と呼べる技術が使われていた。


「ぜぇーー!ぜぇーーー!」

「な、なんで…当たんねぇ…」

「はぁ…はぁ…ちくしょうが!」

「ヒィーッ!ヒィーッ!!」


4人の冒険者は息も絶え絶えである。

アレンからは一度たりとも手を出していない。


「ターニャさん」

「は、はい!なんでしょう!!」


4人の冒険者が疲労から動きが止まる…その隙を利用して受付嬢のターニャへと声をかけるアレン。

そしてターニャの方を向き、指をへばっている男たちへ向ける。


「この場合は正当防衛でいいんですかね?」

「も、問題ありません!」

「了解です」

「な、なめてんじゃねーーー!!」

「……少し寝ててください」


ゴッ!ゴッ!ゴッ!ゴッ!


再度突っ込んでくる4人に対し、的確に顎を打ち抜き昏倒させる。

4人の冒険はギルドの床にキスするはめになり…それを見ていたターニャはぽかんとした表情に…そしてそれを成した張本人のアレンは苦笑いにを浮かべていた。


「…いきなり襲ってくるとか…冒険者って怖い」


いやいやいや!怖いのはお前だよ!!問答無用で返り討ちかよ!!

…ギルド内にいた他の冒険者の心が一つになった瞬間だった。







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