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宿屋へ


王宮に状況報告のために向かったランディがアリスたちのもとへと戻ってきた

そのままアリスへ報告をする。


「ただいま戻りました!」

「ご苦労、して王は?」

「はっ!アリーシャ様の無事を喜んでいるそうです!つきましては無事の確認等のため王宮へ登城を求めております」

「だろうな…ちなみにアレンのことも伝えたのだろう?どうだった?」

「…アレン殿に付きましては城下町にて待機していただくように言われました」

「やはりか…」


アリスの予想通り、すんなりとアレンが王宮へ招かれることはなかった。

今は状況が状況である、騎士団が襲われ大勢の死傷者が出た…その上騎士団長の行方不明に、魔族側からの抗議、そしてあわや戦争一歩手前まできているのだ。

行方不明だった騎士団長を助けたといえど、さすがにこの状況でどこの誰とも分からぬ輩を王宮へと招くわけは無かった。

最悪、騎士団長を助けたことすら演技で…この国に入り込むために、いまの状況を作り出した犯人に思われている可能性すらあった。


アレンには、そういった状況のため城下町で待っていてもらい、アリスたちでアレンへの誤解を解くためにこれから動く時間が必要になるのだ。


「ダリウス様、言われた通り金銭を用意しました」

「うむ」


そういってランディから金が入っていると思われる袋を受け取るダリウス、そしてそのままアレンへと渡した、


「アレン殿、城下町で過ごしていただくための金銭になります、おそらくは十分な金銭にはなると思います」

「ありがとうございます。足りなくなったら自分で稼ぐので心配はご無用ですよ」


ダリウスから袋を受け取りながらお礼を言う。


「ははは!アレン殿ならもしかしたら短期間で大金を稼ぎそうですな、ちなみに冒険者登録には1000ギルの登録料が必要になります」

「了解です。まぁなんとかやっていきますよ…そういえば俺が王宮から呼ばれる場合はどうやって連絡をとればいいんでしょう」


アレンの言うことももっともだ。

今は暗く、街の中もあまり見えないが帝国の城下町はけっこう広いく、人の数も多い。

適当に探してすぐ見つかるような環境ではないのだ。


「それは問題ないぞアレン」


その質問に答えたのはアリスだった。


「まずこれからアレンに過ごしてもらう宿に案内する、その宿は個人的に懇意にしているところでな…ある程度の融通は利くし、口も堅い、連絡もその宿に人をやるか…もしくは冒険者ギルドの方に言づけをしておくことになると思う」

「なるほど…分かった」

「では、これから宿のほうに案内する、こっちだ」


そういってアリスを先頭に宿のある方へと歩き出した。

日はすでに落ち、空は暗くなっている…しかし、アリスの先導に誘われて歩いていくと次第に建物の明かりが強くなっていった。


「ここらへんは宿屋や、飲食店が並ぶ場所でな…この時間帯でも泊り客や食事にくる者たちが集まる場所の一つなんだ」


説明しながらも歩を進めるアリス…おそらく自分が団長だということがバレないようにしているのだろう。気配も薄くし、他の人の意識がこちらに向かないように気をつけている。


そのまま少し進んだあと、建物の角を曲がり明るい大通りから薄暗く道へと入っていく。

少し狭くなった道をさらに進んだ先にその建物はあった。

窓から明かりが漏れている…そこまで大きい建物ではないが、建物の入り口のところに宿の名前が書いてある看板があった。


『春の夜明け亭』


そう書いてあった。


「アレンは一緒に来い、他の者はここで待機だ」


アリスはそう言いながら扉を開き建物に入っていく、その背を追うようにアレンは建物に入っていった。


「いらっしゃいま…アリス!?あ、あんたなんでここに!?行方不明じゃなかったの!?」

「しーー!!しーー!声が大きいぞ!クリス!というかなんでわたしが行方不明なの知ってるんだ!?」


アリスの姿を確認した女性…クリスと呼ばれた人が大きな声でアリスの名を呼び驚く。

そんなクリスに慌てて注意するアリス…それはそうだろう、正体がばれないように行動してきたのに大声で名前を呼ばれるのだ、焦るにきまっている。


「騎士団が情報規制敷いてるのは知ってるし、その内容もしってるわよ!宿屋の主なめないでよね!」

「…そんな宿屋の主はお前だけだ」


この女性はこの宿の主らしい…年齢はアリスやアレンとほとんど変わらないように見える。

くすんだような赤毛に、おなじく紅い瞳…ニヤッと笑った顔は猫を思わせるような女性だ。


騎士団の情報規制を、なにそれ?美味しいの?という風に意にも返さず正確な情報を掴んでいたそうだ。

アリスの言うとおり普通の宿屋ではなさそうだ。


「たった今帰ったきたんだ…そしてクリス、お前に頼みがある」

「頼みね~…後ろの男の人に関することかな?なに?愛人?それをここに住まわせてくれって?」

「ば、馬鹿者!!違うわ!アレンはあ、愛人などではない!!」

「そんな必死になっちゃって…あのアリスにもとうとう春が!!あの!アリスにも!!」

「あのあの言うな!!」


…クリスがひたすらにアリスをからかっている、見るからに慣れている感じだ…いつもこの調子なんだろう、2人の仲がいいのは見て取れる。


「ったく…相変わらずだな、真面目な話…わたしか、もしくは騎士の誰かが呼びにくるまでこの男性、アレンをここに泊めてほしいんだ…宿泊費の請求はのちほどまとめてわたしに請求してくれ」

「…ふーーん、ま!それはもちろん構わないわよ、詮索もなしにしてあげるわ」

「助かる、ありがとう」

「あんたの頼みだからね…ねぇ!アレン、って言ったっけ?」

「はい」

「私はこの宿の主、クリスティンだよ、クリスでいい」

「アレンと言います。しばらく御厄介になります」

「へぇ、礼儀正しいね…そこらの貴族の坊ちゃんや、冒険者でもなさそうだね、それにイケメンだし…ま!ゆっくりしていきなよ」


アレンとクリスティン…クリスはお互いに握手し、微笑む。


「…ではアレン、この宿を中心に行動していてくれ。後ほど迎えにくる、クリス、アレンを頼んだよ」

「分かったよ」

「はいよ~」


アリスは、アレンとクリスに一言ずつ言ったあとに建物から出ていき、騎士団の面々を連れて王城へと消えていった。






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