表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
40/61

女王蟻との戦い2


地面を飛ぶように走り、女王蟻へと肉迫するアレン、二振りの剣を持つ両手を後ろに…倒れ込むほどに体を前に倒しながら走っていく。自分の体が倒れる勢いを利用することによって余計な力を使うことなく素早く動くことができていた。


そんなアレンに対し、女王蟻は片目を切られたことがよほど嫌だったのか、更に激しく酸を吐き出し始めた。それにともない、腹部の動きが波打ち活発に動き出す。


吐き出された酸はまさに弾丸のごとくアレンへと襲い掛かる…それを右に、左に…時には後方に下がることで回避するアレンの周囲はもはや酸の影響でところどころが陥没し、地形がどんどん変わっていた。

たとえ女王蟻がアレンを殺したとて、前ほどに快適な巣には戻らないことは確実であった。


女王蟻の攻撃を躱しながら確実に近づいていく…アレンは【縮地】などの武技による急激な接近もできたがあえて走って近づくことにした。

その理由は酸を吐き出させ続けるためである。


眼を潰されたことによる恐怖で、アレンを近づけさせまいという考えになった女王蟻に対し…あえて目に見えて走って近づくことにより、焦らせ、考えなしに酸を吐き出させることに誘導したのだ。


もちろん激化する酸の攻撃は対し、正面から突っ込んでいくことに危険あった…しかし、アレンは迷わず駆ける。

まばたきすらせずに女王蟻の動きを見て、攻撃の際の予備動作から攻撃のタイミング、酸の弾丸の大きさなどを予想し、回避していたのだ。



アレンと女王蟻との距離が縮む…アレンが跳びこめばその剣の刃が女王蟻の脚へとかかるほどの距離だ。


女王蟻の攻撃がまた変わる…弾丸のように吐き出していた酸を今度は大量に、すでに目の前まで来ているアレンに対して吐き出したのだ。


ゴォババァァァァ――――――ッ!!!


その量は今までの攻撃と比べるべきもなく…非常に広範囲にわたって降り注ぐ。


酸の津波ともいえる攻撃がアレンへと降り注ぐその瞬間…


「【…】、【…】、【…】」


アレンは何かを(つぶや)き…酸の津波を前にその姿を消した。

その一瞬後…姿を現したのは女王蟻の目の前…前回と同じく顔の少し上ほどにアレンは現れ、残った片方の目を切り裂こうと二振りの剣を振り下ろした。


しかし…女王蟻はそれを読んでいた。


シュン!グサッ!!


アレンの剣が女王蟻に届く前に、女王蟻の鋭く槍のように尖った触覚が蛇のように動き…アレンを串刺しにした。


「ギギギギギッ!!!!」


うっとうしく飛び回るハエを潰したかのように嬉しそうな声を上げる女王蟻…しかしその歓声もすぐに疑問の声へと変わった。


「…ギッ!?ギギギ!!!?」


確かに己の触覚で貫き、その命を奪った相手が消えたのだ。

命を奪った敵の(むくろ)がいきなり消え、困惑する女王蟻だったが…次の瞬間、腹部を切り裂かれる痛みに今度は悲鳴の声を上げた。


「ガ、ギギイイィィィィイィィィ――――――ッ!!?!?!?」


急いで痛みが走る腹部へと目をやる女王蟻…そこには先ほど貫き殺したはずのアレンがいた。


もちろん切り裂いたのは先ほど触覚に貫かれた…ように見えたアレンだ。


「今度は切り裂けたな…俺の、勝ちだ」

「ギギギギギギギギギギイィィィィィ!!!!」


アレンの言うとおり…勝敗は決した、腹部にはアレンが二振りの剣で平行に切り裂いたのだろう、深々と腹部の横に走る傷が二筋あった。

そしてそこから黄色い液体、蟻酸(ぎさん)が漏れ…女王蟻自身の体を溶かし始めていた。

己の体すら溶かしてしまうほどに、その蟻酸は強力だったのだ。


切り裂かれた痛みと…酸による己の体が溶けていく痛みとで絶叫を上げる女王蟻。

すでに腹部から後ろはほとんどなく、体の半分が溶けてしまっている状態だった、さすがに蟲型魔獣とはいえこの状態で生きることは不可能だ。


「ギギ…ギギギ…ギ…」


次第に弱っていく女王蟻…このままでもすぐに死ぬだろうがアレンは念には念を入れて、その首を落とすことにした。

剣を片方仕舞い、残したもう一振りの剣を両手で持ち女王蟻の首筋へと狙いを定める。

戦闘中では無理だったが、両手に持った剣を全力で首の関節部に振り下ろせばおそらく切り落とせるだろう…アレンはそう考えていた。


「…生きるために喰う…お前は間違ってないさ、けど俺も喰われてやるわけにはいかないんだ…じゃあな」

「…ギ、ギ」


ザンッッ!!!


アレンは一言、女王蟻へと言葉を投げかけたあと、その首を落とした。

生きるために他の生き物を殺し、喰らう…この森ではそれが日常的で当たり前の事だ。

グラトニー・アント・クイーンもいたずらに他の生き物を殺し回っていたわけではなく、ただ生きることが目的で、生きることに必死だったのだ。

そのことに悪意はないことが分かっているからこそ、アレンは最後に女王蟻へ…お前は間違っていないという言葉を贈ったのだ。


女王蟻…グラトニー・アント・クイーンとアレンの戦いは終わった。


「ふ~終わった…うまくいって良かった」


首を落とした後、アレンは脱力し自分の作戦が上手くいったことに安堵した。

アレンの目的は最初から腹部の破壊にあった…攻撃に使用してきた蟻酸は強力で、女王蟻自身にも効果があるのではないかと思ったのだ。

うまく腹部を…酸を作りだしている部分を破壊することができれば、あとは自壊するだろうと考え行動した。


ただし…普通に接近し、腹部を攻撃しようとすれば瞬く間に甲殻の硬度を高くし、剣が弾かれる可能性があった。

そのため、意識を他に誘導しなければならなかったのだ。


最後に女王蟻が大量に酸を吐き出した時、アレンは3つの武技を使用した。

残響(ざんきょう)】、【隠密(おんみつ)】、そして【縮地(しゅくち)】だ。


残響(ざんきょう)…己の幻影を数秒作り出すことができる。

隠密(おんみつ)…気配を消し、発見されにくくなる。


アレンは残響で自分の幻影を作り出し、女王蟻の目の前に跳びあがらせた…そして同時に隠密で気配を消し、縮地を使い…文字通り消えるようにして女王蟻の死角へと入りこんだのだ。

これは最初に眼を切り裂かれた女王蟻が顔への攻撃をかなり警戒していたから成功した作戦でもあった。


女王蟻を発見したときから、眼を切り裂いたとき…酸の攻撃を避け続けるとき…どんな時でも女王蟻の行動や変化を見逃さず、観察し続けた結果…女王蟻であるグラトニー・アント・クイーンとアレンの死闘は、アレンの知力と武力に軍配が上がったのだった。







評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ