森のこと
「……ん、ん~…はっ!?こ、ここは?」
「あ、気が付きましたか、ここは俺の家ですよ、途中で気絶したので連れてきたんです」
「そ、そうか…すまない、本当に助かったよ」
「いえいえ、たまたま近くにいてよかった、あ、お腹へってますよね?あれから丸一日たってますから」
「丸一日寝てたのか!?ッ!いたたた…」
女性騎士が起きた…気絶してから丸一日たっている。
家に着いてからはしっかりと治療したので、もう命の危機はないだろう。
あとはしっかり休んで体を治していくだけだ。
「峠は越えたとはいえ、まだ傷口はふさがってないので安静しててくださいね、動けるようになるにはまだしばらくかかるはずです」
「あぁ、分かった…ところで」
「はい?」
「…わ、わたしが着ているこの服は…それに鎧はどこに…」
「あぁ、それは母が着ていたものですよ、鎧と来ていた服は血だらけなうえに、治療する際に邪魔でしたので…その…着替えさせました」
その言葉を聞いた女性騎士の顔が真っ赤になる。
アレンも気まずそうに顔を背けている。
「…そ、その…わたしの体を…み、見たのか?」
「ち、治療のために…すいません」
「いや!い、いい、いいんだ!!治療のためだものな!仕方がない!うん!!」
ちなみに女性騎士の容姿はものすごく整っている。
金髪蒼眼、白磁のような白い肌、身長も1,7メトルと高く…騎士をやっているからか体も引き締まっている。
出でいるところは出て、引き締めるべき場所は引き締まっているという10人が10人、美女だと言い切るほどのレベルである。
「み、見られてしまった…未婚の…この場合は…いや、しかし…」
「あ、あの…とりあえずお名前を教えてもらえませんか?」
自問自答を始めてしまった女性騎士に対し、空気をかえようと話しかける。
「そ、そうだな!まだ名乗っていなかったな!あたしはアリ…あ、アリスだ!あなたは?」
「アリスさんですね、俺はアレンといいます、ちなみに歳は…たぶん20歳くらいですね」
「アレン…改めて助けてくれてありがとう、私は22歳だが…なぜ自分の歳がたぶんと?」
「ずっとここに住んでいるのであまり歳に関心がなくてですね…正確には分からないんですよ」
「…ここに住んでいる?この森に?」
「え、えぇ…昔からずっと」
ここに住んでいると言う言葉に眉をひそめて確認してくるアリス、なにかおかしかったのだろうか?
「アレン、ここがどういった場所なのか知っているのか?」
「え?どういったもなにも…普通の森ですよ、自然が豊かで自給自足で生きていけるくらいには」
「…いいかぃ、ここは禁断の森と呼ばれていて、立ち入り禁止区域に指定されているほど危険な場所だぞ…魔獣の多さや強さが段違いで、人間種が入ったら絶対に出てこられないと言われている森だ」
「…そんなおおげさな…現に俺、ここに住んでますし」
「それが異常なんだよ…」
アリスに呆れたように言われた。
それからこの森について詳しい話を聞けた。
なんでもこの森はグラン帝国の帝国内にある森で、人間種が手を出せないでいる場所の1つだそうだ。
理由は魔獣の多さ、強さ…そしてその環境のためだという。
過去に帝国の王様が調査のために何度も騎士団を派遣…しかし、すべて壊滅…命からがら逃げ延びたものが数人いるだけなんだそうだ。
そういった理由があり、帝国はこの森を禁断の森と呼び立ち入りを制限…監視をしつつ実際には放置しているのが現状だそうだ。
「たまに森から強力な魔獣がでてくるが、帝国の騎士団で撃退、討伐している。まぁ滅多にないことだがな」
「そんな森だったんですか…生まれたときから住んでいるので知りませんでした」
「そういえば他のご家族は?この服も母君のものなのだろう?」
「あぁ…母も父もすでに亡くなったので俺1人ですよ」
「す、すまない…」
「気にしないでください、すでに昔のことですからね」
申し訳なさそうに俯くアリスに、なんともなしに答えるアレン。
この日はお互いにいろいろなことを話し、情報共有をしながら1日が終わった。